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自転車の駆動方式にまつわる2つの重要な機構とは? その歴史を振り返る

バイクのニュース / 2024年7月9日 13時10分

自転車の基本的な機能である「走る・曲がる・停まる」を支える構造について、意外と知らないことがあるかもしれません。今回はチェーンやギアといった駆動部分、いわゆる「ドライブトレイン」に注目します。

■いまに至るまで、紆余曲折あり

 自転車はクルマやバイクと比べると圧倒的にシンプルな構造で、基本的な機能である「走る・曲がる・停まる」を支える仕組みも直接的でわかりやすくなっています。骨格となる「フレーム」、走行に必要な「車輪」、操作に必要な「ハンドル」、停まるための「ブレーキ」など、いまさら言われるまでもなく、何となく仕組みが思い浮かべられるかもしれません。

現在では当たり前の自転車の駆動方式に至るまで、長い時間がかかった現在では当たり前の自転車の駆動方式に至るまで、長い時間がかかった

 そんななか、チェーンやギアなどの駆動部である、いわゆる「ドライブトレイン」は、ほかと比べると少し複雑です。「結局は歯車(ギア)にかかったチェーンで後ろの車輪を回しているんでしょ」と思うかもしれません。実際その通りですが、自転車を漕いで気持ち良く進むには、そこに秘められた「巻き掛け伝動機構」と「ラチェット機構」という2つの仕組みが重要な役割を担っているのです。

 いまでこそ、自転車の駆動部はチェーン(ベルト式や、少数だがシャフト方式もある)を中心とした一連の仕組みを思い浮かべますが、そこにたどり着くまで意外と長い時間がかかりました。

 現在、自転車の始祖は1813年にドイツのカール・フォン・ドライス男爵が子供のおもちゃであった車輪がついた木製の木馬に、舵を切れるハンドルを取り付けた足蹴り式の2輪車だと言われています。

 そこから25年程経過し、画期的な発明として史上初の「ペダル」付き自転車が登場します。しかしながら、この「マクミラン型ペダル自転車」はチェーンなどの仕組みを使っておらず、前輪と後輪の中心から外れた箇所を棒でつなぎ、蒸気機関車のように梃(てこ)の原理で進むものでした。いまのようにペダルを漕いで回すと言うよりも、ペダルを踏み込んで進む仕組みです。

 そこから一気に技術が進むと思いきや、次に自転車の駆動の中心となったのは、1860年代に発明された、前輪に取り付けられたペダルを回して進む、いわゆる「前輪駆動」でした。現在で言うなら、幼児が乗る「三輪車」がそれにあたります。

 地面を蹴るパワープレーから、梃の原理を利用するようになったにも関わらず、再び力ずくで前輪を回すパワープレーに戻り、少し後退したような印象もあります。

 そこからさらに20年程の歳月を重ね、自転車の始祖から65年経った1879年に、産業革命を推し進めて効率良くエネルギーを伝達するさまざまな方式が生まれていたイギリスで、前ギアと後ギアをチェーンで結ぶ「巻き掛け伝動機構」を流用した駆動方式が発明されます。

 この方式を利用して、1885年にジョン・ケンブ・スタンレーが「ローバー型安全自転車」を発売します。これが現在の自転車の原型と言われます。

 ただ、この時点の駆動方式は現在ほど実用的ではなく、ペダル(クランク)とチェーンの動きが直接的に連動していたので、前に回せば前進し、後ろに回せば後進する状態でした。現在でも競輪用の自転車や「ピストバイク」と言われる車種がその仕組みを採用していますが、タイヤが回ればペダルも回るので、坂道を下るときはペダルが回転し続けてしまう、走行中に足を止めると急ブレーキがかかって転倒してしまうなど、危険を伴う乗りものでした。

 1890年代に入り、一方向だけに回転し、反対には回らない「ラチェット機構」を利用した「フリーホイール」が開発されます。フリーホイールは、ペダルの回転を止めても車輪が回り続ける仕組みになっているので、予期せぬ急ブレーキがなくなり、安心して運転することができます。そこでようやく、自転車の駆動方式がひとつの完成形を迎えることになります。

 80年近くの歳月をかけ、「巻き掛け伝動機構」に「ラチェット機構」を加えるなど発展が進み、現在の駆動方式に至ります。

 じつは、そこから細かい改良などはありましたが、基本的には何も変わっていないと言えます。果たして、自転車の駆動方式は完成してしまったのでしょうか……? もし、いままでの駆動方式を上回る効率の良い仕組みを生み出したら、ノーベル賞も夢じゃないかもしれません……。

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