不動車のホンダ「ベンリイC92」をエンジンのプロがレストア! いよいよエンジンを始動します【vol.14】
バイクのニュース / 2024年7月28日 11時10分
老舗内燃機屋「井上ボーリング」で、年間700台ものヘッド再生を行うベテランヘッド技師が、不動車となったホンダ「ベンリイC92」の再生とモディファイを行う連載。第14回目は、ヘッドライト以外は12V対応が完了していない電装品を改修したうえで、エンジンの始動確認を行います。
■残るは電装の12V化
ジェネレーターコイルの繋ぎ変えとヘッドライトのLED化を行ったベンリイC92ですが、電球類やホーン、バッテリー等は6Vのままなので、12Vの物に交換しなければなりません。
まずはバッテリーですが、6Vといえどもセル付きなだけあって容量も12アンペアという立派な物が装備されているベンリイC92。
外観も縦116㎜×横156㎜と原付とは思えない大きさですが、右のサイドカバー内に収まるように厚みは57㎜と、かなりスリムなサイズとなっています。
12Vセル付きのスーパーカブ用バッテリー等は容量的には問題なくても、開口部が小さいプレスフレーム内に収めることができず、他に移動できそうな場所もありません。
逆にあまりにも小さすぎる物や端子の形が違う物では、スペーサーやハーネス加工が必要になります。
出来るだけ見た目は無加工風な納まりにしたいので、寸法的に似た12Vバッテリーを探した結果、YT7B-BSというサイズが見つかりました。
容量は6.5Aと充分で、サイズは縦93㎜、横150㎜とひとまわり小さい仕様。厚みは66㎜と若干厚くなりますが、ブリーザーホース取り付け部の突起部分が無い為、サイドカバー内に収められそうです。
早速購入して、寸法変化に対応するべく取り付けステーを曲げ加工して、取り付けました。
バッテリーサイズの変化に対応して取り付け金具を曲げ加工
ウインカー、テールランプ、メーター照明等の電球類については純正ソケットのまま12VのLEDバルブが手に入るので問題ありませんが、ホーンに関しては純正の外観や音質が共に素晴らしいため、近代の単純構造な物にはしたくはありません。
調べた結果、ホンダ「ドリーム CB72 スーパースポーツ」のホーンが、ベンリイC92の物と同じ外観のまま12Vになっている事が解り、ヤフオクにて購入しましたが、残念ながら外観の劣化が激しかった為、ベンリイC92とニコイチで組み直しを行う事で、無事に再生できました。
残念な外観のホンダ「ドリーム CB72 スーパースポーツ」純正12Vホーンはホンダ「ベンリイ C92」純正6Vホーンとのニコイチで再生
電球とヒューズを12Vに交換し電装の変更は全て完了し、メインスイッチをONにするとニュートラルランプが点灯。
そのままウインカー、ブレーキ、ヘッドライトハイロー、ホーンをチェックするとフロントブレーキでランプがつかない。あれ? そういえばフロントブレーキにスイッチってあったっけ?
そうなんです、ベンリイC92のブレーキランプはリアブレーキにしかスイッチが無いんです。これは追加しなければ怖くて乗れませんが、取り敢えずここからいよいよエンジン始動確認にかかります。
■果たして5速ミッション組み換えビッグバルブ化エンジンは無事に動くのか?
まずはエンジンオイルを規定量入れ、プラグを外してキックペダルを蹴ってシリンダーヘッドにオイルを回します。ついでに外したプラグをプラグキャップに差してヘッドに当てて確認をすると、バチバチと力強く火花を飛ばしました。
プラグを戻してタンクに最低限のガソリンを入れ、コックをリザーブにして流れ込んだガソリンが、キャブレターのフロートバルブを閉じ、ガソリンが漏れない事を確認。
そしてチョークを引いて数回キックをすると、早速かかりそうな気配がするも、キックで息が上がってきたのでセルボタンをプッシュすると、あっさりエンジンが始動!
チョークを戻して数回アクセルを煽ってみると、なかなか迫力ある音が!と言うか凄く音がデカイ。レスポンスよく高回転まで軽く回って、調子はいいのだけど回転が落ちるとアイドリングせず、そのまま止まってしまいました。
エアスクリューを絞って再始動すると、今度はアイドリングで止まる事は無かった上に、鋭いフケ上がりが心地良く、思わず顔がニヤけてしまいました。
その後はセンタースタンドを立てたままクラッチを握り、1速から5速までシフトアップ。1速までシフトダウンしてニュートラルと、すべて問題なく入ります。
次はクラッチの確認をするべくエンジンを止めて外に出ましたが、ここで問題発生。
再度エンジンを始動してクラッチを握り、1速に入れると車体が前に進みます。これは、半クラッチ状態でクラッチが切れていないという事なのですが、ニュートラルに戻そうにもペダルが硬くて戻りません。そのため仕方なくエンジンを止めてから、ニュートラルに戻しました。
ワイヤーの引きを増やせば解決すると思いましたが、何度やってもクラッチが切れません。これはおかしいと思いクラッチカバーを開けて確認すると、ようやく原因が判明。
CB125用のプレッシャープレート側面にクラッチカバー内面と接触し擦れた跡
ホンダ「CB125」のクラッチプレッシャープレートがベンリイC92に比べて6㎜ほど厚く、クラッチレバーを握ってプッシュロッドがプレートを押しても、クラッチカバーに当たってしまいクラッチが切れなかったのです。
それならベンリイC92用の薄いプレッシャープレートに交換すればいいと思い組み直してみると、不思議なことにクラッチスプリングがプレッシャープレートを充分押し付けているのに、クラッチバスケットがフリーなまま回ってしまいます。
再度外して2つのプレッシャープレートを見比べてみると、ベンリイC92用では裏面の掘り込みが浅く、クラッチプレートを締め付ける前にクラッチセンターに当たってしまう事が判明。
逆にクラッチセンターはCB125用が4㎜厚くなっているので、これをベンリイC92と同じ厚みに削ってやれば問題は解決です。
同僚の阿部技師にお願いしてクラッチセンターの厚みを4㎜カット
薄くなったCB125用クラッチセンターとベンリイC92用プレッシャープレートの組み合わせで組み直すと無事にクラッチが切れるようになり、敷地内で試乗確認を完了することができました。
ほんの15mほどを走っただけですが、手応えは良好です。
一安心しましたが、続いてジェネレーターからの電圧を確認すると、何故か回転を上げても12Vに届かず、バッテリーの電圧を消費している状況。更に圧縮を測ってみると9.2kg/cm2しか無く、再び残念な気分になりました。
次回は、これらの対策を検討します。
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