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「チョーク」ってナニ? いまとなっては懐かしいエンジン始動で四苦八苦

バイクのニュース / 2024年7月31日 17時0分

レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、キャブレター車のチョークを操作する必要が無くなった電子制御式燃料供給システムは、便利だけれど寂しい気がすると言います。どういうことなのでしょうか。

■エンジン火入れの儀式、やはりオーナーには敵わない

 先日、僕(筆者:木下隆之)は昭和37年式の三菱ミニカをドライブする機会に恵まれました。旧車好きの知人が大切にしてきたクルマです。搭載するのは、いまでは希少な空冷直列2気筒の2サイクルエンジンで、排気量は359ccです。もう、ほとんどバイクですよね。

キャブレター車には、冷間時のエンジン始動に必要なチョークが備わっていたキャブレター車には、冷間時のエンジン始動に必要なチョークが備わっていた

 オーナーの手によって機関は完璧に整えられていました。とは言うものの、始動は簡単ではありませんでした。

「先週ドライブしたから、エンジンは絶好調だよ」

 そう言われてエンジンスタートを試みたのですが、なかなか火が入りません。チョークを引いてみたのですが、黒い排気煙をモクモクさせるだけで、アイドリングしません。かえって症状を悪化させてしまったようなのです。

 ところが、オーナーに代わってみると一発で始動しました。僕も古くはチョーク付き時代に育ったので、ある程度のコツは知っているつもりでしたが、やはりオーナーには敵わないものです。赤っ恥をかいてしまったのです。排気煙は黒煙から、白く香ばしいものに変化しました。

 いまの若いライダーの多くは、チョークの存在を知らないことでしょう。燃料供給システムが電子制御になったことで、チョークは消えてしまったのです。かつてのキャプレター時代の遺物なのです。

 チョークを英訳すると「絞る」「窒息させる」「塞ぐ」といった意味があります。スペルは「choke」。黒板に書くクレヨンの一種は「chalk」ですから、カタカナにすると同じですが別の言葉です。そう、空気の吸入量を「絞り」、相対的にガソリンの量を増やすための装置なのです。

 エンジンシリンダーに送り込まれる混合気は、空気とガソリンを適切な比率で混ぜ合わせたものです。

 ですが、空気が冷たい冬場や、エンジンが温まっていない始動の瞬間などは、空気が温かい時と同じ圧力で吸い込まれると空気密度が上がるため、相対的に混合気が薄くなります。そのためチョークで空気量を絞り、混合気を濃くするのです。それによって、混合気に火が点きやすくなるわけですね。

 バイクのチョークは一般的に、ハンドルのスイッチボックス付近、ガソリンタンクの下付近、キャブレターそのものに組み込まれています。冬場はそれを操作しながらエンジンを始動させ、アイドリングが安定してきたら元に戻します。そのままにしておくと逆に混合気が濃過ぎる状態になるので、エンジンが不調をきたすのです。

 ちなみに、バイクのチョークの場合は前述の「空気を絞る」方式ではなく、ガソリンの量を増やす方式です。これでは「チョーク=絞る」とは意味合いが異なりますが、混合気を適正に調整するという広義の意味で、チョークという言葉が一般的のようです。

 チョークにはそんな役目があるのですが、ただ引けば良いのではなく、それにもコツがあります。どの程度空気量を絞れば良いのか、それはその日の気温だったりエンジンのコンディションであったり、様々だからです。

 ですので、オーナーを差し置いて僕がトライしても、三菱ミニカはセルモーターが空回りするだけで、エンジンに火が入りませんでした。コツを熟知しているオーナーがチョーキングすると、エンジンはご機嫌に目覚めたわけです。

 昔はこの技を競い合ったものです。エンジンかけるのが上手な人も苦手な人もいました。ちょっと濃いめにしてから薄くするとか、その逆であったり、セルモーターを回すタイミングであったり、それを巧みに操作することで、エンジンのご機嫌をとるのです。

 自分の愛車が他人では始動せず、自分だけに反応した時の喜びは格別でしたね。まさに愛車です。抱きしめたいほど可愛く思えました。

 電子制御式燃料供給システムになってからは、コンピュータが自在にチョーキングをしますから、誰であってもイグニッションボタンを押すだけで始動します。とても便利ではありますが、どこか寂しい気もします。

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