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兄弟車とは完全な別物!? KTM「890 SMT」は旅が楽しめるスーパーモタードだ!?

バイクのニュース / 2024年7月20日 11時10分

日本市場では2023年8月に発売されたKTM「890 SMT」は、排気量889ccの並列2気筒エンジンを搭載する「890アドベンチャー」をベースに前後17インチホイールを装備し、専用チューニングが施された「スーパーモトツーリング」モデルです。どのような特徴があるのでしょうか。試乗しました。

■初代とは異なる、誕生の経緯

 2023年から発売が始まったKTM「890 SMT」は、KTMにとっては2009年から2010年代中盤に販売した「990 SMT」以来となる、「旅:TRAVEL」が楽しめる「スーパーモタード(スーパーモト):SM」です。

KTM「890 SMT」(2023年型)に試乗する筆者(中村友彦)KTM「890 SMT」(2023年型)に試乗する筆者(中村友彦)

 ちなみに、かつての「SMT」が「950/990アドベンチャー」→「950/990 SM」→「990 SMT」(3車は基本設計の多くを共有)という段階を踏んで生まれたのに対して、「890 SMT」の開発ベースは「890アドベンチャー」です。

 つまり新世代の「SMT」は、「SM」をスッ飛ばして、と言うより、「SM」が存在しない状況で生まれたのですが、十数年前と比較すると近年のミドル以上のスーパーモタード市場は縮小傾向ですから、その事実に違和感を抱く人はあまり多くはないでしょう(かつてはKTMに加えて、ドゥカティやBMWも大排気量スーパーモタードを販売していた)。

 もっとも、「ミドル以上のスーパーモタード市場が縮小傾向なのに、ナゼいま?」という疑問を持つ人はいるかもしれません。その疑問に対する私(筆者:中村友彦)の回答は、「アップライトな乗車姿勢+豊富なサスペンションストローク+前後17インチタイヤのスーパーモタードでしか実現できない世界があるから」です。

 端的に言うなら、このモデルのキャラクターは悪路走破性を重視した「890アベンチャー」や、オンロードでのスポーツ性に注力した「890デューク」とは完全な別物で、試乗後の私はスーパーモータードというジャンルに対するKTMのこだわりを、改めて実感することになりました。

■兄弟車との、共通点と相違点

 前述したように、「890 SMT」の開発ベースは「890アドベンチャー」で、クロモリ素材のフレームやオープンラティス構造のアルミスイングアーム、75度位相クランクのパラレルツインエンジンといった主要部品は共通です。

KTM「890 SMT」(2023年型)KTM「890 SMT」(2023年型)

 その一方で、外装やライディングポジション関連パーツは各車各様で、「890アドベンチャー」を基準にして考えると、スクリーンとハンドルが低くて燃料タンク容量が少なく、前後タイヤが小径の「890 SMT」はコンパクトな印象です。

 ただし気軽さやフレンドリーさという点では、シート高を見ると820mmの「890デューク」の方が優位でしょう。「890アドベンチャー」は840/860mm(2段階調整可能)で、「890 SMT」は860mmです。

 続いてスーパーモタードの要となる足まわりの説明をすると、まず前後タイヤのサイズは、「890デューク」やかつての「990 SMT」と同じ、フロント120/70ZR17、リア180/55ZR17です。ちなみに「890アドベンチャー」は、フロント90/90-21、リア150/70R18です。

 そしてサスペンションのストローク量は、「890アドベンチャー」の前後195mm、「890デューク」のフロント140mm、リア150mmに対して、「890 SMT」は前後180mmです。となれば、そのキャラクターはアドベンチャーとデュークの中間……のような気がしますが、実際はそんな安易な言葉では語れない資質を備えていました。

■キレ味抜群のハンドリング!

 今回の試乗で私が感じた「890 SMT」の最大の魅力は、ヒラヒラ&スパスパ感です。あら、何だか稚拙な表現になってしまいましたが、乗り手の指示に対する機敏な反応と車体の動きの軽やかさは、重心が高くて前輪が小さいスーパーモタードならではでしょう。と言っても、「890アドベンチャー」と「890デューク」の乗り味が重ったるいわけではないのですが、「890 SMT」を経験すると、既存の兄弟車は意外に安定指向だったのかも? という気がします。

高いアイポイント、重心が高く、豊富なサスペンションストロークと前後17インチホイールで荒れた舗装路でも軽やかに駆け抜ける高いアイポイント、重心が高く、豊富なサスペンションストロークと前後17インチホイールで荒れた舗装路でも軽やかに駆け抜ける

 もっとも、見通しの良い快走路ではロードスポーツの「890デューク」の方が速く走れるはずですし(ただし「890デューク」にもスーパーモタード的な成分は入っていて、他社のライバル勢より前後サスペンションストロークが10~30mmほど多い)、悪路での走破性はオフロード指向のタイヤを履く「890アドベンチャー」には及びません。

 とはいえ日本の至るところに存在する、見通しが悪くて舗装が適度に荒れている3ケタ国道や県道や舗装林道を走ると……「890 SMT」は、最高に楽しくて快適なのです。

 豊富なサスペンションストロークのおかげで路面に存在する凹凸は軽やかにいなし、コーナーではキレ味抜群のハンドリングが味わえるのですから。

 さらに言うなら、「890デューク」に対してはアイポイントが高いおかげで視界が広いこと、「890アドベンチャー」との比較ではスクリーン&燃料タンクの小型化で、フロントまわりの動きが軽くなっていることが「890 SMT」ならではの美点と言えそうです。

 なお、「890 SMT」に限った話ではないのですが、今回の試乗で私は改めて、75度という独特のクランク位相角を採用したパラレルツインに好感を抱きました。

 近年のミドル以上のパラレルツインの新作は270度位相クランクが主流になっているのですが(ヤマハに続く形で、ホンダ、スズキ、BMW、トライアンフ、ロイヤルエンフィールドなどが採用)、KTMのパラレルツインのトラクションと鼓動感、良い意味で2気筒らしさが濃厚な特性を実感すると、どうして他のメーカーはいろいろなクランク位相角に挑戦しないんだろう……という疑問が湧いてきます。

 と言っても、KTMのパラレルツインが75度位相クランクを採用した理由は、同社のフラッグシップが搭載している75度Vツインのフィーリングを再現するためで、そういう事情が存在しない他のメーカーの場合は、新たなクランク位相角に挑戦する必然性が無いのかもしれません。とはいえ、もっといろいろな選択肢があったほうが、パラレルツインの世界は面白くなるんじゃないでしょうか。

■ちょっと意外な価格設定

排気量889ccの並列2気筒エンジンを搭載。容量15.8Lが確保された燃料タンクのスポイラーがシリンダー左右を覆っている排気量889ccの並列2気筒エンジンを搭載。容量15.8Lが確保された燃料タンクのスポイラーがシリンダー左右を覆っている

 試乗後にKTMのウェブサイトで「890 SMT」の詳細を確認して、私が何となく意外な印象を抱いたのは「890アドベンチャー」とほぼ同じで、「890デューク」より37万9000円高い、185万9000円という価格(消費税10%込み)です。

 2017年から発売が始まったKTMのミドルパラレルツインシリーズは、「デューク」と「アドベンチャー」の2モデル態勢で堅実な進化を遂げ、「SMT」は3番目のモデルになるわけですから、私はもうちょっと控えめな設定かと思っていたのですが……。

 まあでも、今回の試乗で「SMT」ならではの乗り味を満喫した私としては、安易に高いとは言えないですし、スーパーモータード市場が縮小傾向という事実を考えれば、現状の価格は妥当な気がします。

 ちなみにライバルになりそうな車両の価格(消費税10%込み)は、BMW Motorrad「F 900 XR」:151万3000円~、ヤマハ「トレーサー9GT」:149万6000円~、です。

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