プラスチック部品を採用した量産車第一号モデル「スーパーカブC100」 割れた部品の補修方法とは? 同い年のバイク=スーパーカブと生きるバイクライフVol.6
バイクのニュース / 2024年7月24日 7時10分
どんなバイク、どんなモデルでも、自分自身にとって思い入れがあるバイクには、ある種違った感情がありますよね!? 自分自身の生誕年は「記念すべき年」ですが、そんな生誕年に想いを馳せて、同い年の1962年型スーパーカブC100と暮らしているぼくなのです。日本のバイクに「プラスチック部品が数多く標準装備」されるようになったマスプロダクション第一号モデルがスーパーカブC100でもあるのですがそれゆえのトラブルも……。
■プラスチック樹脂部品の黎明期は「樹脂板」の成型だった
樹脂部品が各所に使われている旧車の多くが、走行中の振動や紫外線によるオゾンクラック、単純な劣化などなどによって、樹脂部品にダメージを受けていることが圧倒的に多いです。大型車の場合は、脱着機会が多いサイドカバー周辺などで、割れ欠落症状が現れやすいでしょう。
開発当初から主要部品のプラスチック樹脂化が命題となっていたスーパーカブC100。1958年8月の初代モデル発売開始に間に合ったのは、レッグシールドとサイドカバーのみでフロントフェンダーは鉄製でした
樹脂部品をオーバートルク(強く)締め付けてしまうのも、部品にダメージを与えてしまう大きな原因のひとつですが、ゴムグロメットに向けて突起状の部品を押し込み固定するサイドカバーなどでは、受け側のゴムグロメットの劣化によって、ゴムに弾力性が無くなってしまい(最悪でプラスチック化してしまう)、簡単に抜けないのに、チカラ一杯引っ張り抜いてしまったことで、次の瞬間には「バリッ!!」と、突起部品が折れてしまい、欠落欠損してしまう例が圧倒的に多いと言えます。
単純なヒビ割れ発生のみでも残念なのに、グロメットに刺さるはずの突起部が折れてしまい、しかも欠損紛失してしまうのは、もはや最悪と呼べるケースです。
開発当初のプラスチック素材はハイゼックスと命名されたポリエチレン系樹脂素材で、三井化学工業が素材の輸入元で国内パテントを持ち、積水化学工業によって部品作りが行われていました。レッグシールドの成形には相当手こずったとの技術資料を読んだことがあります
私の所有するスーパーカブC100は、ヘッドライトケースカバーを取り外した際に、ライト裏側の締め付け座部分の片側が、完全に割れてしまっていることに気がつきました。過去に修復した痕跡が無いため、おそらく割れたまま走っていたのだと思います。
締め付けられていたボルトによって割れてしまった部品が欠落紛失していなかったのはラッキーでした。仮に、完全に部品が無くなっている時には型どりネンドとプラリペアを利用して(いずれもデイトナから発売されています)、欠落部分を複製修理することも可能です
このようなダメージ箇所は、単純に接着剤修理は困難です。実は、こんなときにこそ「熱源」を利用するプラスチックリペアキットを使って、折れてしまった部分を橋渡しする「金属の針(骨)」(溶着ピン)を埋め込むのが、簡単かつ確実な修理方法です。
ツールカンパニー・ストレートで販売されているプラスチックリベアキットと呼ばれる商品がこれです。利用したのは家庭用コンセントのAC100V電源仕様です。熱源で接続金具(溶着ピン)を温めてプラスチックを溶かしながら食い込ませていくのが修理手順になります
単純に接着修復しても、締め付け固定時にストレスを与えてしまい、走行振動によって再び割れてしまう可能性もあります。しかし、ここで紹介する修理では、金属の骨のような針を埋め込むため、この針部分が締め付けストレスを受け止め、樹脂部品を欠損することなく固定できるようになります。
上下左右裏側などなど、打ち込める部分に向けて、徹底的に固定針を打ち込んでいきます。打ち込み終了と同時に、樹脂が熱でまだ柔らかいうちに、小型の金属ヘラ(スパチュラ)で患部を押さえることで、密着強度はさらに高めることができます
90度の壁状になった部分でも、針(ピン)には90度ベンドタイプや、太さ違いなどが数種類あるのと同時に、臨機応変に針を部品形状に合わせて曲げ施工することで、修理形状に合わせた補強も可能になります。
ハンドルを取り外す際に気がつきました。フロントカバーとライトケースの固定部分が、一箇所完全に割れてしまっていました。こんな樹脂部分の修理には、プラスチックリペアキットを利用して、写真のように補強の骨を埋め込むのがベストだと考えました
樹脂製サイドカバーの平面部分に亀裂が入ってしまったときには、見えにくい裏側から細い針を利用して埋め込むことで、目立たないように修理が可能になることも知っておくと良いでしょう。
露出した針部分はニッパで切り落とし、さらに出っ張りが気になる残り部分をベルトサンダーで削り落とせば見た目や仕上がりはさらに良くなります。単純な接着補修ではなく、補強針を打ち込み、さらに溶着処理することで、想像以上に強度アップできます
バイクいじり、バイク修理が大好きなサンデーメカニックなら、必ず所有していたい補修ツールのひとつが、このプラスチックリペアキットなのです。
取材協力/ツールカンパニー ストレート
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