城跡散策は断念!! 上杉同士の死闘の舞台となった「七沢城」へ

神奈川県厚木市七沢にある「七沢城址」をバイクで訪れました。現在は七沢リハビリテーション病院が建つこのエリアは、かつて要害「七沢城」として構えられていた場所です。その痕跡を探しに散策したところ、草木に覆われてかなり苦戦しました。

■かつての要害、その痕跡は見つけられず

　バイクで神奈川県厚木市七沢にある「七沢城址」を訪れました。「七沢城」の歴史は、城址碑から少し離れたところにある「水汲沢（みずくさわ：城内の将兵が使用する飲料水を汲み出したところ）」の解説板に詳しく記載されていました。それによると、室町時代の1450年、鎌倉公方（かまくらくぼう）足利成氏（あしかがしげうじ）の近臣たちと、関東管領山内（かんとうかんれいやまのうち）上杉憲忠（うえすぎのりただ）の重臣たちとの間に争いが起き、これが関東戦国時代の幕開けとされています。簡単に言えば、京都の将軍の座を狙う鎌倉公方と、それを阻止する上杉家の対立ということになります。

バイクで「七沢城址」へ。かつて城の将兵が水を汲んだとされる「水汲沢（みずくさわ）」にて

　室町幕府初代将軍、足利尊氏（あしかがたかうじ）の子、基氏（ともうじ）の家系が世襲してきた役職が鎌倉公方（室町幕府が関東を支配、統治するために設置した鎌倉府の長官）で、その補佐役として置かれた関東管領は、足利尊氏の母方の親戚、上杉家が代々世襲していたのでした。

　上杉方に攻められた成氏がいったん江ノ島へ逃れた後に、鎌倉の七里ヶ浜の戦いで上杉方を敗退させます。その上杉方の憲忠が、ここ七沢山に要害を構えたとのこと。これが文献の中に初めて登場した「七沢城」にまつわる伝記です。

　その後、1488年に山内（やまのうち）、扇谷（おうぎがやつ）両上杉氏の間で不和が高じ、山内上杉顕定（あきさだ）が、当時扇谷上杉定正（さだまさ）が所有していた「七沢城」方面に襲来します。

　定正の弟の朝昌（ともまさ）が守っていた「七沢城」は落城し、それに対して定正は200騎ほどで現在の埼玉県川越市から一昼夜で駆けつけ、「七沢城」近くの南実蒔原（みなみさねまきはら）で顕定の大軍を打ち破るという奇跡的な勝利を挙げたそうです。

　この一連の戦で朝昌は戦死したと伝えられていたそうですが、実は生存していて、後に藤沢市の「大庭城」を守備していた、という説もあります。

山城の遺構を見るべく、草に行く手を阻まれながら慎重に歩き進める。散策から帰宅後、数カ所を山蛭に吸われていたことに気づく……

「七沢城」の廃城の時期は詳しくは分かっていないようですが、おそらく小田原北条氏がこの地域を制圧する16世紀半ばではないか、と考えられているようです。

　ただし発掘調査によって15世紀の建物の跡が発見され、火災を被ったような痕跡があることから、16世紀以前に放棄されていたかもしれないとのこと。解説板には「もしかすると、実蒔原の合戦の際に炎上したかもしれない」と書かれていました。

これ以上進むのは危険と判断して行き着いた場所には、尾根や平地も見えた

　昭和18年（1943年）に撮影された写真を見ると、現在リハビリテーション病院が建つエリアは、かつて平坦地で「本丸」だった場所のようです。その周囲は山で囲まれており、容易に侵入できない要害だったことが想像できます。

　実際、水汲沢の解説板があった場所から山を登ってみましたが、道は確かにあるものの、深い藪と蜘蛛の巣、さらには山蛭の襲来を受けてあえなく撤退……山には「堀切」の遺構があるらしいので見たかったのですが、断念しました。

「七沢城址」からバイクで6分ほどのところにある「実蒔原古戦場」の跡地。周囲には田畑と民家しかないが、かつてここで激戦が繰り広げられた

　気を取り直して「七沢城」の南東、バイクで6分くらいのところにある「実蒔原古戦場」に行ってみました。田園の中にチラホラと民家を見渡す場所でしたが、かつてここで激戦が繰り広げられたとは、到底信じられませんでした。