【MotoE第6戦ドイツ大会】土砂降りでレース2は1時間ディレイに。電動バイクの雨のレースとは
バイクのニュース / 2024年7月12日 18時10分
2024年シーズンの電動バイクレース『FIM Enel MotoE World Championship』の第6戦ドイツ大会が、7月5日から6日にかけて、ドイツのザクセンリンクで行なわれました。今シーズン初、雨のレースによる電動バイクへの影響とは。
■今季初のウエットコンディション、電動バイクに影響は?
電動バイクレース『FIM Enel MotoE World Championship』(以下、MotoE)第6戦ドイツ大会の決勝レース2は、天候に翻弄されたレースになりました。
【MotoE第6戦ドイツ大会】ドライコンディションのレース1、ウエットコンディションのレース2、どちらのレースも優勝したエクトル・ガルソ選手
12時15分スタートのレース1は快晴で、1周目の転倒により赤旗中断があったものの、15分ほどの中断後に5周で再開し、ドライコンディションでレースを終えています。
ちなみに、当初のスケジュールではレースは11周とされていたのですが、レース周回数は10周とアナウンスされました。
MotoEエグゼクティブ・ディレクターのニコラ・グベールさんに確認したところ、「去年のレース後にバッテリー残量を見たところ、11周が可能だと考えていました。ただ、金曜日の結果を確認したところ、ペースが昨年よりも1秒近く速くなっていたので、11周は難しいと判断しました」ということです。
タイムを確認すると、2023年は金曜日のトップタイムが1分27秒205(マッテオ・フェラーリ選手)であったのに対し、今年のトップタイムは1分26秒553(ルーカス・トゥロヴィチ選手)でした。タイムが向上していることがわかります。
このため、11周の予定が10周とされたのです。ただ、実際には、レース1は赤旗中断により、レース2は天候により、10周から減算された周回数となりました。
レース2は激しい雨のために1時間以上のスタートディレイ
15時にスタートしたMotoGPクラスのスプリントレースのときは晴れていた空が、MotoEレース2のスタート時刻16時10分が近づくにつれてどんどん怪しい雲行きとなっていきました。
各ライダーがサイティングラップを終えてグリッドに並び、スタートを待つ間に、真っ黒く重たい雲が頭上に垂れ込めます。そしてスタート直前の5分前になったとき、ついに大粒の雨が降り出したのです。ライダーたちはスリックタイヤでグリッドに並んでいたため、スタートはディレイとなりました。
雨はしばらく降り続き、MotoEライダーたちはピットレーンの庇のある場所に移動しました。そして待機すること1時間以上。17時25分にピットレーンがオープンとなり、17時41分、周回数8周でレース2がスタートしたのです。
これが、今季初のウエットコンディションでのレースとなりました。
レース2スタート直前に降り出した雨により、ピットレーンに戻り、1時間以上の待機となった
では、なぜレース周回数が8周に短縮されたのでしょうか? 最初にグリッドに着いたとき、ライダーたちはスタートしておらず、走ったのはピットレーンから出てグリッドに着くまでにコースを1周した「サイティングラップのみ」です。通常、そのサイティングラップで消費されたバッテリーは、グリッド上で、ポータブル充電器によって充電されます。計算上は、ウエットコンディションであろうと10周できるはずです。
グベールさんに確認すると、ここにはやや複雑な、そして電動バイクレースらしい事情がありました。
「通常はグリッドに着くまでに走るのは(サイティングラップの)1周だけですが、今日は大雨だったので、リスクを避けるためにライダーにレース前に2周走ってください、と伝えました。そうなると、本来ならレース周回数は9周になるはずですよね。ただ、今回は1時間以上ディレイだったので、その待機時間の間にポータブル充電器からタイヤウオーマーに充電していたんです。このためポータブル充電器のバッテリー残量が少なくなり、グリッドで充電ができなかったんですね。というわけで、マイナス2周で8周という周回数になりました」
「MotoGPなどのカテゴリーでは、ガソリンを使った発電機でタイヤウオーマーに給電をしています。しかし、我々のカテゴリー(MotoE)ではそれを使いたくないのです」
スタートディレイの間、雨は降り続きました。1時間ものレースディレイとなったのは、「電動バイクによるレースだから」という理由なのか? つまり、雨の中でも電動バイクのレースはできるのでしょうか?
「全く関係ありません。ディレイの理由はコンディションだけです」
グベールさんはそう強調しました。
1周も走っていないリアタイヤには、まだ網状のデザインが残っている(サスティナブル素材を使ったタイヤであることを表すもの。パフォーマンスに影響はなく、1~2周の走行で消える)
実際のところ、MotoEマシン「V21L」の開発にあたり、ドゥカティがドルナからリクエストされたことのひとつに、「どんな天候でもレースができるマシン」というものがありました。雨が電動バイクのレースに影響するのではなく、雨による路面コンディションが影響するということです。それは、MotoGPのレースと同じです。
このような状況で行なわれたドイツ大会は、レース1、レース2ともにエクトル・ガルソ選手が優勝しました。この結果により、チャンピオンシップでもガルソ選手が2023年チャンピオンのマッテア・カサデイ選手を上回ってランキングトップに浮上。カサデイ選手は25ポイント差のランキング2番手に後退しています。
全8戦で行なわれるMotoEは、残り2戦です。MotoE第7戦オーストリア大会は、MotoGP第11戦オーストリアGPに併催で8月16日から17日にかけて、レッドブル・リンクで行なわれます。
■FIM Enel MotoE World Championshipとは
2019年にスタートした電動バイクによるチャンピオンシップ。2019年から2022年まではWorld Cup(ワールドカップ)として開催されていたが、2023年よりWorld Championship(世界選手権)となった。MotoGPのヨーロッパ開催グランプリのうち数戦に併催され、各土曜日に2レース開催で全8戦16レースが行なわれる。バイクはドゥカティ「V21L」のワンメイクで、タイヤはミシュラン。9チーム18名のライダーが参戦している。
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