カワサキ「Z2」再生 まずは車両の現状を確認 〜日本の至宝「空冷4発」を未来へ継承〜
バイクのニュース / 2024年6月21日 7時10分
メイド・イン・ジャパンのモーターサイクルを代表する一台として、誰もが認める存在なのがカワサキ「Z1/Z2」シリーズです。1972年の生産開始から数えて50数年。どれほど数多くのファンに愛され続けているのかは不明ですが、コンディションが決して良い状態ではないまま「走り続けている」モデルが実は多いようです。裏を返せば、コンディションが今ひとつのままでも、力強く走ってしまうのがこのシリーズの特徴です。ここでは、初代空冷Zシリーズの国内モデル、750ccのZ2-A後期モデルをベースマシンに、現状コンディションの確認から始め、将来的にはフルレストア=再生を目指そうと考えています。
■メンテナンス前に車両の現状把握からスタート
バイク仲間のガレージで20年以上眠り続けてきたのが今回の題材となるカワサキ「Z2」です。正式名称はカワサキ「750RS」、型式は「Z2」、細かく言えばZ2-A後期モデルと呼ばれる1975年式になります。通称名は「茶玉虫カラーのZ2」とファンには呼ばれています。
ヤレ感があって良いコンディションに見えるが、外装部品やフレーム骨格にはツヤがありません。そもそもコンディション良く維持され続けてきたバイクなら、そのヤレ感にも美しさがあるものですが「ヤレヤレ……」な状態なので、フルレストアを決意しました
輸出仕様のZ1(900cc)も国内Z2(750cc)も、年毎にカラーリング変更されていて、初代モデルは通称「火の玉カラー」と呼ばれ、1972年に北米輸出専用モデルとして登場しました。
1年遅れの1973年には、国内でも同カラーリングの750cc版、モデル名は750RS、型式Z2が登場しました。ネーミングの「RS」とは、「ロードスター」の略称で、それまでのフラッグシップモデルが「650RS」型式「W3」だったので、それを継承するネーミングとなりました。ヨーロッパ向けの輸出モデルには、黄色い火の玉カラーの通称イエローボールもありました。
1974年には輸出モデルがZ1-A型になり、国内モデルはZ2-A型へとマイナーチェンジしました。1975年には、輸出モデルがZ1-B型へとなり、国内モデルはZ2-A後期モデルと呼ばれるようになりました。
そして、1976年シーズンには、輸出モデルがKZ900型へと進化して、国内モデルは車両名称Z750Four、カワサキ呼称ではZ2/A4型へと進化。その後、輸出モデルは1977年に1000ccエンジンを搭載し、1979年には通称名「角Z」と呼ばれるKZ1000Mk-II型へと進化しました。
国内の750ccモデルは、A4型、A5型、D1型とマイナーチェンジを重ね、1979年には、兄貴分のMk-IIと同じデザインを纏った「Z750FX」が登場しました。その後、400ccや550ccモデルとしてFXシリーズのネーミングが使われましたが、このFXの名前は、国内モデルでのみ使われていて、輸出モデルでは型式で呼ばれるケースが多かったようです。
■高校生の17歳で購入した「カワサキナナハン」
転倒によるフィン割れなどの外傷はありません。実走行9000キロ台と聞いているZ2Eエンジンは快調です。完全ノーマルエンジンでは楽しめないので、見た目はノーマルでも「中身はそれなりに元気良く!!」を目指したエンジンに仕上げたいです
この企画を担当した私自身、実は、70年代の高校生当時、アルバイトで貯めた貯金を頭金にカワサキZ750Four、呼称型式Z2-A4型をローンで購入した経緯があります。
大型自動二輪免許の限定解除に成功した当日、アルバイト先の近所にあったカワサキディーラーへ、カワサキZ2の中古車を見に行きました。店舗のメンテナンスエリアの奥には、4台のZ2中古車が並んでいました。
手前から火の玉カラーの初期型が2台、次にZ2-A前期型のタイガーカラー、そして一番奥には、Z750Fourとサイドカバーに記されて地味なマルーンメタリックのZ2-A4型がありました。手前の初期型から奥へ行くに従って価格が高値になっていました。当時の中古車には、プレミアムな年式など特に無かったので、年式が新しく、走行距離が少なければ、その方が中古車価格も高値設定となる時代でした。
ぼくには「フロントWディスクを標準装備」したA4型が一番魅力的に見えたので「これ買います!! 頭金は……」とショップスタッフにお話ししたことを今も思い出せます。ちなみに一番安値で手前に置いてあった火の玉カラーの初期型は25万円。ぼくが選んだA4型は38万円でした。当時の新車、Z750FXは50数万円でしたので、もしもタイムマシーンがあったなら、今なら一番手前を選ぶこと間違い無いと思います……。
■1975年登録の750RS、Z2-A後期モデルがベース
お世話になっているバイクショップ(元カワサキディーラー)のお客さんが長年所有しているZ2-Aの後期型は、中古車購入後にしばらく乗り、その後、置き場が無くなってしまったことから、廃車後に車体をバラバラにして、物置に仕舞ってありました。
のんびり走るには十分なスピード感で楽しむことができますが、現代の大型ツアラーやスーパースポーツ系モデルと一緒のツーリングでは、非力さが否めない走りになります。バイクらしいカタチがカワサキ初代空冷Zシリーズの魅力だと思うファンが多いです
組み立てるときにはフレームをニューペイントにして、電気系をリフレッシュしたりなどなど、レストア要素を含めて組み立てる予定だったそうです。分解してから20年以上が経過し、バイク置き場も整頓できたので、当時の部品のまま、レストアすることもなく再度組み立て直されたそうです。それでも複数台所有していたこともあり、お気に入りの1台として走らせていたわけでは無かったそう。
そんなZ2が「知り合いのところにありますよ……」とのお話しを伺ったので「売却予定はありませんか?!」とバイクショップを通じて、オーナーさんへ打診していただきました。その後、お値段的にも折り合いが付き、車検残ありの状態で譲渡されたのが、この1975年式で茶玉虫のZ2A後期モデルでした。
■いきなりフルレストア!? まずはコンディション確認
ストックしていたカワサキ純正の新品スピードメーターとタコメーターを取り付けたそうです。受け取った状況でこの走行距離でした。組み立て直して再登録後も、たいして走っていません。複数台所有すると、そうなりがちですよね~
最終的には美しく仕上げたい=フルレストアと呼ぶに相応しい仕上がりに!! と考えていたので、購入当初から本格作業に取り掛かっても良いのですが、その前に、まずは焦らずに現状バイクのコンディション確認から始めることにしました。
車検残が1年近くあったので、普通に試運転します。1990年代以降は、国内自主規制の750cc=ナナハン枠が無くなり、普段からオーバーリッターモデルに接する機会が多くなりました。そのため、限定解除した当時に、400ccからナナハンへ乗り換えた「あの時のZ2フィーリングを期待しても……」となります。
正直、ナナハンのZ2は、もっさりしていて決して速いバイクではなく、遅い印象でした。それでもバイクコンディションは良く、しかも走行距離は9000キロ台(残念ながら車両分解当時のオリジナルのメーターではない様子)だったそうです。エンジン始動性は良く、マフラーからまったく白煙は吹きません。試乗しても、息つきすること無くフル加速を楽しむことができました。しかし、決して速いバイクではない……。試運転を繰り返し、ショートツーリングにも出掛けることができました。中古車としての素性の良さは、この段階で確認することができました。
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