カワサキ「Z2」再生 なんだか遅い!? 試運転で見えた気になるポイント〜日本の至宝「空冷4発」を未来へ継承〜Vol,2
バイクのニュース / 2024年6月28日 7時10分
メイド・イン・ジャパンのモーターサイクルを代表する一台として、誰もが認める存在なのがカワサキZ1/Z2シリーズです。長年、バイク仲間が所有し続けてきた1975年式を購入して、将来的にはフルレストアで仕上げてみようと言うのが、この企画になります。
■試運転することで見えてくる「気になる」ポイント
「エンジンコンディションが、気になる……」といったお話しの真相に迫ると、その「気になる」と感じた人それぞれに、様々な「気になる」が存在します。
フルレストアを担当することになったカワサキ750RS/Z2-A後期モデルは1975年式。1962年生まれのぼくが中学生の頃に登場したモデルです。当時、友達の兄貴がイエロータイガーに乗っていたことを思い出しました
目視的な部分では、ヘッドカバーからエンジンオイルが滲んで「気が付くとエンジンが汚れてしまっている……」という悩みがあります。聴覚的な部分では「なんだかメカノイズが他人の同じモデルとは違って、カチカチ音が大きい気がして……」といった悩みもあります。
さらに一歩踏み込んでお話しを伺うと、アイドリング時にクランクケースの方から「コロン、コロンッ」といった音が聴こえるとか、ヘッドカバー内から「カチカチッ」と聞こえるとか、より具体的なメカノイズの「気になる」が、明確になります。
バイクの試運転に出掛けると、気になってしまうことが数多く出ることがあります。そのような「気になる」を「気にならない」にする手段として、様々なメンテナンスがあります。
DIYバイクいじりが趣味のサンデーメカニックなら、ハンドツールだけではなく各種測定機器や特殊工具を所有したいものです。エンジンの圧縮状況を確認するコンプレッションゲージもあると便利な特殊工具・測定機器のひとつです
このカワサキZ2に試乗した際にも、様々なことに気が付きました。メインキーをONにしてからチョークレバーを引き上げ、セルスターターボタンを軽くひと押しすることで、エンジンは難なく始動できました。
キルスイッチでエンジン停止して、キックアームを力強く蹴り降ろすことでも、難なく再始動可能でした。アイドリング音は至極静かで、一定のリズムを刻む快調なエンジンです。
クラッチレバーを握ってギヤをローへ入れ、通常走行で国道バイパスをひとっ走り!! バックミラーの振動がやや気になる程度で、走りは至って快調です。フル加速も試してみたところ、タコメーターの針がスムーズにレッドゾーンへ突入することも確認できました。同行をお願いした仲間から話しを聞くと「走行中やフル加速中でも、マフラーからは白煙や黒煙は出ず、4本マフラーらしいいい音が聞けたよ!!」との情報も得ることもできました。
コンプレッション測定する際には、エンジンを暖機した状態で行うのが正解かつ理想的です。メーカー発行のサービスマニュアルデータを調べても、温間時(エンジン暖機後)の数値が記載されている例が多いです。現代モデルはpka表示になります
おおむね車両コンディションは良好でした。単純に走る、試運転に出掛けるのではなく、様々な機能の動作確認も、同時に行うのが重要なことです。メインキーを回したときから、カチッと節度があってしっかり作動しているか? クラッチレバーを握る重さも重要だし、握ってからギヤをローへシフトするまでの間に、アイドリングやメカノイズに変化が無いか? などなども、しっかり確認するべきだと思います。
昭和の時代に購入したコンプレッションゲージ。円錐型のゴム栓をプラグ穴に押し付けてから力強くクランキングすることで、シリンダーの圧縮圧力を測定できる機器になります。プラグのネジサイズに合わせたアダプター仕様もあります
試運転で気が付いたひとつに、バックミラーのビビリ=微振動がありました。カワサキZ2タイプと呼ばれるミラーには、純正部品や社外部品にも様々なタイプがあります。純正部品のミラーには、ボディの内側に大きなウエイトが仕込まれていて、そのウエイトがバランサーの役割を果たして振動を打ち消し、走行中のバックミラーの微振動が、極力無くなる(完全には消えない!?)仕様に作られています。
サードパーティーの社外部品の中にも、純正部品と同様のミラーウエイトを備えた上質ミラーはありますが、多くのミラーがデザインのみを複製していて、ウエイトを装備していない商品が多いようです。おそらく試乗したZ2にも、そのようなバックミラーが装着されていたのだと思われます。たいしたことではありませんが、実際に走ってみないとわからないことは、数多くあるのです。
■エンジンコンディションは機器測定でも判断できる
バイク屋さんからトランポにバイクを積み込み、自宅へ戻ってから初試乗しましたが、おおむね「グッドコンディション」だとわかってひと安心でした。バックミラーはそのうち交換すれば良いですが、もうひとつ気になったことがありました。それは「遅い……」ことでした。
単気筒エンジンは当然に、マルチエンジンでも、すべてのスパークプラグを取り外して測定しなくてはいけません。セルモーターがある場合は、スロットル全開状態を保って、6~7秒ほどセルモーターを回します。力強く回らないといけません
当時のナナハンが現代のオーバーリッターモデルやスーパースポーツモデルと同じような走りをするはずが無いとは理解できますが、それでも遅く感じてしまいました。それでもZ2が良い!! ナナハンが良い!! と憧れるユーザーが多いのは理解していますが、70年代当時にZ2-A4型を所有し、それなりにチューニングして楽しんでいたぼくにとっては、このパワー感は何とかしたいものでした。
バッテリーが弱っていると、クランク回転が弱く正しいデータを測定できないので、バッテリーが弱いときには連続でキックを踏み込み測定することもできます。今回は、キックとセルの双方で圧縮測定してみましたが、双方のデータは同じでした
当時、先輩のタイガーZ2は、ヨシムラ860(69mmピストンキット)を組み込んでいて、そのトルク感は自分のナナハンとはまるで違っていました。また、バイクパーツショップで知り合った方が所有していたZ2-D1型は、モリワキチューンの1000ccエンジンが搭載され、ダイシン製の特注4イン1エキゾーストを装備したフルチューン仕様。試乗させていただくと、文字通り「ロードゴーイングレーサー」そのものだった記憶があります。
激しいチューニングを実践する気などさらさらありませんが、バランス良くパワーアップしたい、というか、トルクアップしたいのが、初試乗しながら、ぼくが妄想した唯一のことでした。この試乗で、エンジンに手を加えようと決意しましたが、その前に、現状エンジンのコンディションが、どの程度のものなのか「コンプレッションゲージ」で測定してみましたが……。
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