“ど”ストレートな発表「町長と市長がツーリングをします」!? 伊豆半島がライダー誘致に乗り出す

かつてこれほどストレートな広報発表があったでしょうか。「満点の海、山、空」をスローガンに掲げる静岡県東伊豆町が、ライダー誘致の最終兵器を公表しました。同町ウェブサイトのトップページに掲載されたタイトルは「岩井町長のバイクツーリングについて」……町長もツーリングするんです！

■国土交通副大臣も務めた“ライダー町長”

　人口約1万1000人、伊豆半島東海岸の中央に位置する静岡県東伊豆町が2024年7月8日、同町公式サイトのトップページに「岩井町長のバイクツーリングについて」のトピックスを掲載しました。「移住・定住・ワーケーションを応援します」、「子育て世帯への加算給付金」など、数々のトピックスに混じった「バイクツーリング」というワードは、ちょっと違和感あります。そもそもツーリングは趣味の領域のような……と思いきや、その目的は「ライダー誘致」による観光振興。町のトップが文字通りバイクで走り、バイクで町おこしを始めるというわけです。

東伊豆町公式サイトのトップページで発表された、岩井町長のバイクツーリング

　内容を見ると、「町長と市長が伊豆市から東伊豆町をバイクツーリングします!!」とあります。町長に加えて市長が増えています。このトピックスについて、同町産業観光課の担当者は、こう話します。

「コロナ禍があけて、東伊豆町も台湾を中心とするインバウンドで宿泊施設の稼働率は上がっています。ただ、それだけでなく町周辺の方々にも来ていただき、さらに観光振興を模索したい。そこで、今回の発表を機に、ライダー誘致の可能性を探っていこう、という宣言です」

　ライダー誘致は全国各地で模索されていますが、町長と市長の“ツートップ”が走るバイクツーリングとは、どんな内容なのでしょうか。

　町長の岩井茂樹氏は56歳。参議院議員を2期8年務め、2020年の菅義偉内閣で国土交通副大臣に就任しています。コロナ禍の行動制限で打撃を受けた観光関連事業の再興のため「Go To トラベル事業」を推進しました。

　そんな岩井町長が、東伊豆町で注目したのがツーリングの目的地としての観光でした。生粋の政治家も、大型自動二輪免許の保持者なのです。“ライダー町長”の目的を次のように書いています。

『伊豆半島の良さをアピールすることにより、多くのライダーの方に伊豆を訪れてもらうこと、ライダー向けの施設や設備を周知してもらうことを目的として実施される』

■強力な伴走者は“ライダー市長”

　岩井町長と並ぶもう1人のトップは、ツーリング経験豊富な伊豆市の菊池豊市長です。伊豆市は東伊豆町に隣接し、中伊豆と呼ばれる伊豆半島の中央に位置します。自治体トップツーリングの先駆けとして、菊池市長は市内の観光スポットをバイクで巡り、観光誘致に尽力してきました。トップツーリング初体験の東伊豆町にとっては、協力な伴走者です。

2020年11月に開催された、伊豆市の菊池市長と原動機研究部のツーリング。初期の頃は小排気量のバイクが多かった（撮影＝中島みなみ）

　菊地市長は、惜しくも降雨で中止となってしまいましたが、2022年8月富士スピードウェイで開催の『カブカップ』にも選手としてプライベート参戦を宣言したこともあります。この時は豪雨対策のため公務を優先しました。

　バイクを自費で購入し、県下5番目の広さの市内視察にもバイクを活用する“ライダー市長”なのです。

　菊池市長のバイクツーリングには、伊豆市と周辺市町に在住・通学の高校生が部員となる課外活動『原動機研究部』（通称：原研）も参加します。

　菊池市長と原動機研究部の関係は、同部が伊豆市の観光スポットをライダー目線で紹介するツーリングを企画した時以来。初めて参加した菊池市長が乗るバイクの排気量が大きくなるのに比例して、同部とのツーリング経験も増えていきました。

　2人の自治体トップと地域のライダーで巡る“ツートップツーリング”は、2024年9月29日の予定です。

　情報を発信した東伊豆町は、このツーリングと共に「多くの方に来町してもらえるように情報発信をしていきます」と、話しています。