ホンダ「NS500」は栄光の色彩 トリコロールカラーのイメージリーダー
バイクのニュース / 2024年8月12日 19時40分
ホンダのトリコロールカラーは、1982年に世界GPに登場し、ホンダに世界タイトルをもたらした2ストロークV型3気筒マシン「NS500」とイメージを鮮やかに伝えています。その色彩の記憶と栄光を振り返ります。
■ホンダとトリコロールカラーの始まりを振り返る
ホンダのレーシングカラーと言えば、「トリコロール」と呼ばれる「赤/青/白」の3色がお馴染みです。現在でもホンダのスーパースポーツモデル「CBR1000RR-R」が参戦している世界選手権には、トリコロールカラーのファクトリーマシンが活躍しています。
1982年シーズンのフレディ・スペンサー選手用の「NS500」。スペンサー選手のGPのルーキーシーズンはゼッケン40番だった
ホンダのレース部門である「HRC」(株式会社ホンダ・レーシング)は、トリコロールカラーに込めた想いを次のように表現しています。
・赤=勝利にかける人間の熱い情熱
・青=理論に基づく高い技術力
・白=モータースポーツを愛する全てのお客様
トリコロールとはフランス語の3色旗を表す言葉ですが、ホンダのトリコロールカラーは、アメリカのレースシーンから始まりました。
ホンダがアメリカ国内のモトクロスシリーズ戦に参戦開始する際に、チームのライダーは赤/青/白のモトクロスチャージを着用しました。また、バイクにトリコロールカラーが見られたのは、日本からデイトナ200マイルレースに遠征した隅谷守男選手のCB750レーサーが最初だと言われています。
さらに深掘りすると、このふたつはどちらも1973年3月のデイトナですから、モトクロスウエアとCB750レーサーのトリコロールカラーは、同時に登場したと言えます。
当時スペンサー選手が見ていた「NS500」のアナログメーター。3気筒のキャブレターに繋がる3本のスロットルケーブルも見える
その後、ホンダは1976年から世界耐久選手権に「RCB1000」を、1979年から世界GP(現MotoGP)に「NR500」を、そして1982年にはパリ・ダカールラリーの「XR500R」に、トリコロールカラーのファクトリーマシンを投入していきます。
世界GPのシーンに注目すると、ホンダが10年以上の沈黙を破り世界GPに再参戦した1979年に、トリコロールカラーを纏って登場したのは、長円ピストンを採用した4ストロークエンジンの意欲作「NR500」でした。残念ながら他メーカーの2ストローク勢を相手に苦戦を強いられます。
1982年には、いよいよトリコロールカラーのイメージリーダーとも言える「NS500」が世界GPに登場します。2ストロークV型3気筒エンジンの「NS500」は天才ライダーと呼ばれたフレディ・スペンサー選手のライディングで大活躍を見せます。
デビューイヤーの第7戦ベルギーGPで初優勝を獲得、これはホンダの15年ぶりの世界GPでの優勝でした。続く第10戦スウェーデンGPでは片山敬済選手が優勝しています。1983年シーズンには世界チャンピオンに輝きます。
このように、トリコロールカラーは「NS500」の栄光とともにファンの心に刻まれていきました。
1982年当時では最新装備のアルミフレーム。V型の下側シリンダーのチャンバーはカウル内で1周回って後ろ向きに排気されるトグロ形状
そのトリコロールカラーですが、「NR500」では単純な3色の塗り分けでしたが、「NS500」ではカウリングやタンクの形状を意識したラインが入ります。500ccクラスを表す黄色のゼッケンスペースもよく似合っています。
カラーリングは毎年変わっており、1983年にはアンダーカウルからテールカウルに伸びる赤と白のラインが印象的です。1984年の「NSR500」では特殊な排気の流れを意識した塗り分けになっています。ライダーのレーシングスーツもトリコロールカラーでコーディネートされていました。
翌1985年からのホンダの世界GPマシンは、タバコブランドのロスマンズや、石油会社のレプソルなどスポンサーカラーに塗られています。暫くは「スポンサーカラーこそトップレーシングのイメージ」という時代が続きます。
ブレーキはNISSIN製異形4ポッドキャリパー。アンチノーズダイブ効果があるTRACを装備している
市販車ではスポーツモデルに採用されていた赤/青/白のトリコロールカラーは、蛍光色になったり、クルーザーやツーリングモデルなど様々な車種に採用されて現在に至っています。
「CBR250RR」や「CBR1000RR-R FIREBLADE」の登場とともに、街にもサーキットにも、新時代のトリコロールカラーと呼べるカラーリングのバイクが増えてきました。いつの時代も、レーシングカラーはファクトリーマシンと市販車に乗るファンを繋ぐ、大事な架け橋なのです。
■ホンダ「NS500」(1982年型)主要諸元
エンジン種類:空冷2ストローク112度V型3気筒ピストンリードバルブ
総排気量:498.6cc
最高出力:127.5PS/11000rpm
車両重量:113kg(乾燥)
燃料タンク容量:16L
フレーム形式:アルミ製ダブルクレードル
【取材協力】
ホンダコレクションホール(栃木県/モビリティリゾートもてぎ内)
※2023年12月以前に撮影
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