【MotoGP第10戦イギリスGP】中上貴晶選手「異なるアプローチ」をトライした週末。苦戦のなか決勝レースは15位でポイント獲得

MotoGP第10戦イギリスGPが2024年8月2日から4日にかけて、イギリスのシルバーストン・サーキットで行なわれました。MotoGPクラスに参戦する唯一の日本人ライダー、中上貴晶選手（イデミツ・ホンダLCR）は、スプリントを17位、決勝レースを15位で終えています。

■より良い状態を目指して、模索が続く

　MotoGPの2024年シーズン後半戦が、イギリスGPから始まりました。約3週間のサマーブレイクを挟んで迎えた後半戦の最初のレースですが、ホンダのマシンには、イギリスGPで大きなアップデートは行なわれませんでした。これについては中上貴晶選手（イデミツ・ホンダLCR）がドイツGP以前から語っていたことではありました。よって、イギリスGPでこれまでと同じように苦しい戦いを強いられるであろうことは、ライダーたちも含めて予想されていたことでした。

【MotoGP第10戦イギリスGP】中上貴晶選手（#30／IDEMITSU Honda LCR）。イギリスGPでは、ロードレース世界選手権の75周年を記念して、全MotoGPチームがビンテージカラーのバイクでレースに臨んだ。イデミツ・ホンダLCRのデザインは、海から昇る朝日をイメージしているのだとか

　これに加えて、中上選手はHRCの要望により、他3名のライダーとは異なるアプローチを行なっていました。そのために金曜日のフリープラクティス1では1台のマシンにトラブルが発生するなど、足踏みをしたセッションもあったということです。現時点では、レースウイークをも使って様々なトライをせざるを得ない状況なのです。

　中上選手は予選Q1では11番手、グリッド順は21番手となり、土曜日のスプリントレースでは17位でゴールしました。シルバーストン・サーキットは高速コーナーが多いサーキットであり、中上選手は高速コーナーを得意とするライダーです。しかし、土曜日を終えて、中上選手はその高速コーナーで苦しんでいる、と語っていました。

「減速区間や高速コーナーでのバイクのフィードバックがかなり悪いので、攻めきれないんです。コーナーエントリーからすごく減速しないとエイペックスに向かうことができないし、高速コーナーでのコーナリングのボトムスピードはかなり遅いです」

　こうした状況から、中上選手はバイクのセッティングを大きく変えて、日曜日の決勝レースに臨みました。よりフロント荷重になるように、ジオメトリーを変更したのです。普段のレースウイークでは行なわれないような変更にまで着手したということですが、それは土曜日までの状況が、「違うことを試して外れたとしても、それが次につながる」と判断するほど厳しいものだったからでした。

　その結果、高速コーナーのコーナー進入とコーナリングスピードとフィーリングについてはまだまだ改善の余地があるものの、フィーリングはそれほど悪くもなく、前でゴールしたライダーのペナルティもあって、中上選手の決勝レースのリザルトは15位となったのでした。

　中上選手がイギリスGPの週末に「異なるアプローチをしていた」ように、ホンダは今、今後の改善のために4名のライダーで様々なトライを行なっている状況です。エンジンの仕様が異なっていたり、見た目でわかる部分については、テールカウルの空力デバイスの形状がファクトリーチームのレプソル・ホンダ・チームとサテライトチームのLCRホンダでは違っています。しかし、そうしたトライが結果に結びついていないことも事実です。

「今は、4台でベストなスペックを探っていますが、まだ解決には至っていません。（次戦の）オーストリアまでの間に4台のデータを解析してもらって、オーストリアでは少しでもいい状態で走りたいと思っています」

■中上貴晶選手、2025年以降の状況は？

　今季が契約更新のタイミングとなる中上貴晶選手は、現在、来季以降の状況が注目されるライダーのひとりです。

【MotoGP第10戦イギリスGP】中上貴晶選手（#30／IDEMITSU Honda LCR）

　木曜日の時点で、中上選手は「プランAは今のチーム（イデミツ・ホンダLCR）からの継続参戦」だと、契約更新を希望していると語っています。「イギリスGP後に、ホンダともう一度話をします」とのことでした。

　次戦のMotoGP第11戦オーストリアGPは、8月16日から18日にかけて、オーストリアのレッドブル・リンクで行なわれます。中上選手の話によると、待たれる大幅なアップデートはオーストリアGP後のアラゴンGP、またはサンマリノGPになるだろうということです。