カワサキ「Z2」タンク内のサビ&液漏れ レストアファンもオススメの補修方法とは?
バイクのニュース / 2024年8月2日 7時10分
メイド・イン・ジャパンのモーターサイクルを代表する一台として、誰もが認める存在と言えるのがカワサキZ1/Z2シリーズです。バイク仲間の友人が、長年所有し続けてきた1975年式750RSを購入して、将来的にはフルレストアで仕上げてみようと考えているのが、この企画になります。購入車両の茶玉虫カラーのガソリンタンクは、内部にサビが発生していたものの簡単に除去できるレベルでした。タンク内のサビは、エンジン不調の源になります。ここでは別のタンクを用意して、汚れの除去とサビ退治しようと思ましたが、それが苦労の始まりでした……
■中古タンクを別に用意してオールペン依頼
ぼくの所有する750RS/Z2-A後期型の茶玉虫タンクは、ペイントコンディションがご覧の通り今ひとつです。将来的なフルレストアを考えると、もちろんリペイントになります。このままの外装コンディションでは、乗る気分にはなれません。そこで思いついたのが、別の外装パーツを用意して、ペイントのプロショップへオールペン依頼することでした。
筆者(たぐちかつみ)が所有するZ2(KAWASAKI 750RS Z2-A後期 1975)
ペイント済み外装キットパーツも販売されていますので、もちろんそれも検討しました。しかし、身近なバイク仲間が、中古のガソリンタンク、左右サイドカバー、テールカウルを安価に譲ってくれそうなので、それらの部品をベースに、オールペン依頼することにしました。
ガソリンタンク内部を洗浄するため燃料コックなどの穴を閉じ、中性洗剤をビールコップ半分程度流し入れ、さらにぬるま湯でタンクを満タンに満たして一昼夜放置。しばらく放置したところ、タンクの底の溶接部分から、茶色い液が漏れてきました……
入手したガソリンタンクは、Z2A前期モデル用の「タイガー」と呼ばれるタイプでした。見た目はそれほど悪くありませんでしたが、内部の汚れやサビが想像以上に酷いことが後々になってわかり、脱脂洗浄した後には、タンクの底あたりの溶接部分から、処理液漏れが発生していました……。
想像以上にタンク内のサビが進行していたようです。特に、溶接部分になる溝は、溶接時の熱でサビやすい傾向です。また、ゴミが溜まりやすいのも溝部分になります。ゴミの下で鉄板がさびていると、ゴミ除去してからでないとサビの除去ができません
仕方ありませんので、漏れが発生した部分と、心配な部分をTIG溶接職人さんにお願いして、補修溶接にて対処することにしました。ところが、溶接後には、また違った部分からも液漏れが発生……。しかも、溶接の熱で固着していた油汚れが溶けて、タンク内は再び真っ黒なドロドロ状態になってしまいました。
汚れ取りをまたやり直すと考えるか!? それとも「不幸中の幸い」と考えるかは、作業者の考え方次第だと思います。はっきり言えることは、思っていた以上に程度が良くないガソリンタンクでした。
そんなこんなで、汚れ取りと脱脂洗浄からすべてをやり直すことにしましたが、すでにこの段階で、液漏れ部分をすべて外部からの補修するのは断念しました。鈑金ハンダの利用も考えましたが、ペイント後にサビが侵食して、ガス漏れが始まってしまっては、どうにもなりませんから(別の個所から液漏れする可能性も考えられました)。
■タンク内部の「被膜樹脂剤」にも種類がある
こんなときにこそ頼りになる、頼りたいケミカルと言えるのが、タンク内壁用の「コーティング被膜剤」だと思います。
本来なら、汚れ取りとサビ取りを完全に行い、さらにガス漏れ補修ができれば、一液性のサビ取りケミカルによる処理で、どうにか対処できるものだと思います(過去の経験から)。
ツールカンパニーストレートで取り扱っているPOR15タンクリペアキットはタンク内にシーラーを流して硬め、サビ穴を塞ぐケミカルです。仕上げの封孔処理前に使う脱脂洗浄剤や、サビ除去ケミカルを同梱するフルキットのケミカルになります
バイク仲間の大先輩で、旧車レストア経験が長い知り合いにお話しすると、50年代以前の旧車ファン、レストアファンのあいだで、大きな信頼を得ている商品のひとつに「POR-15タンクリペアキット」があるそう。完全硬化後のタンクシーラーは、無気孔性で、空気の流れをシャットアウトするのが特徴のようです。
また、完全硬化後は、その被膜を剥がすのが大変なほどで、とにかく強い樹脂皮膜を形成するそうです。しかもその皮膜強度は、半永久的にも持続するという、うたい文句付の商品でもあります。タンク内部を脱脂洗浄した後に、ポリエステル樹脂を流し込むタイプとは、樹脂硬度や鉄板への密着性が、かなり違っているそうです。
マリーンクリーンとの名称の脱脂洗浄液をボトルの半分くらいバケツに入れ、同量のお湯で希釈しました。全量希釈利用する必要性は無いようですが、一度に使い切ってしまっても、特に問題はなさそうです。大きな四輪タンクなら全量利用しましょう
このリペアキットには、コーティング前の段取り用として使う脱脂洗浄剤「マリーンクリーン」と、サビ取り&サビを酸化被膜に転換する液剤の「メタルレディ」が同梱されています。今回は、すでにサビ取りを実践していましたが、前述したように、溶接の熱によってタンク内が再び溶けた油で真っ黒に汚れていたので、説明書をしっかり熟読してから、第一工程の脱脂洗浄工程から作業を始めました。
何故、程度が良さそうに見えたガソリンタンクなのに、サビの侵攻が酷かったのか……? 過去には、初期型マッハやカワサキW1のガソリンタンクのサビ取りを実践したこともありますが、もっと酷いサビでも、1液のサビ取りケミカルでサビの除去と防錆皮膜処理ができました。何故、このZ2タンクは、そのようなことになってしまったのか……!?
あくまで個人的な見解ではありますが、初期型マッハ(通称エグリタンクモデル)のガソリンタンクを横に置いて比較してみたところ、Z1/Z2用のガソリンタンクは、それ以前のマッハやW1シリーズと比べて、明らかに鉄板が薄く、サビ穴ができやすいのでは? と考えました。あくまでぼく個人の感想です。
タンクキャップ部分から内部を覗き込むと「分厚い樹脂層で形成される」のではなく「タンク内部にペイントを吹き付けた」ような印象です。ライナーの色がシルバーなので、ガソリンスタンドで給油する時にも、目立つことありません!!
カワサキの初代空冷Zシリーズ用ガソリンタンクのサビ取りを行う際には、処理後に、ピンホールなどの穴開きが無いか、徹底的に確認し、心配なときにはPOR-15タンクリペアキットで、あらかじめピンホール封じしておいたほうが懸命だと感じました。それほどまでに、ここで作業したガソリンタンクは、程度が良くなかったのだと思います。実際の作業工程に関してはギャラリーの写真とキャプションで紹介していますので、ガソリンタンク再生の参考になれば幸いです。
取材協力/ツールカンパニーストレート
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