バイクのハンドル「セパハン」と「クリップオン」何が違う?
バイクのニュース / 2024年7月16日 11時10分
レーシングマシンのようなスタイルのスーパースポーツ車の多くは、低く構えた「セパレートハンドル」、略して“セパハン”を装備しています。この低いハンドルを「クリップオン」と呼ぶ人もいますが、どちらが正しいのでしょう?
■スーパースポーツ車は「セパハン」装備!
バイクのハンドルは、大別するとパイプハンドル(バーハンドル)とセパレートハンドルがあります。パイプハンドルは、文字通り筒状の金属パイプを曲げて作られたハンドルで、ネイキッド車やクルーザー(アメリカン)、オフロードモデルなど多くのバイクに使われています。
低く構えたセパレートハンドル。画像はカワサキ「Ninja ZX-4RR」
対するセパレートハンドルは、かつてはレーサーレプリカと呼ばれ、現代ではスーパースポーツに分類される、レーシングマシンのようなカウリングを纏ったバイクが主に装備しています
パイプハンドルが1本の繋がったパイプなのに対し、セパレートハンドルは左右のハンドルバーが分かれた(separate:セパレート)形状になっています。車両によって、ハンドルはトップブリッジの上か下に装着されていますが、左右で分離された構造のハンドルは、いずれもセパレートハンドルになります。
■レーシングマシン用に生れた「クリップオン」
それでは、セパレートハンドルを「クリップオンハンドル」(略してクリップオン)と呼ぶのはナゼでしょう? というか、同じモノなのでしょうか?
フロントフォークのアウターチューブを掴んで留めているクリップオンハンドル。画像はドゥカティ「パニガーレV4S」
まず、クリップオンハンドルは左右別々なので、セパレートハンドルに含まれます。そして、フロントフォーク(正立式フォークの場合はインナーチューブ、倒立式フォークの場合はアウターチューブ)を掴んで留める(clip:クリップ)構造のモノを、クリップオンと呼んでいます。
クリップオンハンドルは、レーシングマシン特有の低く伏せた前傾ポジションを作るために生れました。ライダーの体格や乗り方に合わせて、ハンドルの高さや絞り角度を調整しやすいのも特徴です。
そのため昔の英国では、パイプハンドルのアップライトなライディングポジションのバイクにクリップオンハンドルを装着して、レーシングマシンのように仕上げる「カフェレーサー」も流行しました。日本でも流行りましたが、このカスタムは車両寸法が変わってしまうため、違法改造(整備不良)で違反切符を切られることも少なくありませんでした。
■レーサーレプリカじゃなくてもセパレートハンドル!?
日本国内の市販バイク(公道用)で最初にセパレートハンドルを採用したのは、ホンダが1979年に発売した「CB750F」でした。丈夫なジュラルミン製で、トップブリッジの上に装着していました。
1979年に発売されたホンダ「CB750F」はセパレートハンドルを採用していた
ただし、ハンドルの絞り角を変えられないように(転倒時などに動かないことも考慮)、回り止めが施されていました。従来のパイプハンドルと構造が大きく異なるため、国内で認可を取るのに非常に苦労したという逸話もあります。
そして1980年代初頭に空前のバイクブームが訪れ、最高出力などのスペックはもちろん、デザインや装備面も目覚ましく進化し、ハンドルの「セパハン化」も顕著でした。
当時は排気量400ccクラスに4気筒エンジンが出揃いモデルチェンジも盛んで、1981年発売のホンダ「CBX400F」に始まり、1982年発売のスズキ「GSX400FSインパルス」やカワサキ「Z400GP」、1983年発売のヤマハ「XJ400Z」など、すべてセパレートハンドルを装備していました。
これら400ccクラスのセパレートハンドルは、レーサーレプリカのように低いわけではなく、ライディングポジション的には従来のパイプハンドルと大きく変わりませんでした。しかし新しいデザインはバイクの新時代を感じさせるものがありました。
また現在も人気の旧車であるスズキ「GSX1100S KATANA」やカワサキ「GPZ900R」(いわゆるNinja)など、大型車もセパレートハンドルを装備していました。
ちなみに、輸出仕様の「1100カタナ」は低いセパハンですが、国内向けの「750カタナ」は当時の規制の関係で大きくアップしたハンドル(とはいえセパハン)が装備され、“耕運機ハンドル”と揶揄されました。
■セパハンは“新しさ”を象徴するアイテムかも
1980年代半ば頃から始まったレーサーレプリカは、当然のようにセパレートハンドルを装備し、この流れは現代のスーパースポーツ車に続きます。しかもこのジャンルのバイクは、レーシングマシンのようなフロントフォークを掴んで留めるクリップオンがメジャーです(ただし純正ハンドルの場合、基本的に絞り角度や高さは変更できない)。
1980年代のレーサーレプリカを彷彿させるヤマハ「XSR900 GP」は、トップブリッジの上にクリップオンタイプのセパレートハンドルを装備
しかしアップライトなポジションのバイクは徐々にパイプハンドルに戻り、前述のように現在のネイキッドやクルーザー(アメリカン)、ネオクラシック系のほとんどがパイプハンドルを採用しています。こちらはベーシックなスタイルを優勢しているように思えます。
そして大型の高速ツアラー系は、デザイン的にも工夫を凝らしたセパレートハンドル(クリップオンではない)が多いようです。この辺りは、かつての「CB750F」や1980年代初頭の400ccクラスのような「新時代のイメージ」を大切にしているのかもしれません。
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