バイクで走るには最悪の雨! それでもスポーティな走りが楽しめるからやめられないDUKEの意欲作とは!?
バイクのニュース / 2024年6月27日 12時10分
縦2眼マスクに新作フレーム&排気量アップのパラレルツイン。全面刷新のニューモデルKTM 990 DUKEをバイクライターの青木タカオさんが、ウェットコンディションの箱根で乗りました。さて、そのファーストインプレッションはいかに!?
■メーカーが威信をかけて投入した新作!
多様化するユーザーの要望に応え、ビギナーからエキスパートまでさまざまなファン層を獲得してきたKTMのDUKE(デューク)シリーズ。30周年を迎えた2024年は、125、250、390、790、990、そして1390まで全6機種という充実のラインナップを誇ります。
全面刷新されたKTM「990DUKE」にバイクライターの青木タカオさんがフルウエットの状況で試乗
構成パーツの96%をリニューアルし、『890デューク』から全面刷新となるオールブランニューモデルが『990デューク』です。
LC8cパラレルツインエンジンの排気量は、899ccから947ccへスケールアップ。68.8×90.7mmだったボア・ストロークは70.4×82.5mmに見直され、最高出力は2PS増しの123PS、最大トルクは103Nmとなりました。
デュークシリーズにおけるミドルクラスという位置づけですが、もはやその名が示す通り「990」となれば、その枠を超えてきた印象もあります。
しかし、車体重量は燃料を含んでもわずか190kgしかありません。昨今多くのライダーから注目され激戦区となっている1000ccに満たないこのカテゴリーを制してみせるという、KTMの強い意気込みを感じさせるニューモデルです。『790デューク』も同時に設定され、メーカーがいかに力を入れているかがうかがえます。
■インパクトあるフロントマスク
シリーズ30周年の節目ということもあり、勝負手の1台と言えるかもしれません。先述した通り、96%ものパーツが新作ですから、膨大な開発費がココに注ぎ込まれています。
96%ものパーツが新作になり誕生した990デュークは、デュークらしい軽快感も健在なのがファンには嬉しいかぎり
そんなことを考えつつ、実車とご対面。スタイリングが新しくなっていて、フルモデルチェンジしたことが一目瞭然です。
堂々としたボディワークで、タンクカウルやラジエターシュラウドが際立つエッジの効いたシルエット。リッタークラクラスに迫る大排気量車となりましたが、デュークらしい軽快感も健在なのがファンには嬉しいかぎりでしょう。
近くに寄って、細部もまじまじと見ていきます。クロムモリブデン鋼のチューブラーフレームをはじめ、オープン型格子状だったスイングアームもボックスタイプの新作に生まれ変わっています。
シートレールのすぐ下にあったアップタイプのマフラーは、パッセンジャーステップ下へダウンマフラーとなって配備されています。
印象的なのが、フロントマスクがガラッと変わったこと。フラッグシップ『1390スーパーデューク』がそうであるように、縦2灯式となったLEDヘッドライトを取り囲むように、光センサーで明るさを自動調整するデイタイムランニングライトをレイアウト。先進的で、アグレッシブな面構えになりました。
■スポーツマインドくすぐるライポジ
アルミ製のテーパーハンドルを握ると、上半身は緩やかな前傾姿勢に。フットペグも程よくバックステップ気味で、スポーツライディングへ意欲的に向き合いたくなる乗車姿勢となります。
シート高は『890デューク』より5mm上がって、830mmになり、数値以上に足つき性は良好に感じる
シート高は『890デューク』より5mm上がって、830mmになりました。ただし実際にまたがると、車体がスリムな上、サスがスッと沈み込み、数値以上に足つき性は良好に感じます。
身長175cmの筆者の場合、片足立ちならカカトまでベッタリとシューズの底が地面に着地。車体も軽いことから、取り回しは苦になりません。
また、スウェード調のシート表皮は質感が高く、濡れてもお尻が滑らず、下半身をしっかりホールドするのに貢献しました。グリップに優れる快適なシートであることも付け加えておきましょう。
■レインモードの恩恵にあずかる
『1390スーパーデューク』にはキーレスエントリーが採用されていましたが、『990デューク』はキーシリンダーを回すと、イグニッションがONに。
ライドモードは、「トラック」「ストリート」「レイン」の3つがデフォルトで用意されている
「スポーツ」「ストリート」「レイン」の3つがデフォルトで用意されるライドモードを、もちろん最初は「レイン」に設定します。各種電子制御は5インチのTFTカラーディスプレイを見ながら直感的にセットできました。
スマートフォンとリンクし、ミュージックプレイヤーの音楽を聴いたり電話で通話もできる「KTMコネクト」もオプションで設定されます。USB-Cコネクターが備わり、電子デバイスの充電も可能となっています。
READY TO RACEのスローガンのもと開発されるKTMのマシンたち。新型『990デューク』のキャッチフレーズは「ザ・スナイパー」で、最も軽く、最も鋭く、最もパフォーマンスを重視したミッドクラスネイキッドとありますから、ウェットコンディションで乗るには手こずるかもしれないと警戒しますが、走り出せば心配は杞憂だったことがすぐわかります。
二輪で走行するバイクには過酷なはずの濡れた路面ですが、6軸IMU搭載によるコーナリング対応のABSやトラクションコントロール搭載の安心感からリラックスして箱根のワインディングを流せます。「レイン」モードではトラクションコントロールが最大限に介入。出力も制限されます。
■ギクシャクせず扱いやすいエンジン
エンジンは低回転域からスムーズにトルクを発揮し、扱いやすさもあるではありませんか。ハイコンプのビッグツインだからといって、ギクシャクするような神経質さはありません。
レインでも鋭い加速フィールが味わえ、走りは少しずつアグレッシブになって行く
並列2気筒エンジンは他社で主流となりつつある270度位相クランクではなく、KTMらしい75度Vツインと同じ爆発間隔となる285度クランクを採用。大きなクランクマスでトルクを潤沢に発揮しつつ、レスポンスは過敏にならずトラクションに優れています。
また、純正採用されるブリヂストンBATTLAX HYPERSPORT S22のウェット性能も目を見張るものがあります。
レインでも鋭い加速フィールが味わえ、走りは少しずつアグレッシブになっていきます。ペースを上げても車体の挙動は乱れず、落ち着いたまま。それではどうだと、アクセルをもっと大きく開けつつ、ブレーキレバーも強く握り込んでいきます。
■しなやかな足まわりが◎
車体をより深く寝かし込んでも不安はありません。もっとアグレッシブに走りたいと、とうとう「ストリート」さらに「スポーツ」へとライドモードをチェンジしていきます。
WP製APEXの前後サスペンションがフルウェットの状況でもしなやかに動きキビキビ走ることができる
フルウェットなのにキビキビ走れるのは、よく動く足まわりのおかげで、WP製APEXの前後サスペンションがしやなかに動くことも報告しなければなりません。
インナーチューブ径43mmのオープンカートリッジ式倒立フォークは140mmのストローク量を持ち、左右独立式のダンパーを採用。左に圧側、右に伸び側のアジャスターを備え、工具を使わずに5段階に調整できます。
ブレーキは300mmのダブルディスクに、4ピストンラジアルマウントキャリパーの組み合わせで、タッチとコントロール性に優れることから雨天でもストッピングパワーをしっかりと発揮することができました。
スイングアームに直付けとしたモノショックもリバウンド(伸び側)を5段階に調整可能とし、プリロードアジャスターも装備。『1390スーパーデューク』ではリンクを介しますが、『990デューク』ではリンクレスにし、軽量なリニアスプリングを採用。ダイレクトな操作フィールとしています。
リアのサスペンションストロークは150mmで、グラビティ鋳造による新型スイングアームが用いられています。横方向への剛性を35%落とし、柔軟性を持たせているのが大きなポイントです。1.5kgの軽量化も実現しています。
■いつだって走りが面白い!!
一方で新設計のバックボーン型フレームは横剛性を8%、ねじれ剛性を5%強化。シャシーの強度バランスが全面的に見直されました。
フルウエットの路面状況でも積極的にアクセルを開けることができる990デュークに試乗した筆者(青木タカオ)
しなやかさのあるシャシーに強力なエンジン。ミドルクラスの俊敏性やフレンドリーさを失うことなく、排気量を上げた『990デューク』はコンディションが悪い中でも余裕のある走りが堪能でき、しかもどんな環境下でもスポーティでアグレッシブなのは変わりません。
フットワーク軽く、デュークシリーズの持ち味を最大限に味わえるニューモデルと言えるでしょう。179万9000円の車体価格も大きな魅力です。
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