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アメリカン・シングルビートの鼓動 ホンダ「FT400」は新時代のスポーツバイクだった!!

バイクのニュース / 2024年7月29日 19時40分

1982年に登場したホンダ「FT400」は、アメリカを代表する2輪モータースポーツであるダートトラックをオマージュした、新感覚のスポーツモデルです。単気筒SOHC4バルブにセルモーター、キャストホイールや前後ディスクブレーキなど、スリムな車体と充実装備で万能マシンを目指しました。

■他に類を見ない、軽量スリムな新感覚ビッグシングル

 ホンダ「FT400」は、1982年に新時代のシングルスポーツ車として登場しました。オフロード系のビッグシングル車は欧米共に需要が高く、各メーカーはそれぞれ優れたシングルエンジン車を開発・販売しています。

1982年に発売されたホンダ「FT400」は、米国のダートトッラックマシンをイメージした新感覚のシングルスポーツ車だった1982年に発売されたホンダ「FT400」は、米国のダートトッラックマシンをイメージした新感覚のシングルスポーツ車だった

 しかしロードモデルのビッグシングルは「欧州の古い名車をオマージュしたモデル」が多く、「FT400」から40年以上経った今でも新感覚と言えるビッグシングルの成功例は限られています。

 現在の目で観察すると「FT400」は車体の各所にホンダの個性を感じるデザイン要素が盛り込まれていますが、当時は見たことの無い、そしてどこにもカテゴライズできないニューカマーでした。

 アメリカンモータースポーツマニア達の支持を獲得しましたが、V型4気筒エンジンが登場する時代、シングルスポーツ車に振り向くファンは多くありませんでした。

 高速域でのビッグパワーを重視しないユーザーにとって、シングルスポーツは魅力的な要素が多く含まれています。スリムで軽量な車体により、ハンドリングやコーナーリングは軽快です。またエンジンの中低速域トルクは市街地やツーリングなどでも加速を楽しむことができます。

「XL」「XR」系をベースにした単気筒SOHC4バルブエンジン、2本のエキゾーストパイプ、2軸バランサーなどは当時の最先端だった「XL」「XR」系をベースにした単気筒SOHC4バルブエンジン、2本のエキゾーストパイプ、2軸バランサーなどは当時の最先端だった

 デザインチームは最新技術を盛り込みつつ「ビッグシングルの乗り心地を保ちながら万能なマシンを作る」を基本コンセプトに、オフロードモデルの「XL」「XR」シリーズのエンジンをベースに使用します(このエンジンはアメリカのダートトラックマシンのエンジンとしても活躍していた)。

 単気筒エンジンのデメリットは高回転域での振動ですが、「FT400」のエンジンは振動を低減させる2軸バランサーを採用しています。その効果は快適性だけでなく、フレームの軽量化にも寄与しています。さらにハンドルとステップはラバーマウントで振動対策を施す徹底ぶりです。

 ビッグシングルのキック始動には慣れが必要ですが、「FT400」はセルモーターを装備しており、単気筒を楽しむためのハードルを下げていました。

ブラックアウトされたハンドルまわり。スピードメーターは160km/hまで、タコメーターのレッドゾーンは7250rpm付近からブラックアウトされたハンドルまわり。スピードメーターは160km/hまで、タコメーターのレッドゾーンは7250rpm付近から

「FT400」が登場した当時、日本国内でそのコンセプトとなったアメリカのダートトラックを知る一般ライダーは少なかったはずです。

 しかし小ぶりで秀逸な形状の燃料タンクやボリュームのあるシートカウルなど、本場アメリカンモータースポーツを意識したデザインは、他には無い独特の輝きを放っていました。

 残念ながら「FT400」に直接的な後継車はなく、1985年に「GB400/500」が発売され、ホンダのビッグシングルを受け継いでいきます。また1986年には、ダートトラックマシンをストレートに再現した「FTR250」が発売されます。

燃料タンクは細く、シートから後部はボリュームがあり快適なポジションというユニークな作り燃料タンクは細く、シートから後部はボリュームがあり快適なポジションというユニークな作り

 ホンダ「FT400」(1982年)の当時の販売価格は42万3000円です。なお、同じ時期に兄弟モデルである「FT500」(42万8000円)も発売されました。

■ホンダ「FT400」(1982年型)主要諸元
エンジン種類:空冷4ストローク単気筒SOHC4バルブ
総排気量:398cc
最高出力:27PS/6500rpm
最大トルク:3.2kg-m/5000rpm
全長×全幅×全高:2225×775×1190mm
始動方式:セルフ式
シート高:790mm
車両重量:170kg
燃料タンク容量:13L
フレーム形式:ダイヤモンド
タイヤサイズ(F):3.50S19-4PR
タイヤサイズ(R):4.25S18-4PR

【取材協力】
ホンダコレクションホール(栃木県/モビリティリゾートもてぎ内)
※2023年12月以前に撮影

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