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玄人を唸らせる完成度と優れたデザイン性を両立 「KOSLOW」ヘッド搭載の横浜ホットロッドショーチャンピオンマシンを再考

バイクのニュース / 2024年8月28日 8時10分

日本最大のアメリカン・カスタムカルチャーの祭典『YOKOHAMA HOTROD CUSTOM SHOW2023』のチャンピオンマシン、JURASSIC CUSTOMS「KOSLOW」について解説します。

■1DAYで2万5000人を動員する「アメリカン・カスタムカルチャーの祭典」

 2024年7月18日午前10時にネット上でエントリーが開始され、同日には1時間たらずで出展枠が埋まったという『YOKOHAMA HOTROD CUSTOM SHOW(以下:HCS)』。

 2024年12月1日に神奈川県横浜市のパシフィコ横浜で開催される同ショーといえば昨年は1DAYで2万5000人を動員し、『日本最大のアメリカン・カスタムカルチャーの祭典』として知られているのですが、カスタムやブース出店の申し込みは人気コンサートのプラチナチケット並みの競争率となっており、今年も販売ブースは瞬く間に定員オーバー。Web申し込み開始から3分ほどで終了となった模様です。

フレームやタンクの他、車体のすべてをワンオフ(一品もの)で製作し、サイドバルブエンジンをOHV化する『KOSLOW』ヘッドを搭載するこのマシン。卓越のディテールワークやエンジンはもちろん、全体のスタイリングの完成度の高さが評価を集めた理由となっていますフレームやタンクの他、車体のすべてをワンオフ(一品もの)で製作し、サイドバルブエンジンをOHV化する『KOSLOW』ヘッドを搭載するこのマシン。卓越のディテールワークやエンジンはもちろん、全体のスタイリングの完成度の高さが評価を集めた理由となっています

 ちなみに昨年のHCSからカスタム車両のエントリーには事前の写真審査が取り入れられ、『アメリカン・カスタムの祭典』たるショーのクオリティがコントロールされるよう配慮されているのですが、600件を超えるエントラントたちへの審査通過の告知は9月を予定。多くのビルダーが結果を待ち望んでいる状態となっており、その中で唯一、出展が約束されているのが前年のチャンピオンマシンとなっています。

 1992年に『ホットロッドショー』の冠のとおり、アメ車のカスタムショーとしてスタートしたHCSは2002年よりモーターサイクルのエントリーを開始。以来、会場内で最も優れたマシンを『ベスト・オブ・モーターサイクル』として選出し、2008年からは前年のチャンピオンマシンがショーのオープニングでライドイン入場することで来場者を楽しませているのですが、当然、今年は2023年のチャンピオンマシンが登場予定。それがここに紹介する『JURASSIC CUSTOMS(ジュラシック・カスタムズ)』による1台です。

■珠玉のマシンを送り込む「JURASSIC CUSTOMS」とは?

 アパレルメーカー『NEIGHBORHOOD』の代表、滝沢伸介氏がディレクターを務め、『CHEETAH CUSTOM CYCLES』の大沢俊之氏が製作を担当するコラボ・ユニット的なスタイルで、これまでも数々のカスタムマシンを生み出してきた『JURASSIC CUSTOMS』ですが、その特徴として挙げられるのが『ヴィンテージとオリジナリティの融合』とでもいえばいいでしょうか。

『NEIGHBORHOOD』の滝沢伸介氏(右)と『CHEETAH CUSTOM CYCLES』の大沢俊之氏(左)によるプロジェクト、『JURASSIC CUSTOMS』の『KOSLOW』はHCS2023でベスト・オブ・ショーモーターサイクルを獲得『NEIGHBORHOOD』の滝沢伸介氏(右)と『CHEETAH CUSTOM CYCLES』の大沢俊之氏(左)によるプロジェクト、『JURASSIC CUSTOMS』の『KOSLOW』はHCS2023でベスト・オブ・ショーモーターサイクルを獲得

 昨年のHCSで頂点に輝いたこの1台にしても、貴重なヴィンテージパーツを使用しながらも決して『焼き直し』に留まらない圧巻のクオリティが与えられています。

 その中で、まず目を引くのが車体の中心に鎮座するエンジンなのですが、これは1920年代に開発されたと言われる『KOSLOW』ヘッド搭載のモーターとなっています。

エンジンは1936年式のハーレーのサイドバルブモデル、ULをベースに『KOSOW』製ヘッドとシリンダーでOHV化された1340cc。ロッカーアームやバルブスプリングが剥き出しとなった構造やヘミヘッドの燃焼室などは、たしかに初期型のナックル(ハーレー初のOHVモデル)を彷彿とさせる構造となっており、同モデル開発の際に参考にされたという説も頷けるものとなっていますエンジンは1936年式のハーレーのサイドバルブモデル、ULをベースに『KOSOW』製ヘッドとシリンダーでOHV化された1340cc。ロッカーアームやバルブスプリングが剥き出しとなった構造やヘミヘッドの燃焼室などは、たしかに初期型のナックル(ハーレー初のOHVモデル)を彷彿とさせる構造となっており、同モデル開発の際に参考にされたという説も頷けるものとなっています

 旧いアメリカ製バイクで主流であったサイドバルブをOHV(オーバーヘッドバルブ)に変換するオリジナルのコンバージョン・シリンダーヘッドを開発したAndrew Koslowは、もともと『米国モーターサイクルカンパニー』のビッグスリー(ハーレーダビッドソン社/インディアンモーターサイクル社/エクセルシャー・ヘンダーソン)の一角であった『エクセルシャー・ヘンダーソン』のエンジニアであり、オフロードの丘を駆け上がる『ヒルクライムレース』のチャンピオンとして知られた人物であり、エクセルシャー在籍時に24台のOHV試作機を製作し、現在は2台が米国の博物館、『Wheels through time』に収蔵されているそうです。

■『米国モーターサイクルカンパニー』のビッグスリーの一角、エクセルシャー・ヘンダーソンとは?

 車体左右に確認できるキャブはサイドフロートのアマル製を前後シリンダーそれぞれに装着。Vツインエンジンの構造上、前後シリンダーヘッドに独立ポートを備えることが理想ですが、1920年代でそれを実現するAndrew Koslowの発想には心底唸らされます 車体左右に確認できるキャブはサイドフロートのアマル製を前後シリンダーそれぞれに装着。Vツインエンジンの構造上、前後シリンダーヘッドに独立ポートを備えることが理想ですが、1920年代でそれを実現するAndrew Koslowの発想には心底唸らされます

 ここではまず、その希少な『KOSLOW』ヘッドを解説する前に『エクセルシャー・ヘンダーソン』がどんなメーカーだったのかを簡単に説明させていただきます。

 エクセルシャーとは自転車のビーチクルーザーで知られる『シュウィン』社が1907年に米国のシカゴで生産を開始したモーターサイクルメーカーで、1917年には当時「すべてのモーターサイクルの中で最も高度で進歩的なモデル」といわれた縦置き4気筒のインレットオーバーエキゾーストのエンジンを搭載する『ヘンダーソン』を買収。

 1925年にはハーレーのレーシングモデルである『WR』やインディアンの『スカウト』に先立ち、737ccモデルの『スーパーX』を発表するものの、世界恐慌の影響で1931年にモーターサイクル部門を閉鎖。このように短命に終わってしまったメーカーなのですが、同社の先進的な技術は先に述べたとおり、ハーレーやインディアンに多大な影響をもたらしています。

 エクセルシャー閉鎖後に、OHVコンバージョンヘッドの生産許可を得たAndrew Koslowはハーレー用のシリンダーヘッドをごく少数生産したとのことですが、半球形の燃焼室であるヘミヘッドが採用された同パーツは、一説によるとハーレー初のOHVモデルであるナックルヘッド(1936~1947年に生産されたモデル)にも影響を与えたといわれています。

 こうした幻のパーツの存在にアンテナを張り、それを自らのカスタムプロデュースに活かす『NEIGHBORHOOD』の滝沢氏の目利きには唸らされることしきりです。

■随所に光る製作者の「技」

 その希少なエンジンを搭載する『JURASSIC CUSTOMS』の1台は『CHEETAH CUSTOM CYCLES』の大沢氏によってフレームがフルスクラッチ(まったくのゼロの状態からフレームを製作すること)され、隙のない姿が構築されているのですが、フレームはクロモリ4130材を使用し、各部をブロンズブレイジングの『ロウ付け溶接』で製作。

リア部分はプランジャーサスとし、最低限の乗り心地も確保。フレームはクロモリの4130材を使用し、そこにロウ付け溶接が施されていますが、あえてクリア仕上げとしビード面もカスタムのポイントとして演出。ビルダーの技術を分かりやすく示す趣向が凝らされていますリア部分はプランジャーサスとし、最低限の乗り心地も確保。フレームはクロモリの4130材を使用し、そこにロウ付け溶接が施されていますが、あえてクリア仕上げとしビード面もカスタムのポイントとして演出。ビルダーの技術を分かりやすく示す趣向が凝らされています

 軽量かつ高い強度を誇る一方で、溶接時などの高熱によって「焼き」が入ってしまうとクラックが起こりやすいクロモリという素材は、扱いがかなり難しいのですが、大沢氏は卓越の技術力で見事にマシンを具現化。

 旧き時代の英国製レーシングマシンを彷彿とさせるネックまわりやリアにプランジャーサスを仕込んだフレームの造形はもちろん、タンクやシート、ハーレーのファットボブフェンダーを彷彿とさせるリアまわりも見事なフィニッシュに仕上げられています。

ミッションは英国車のノートン製を流用。クラッチはダイヤフラムスプリング式となっています。フレーム各部に見えるブロンズブレイジングのロウ付け溶接のビード跡もかなり美しい仕上がりですミッションは英国車のノートン製を流用。クラッチはダイヤフラムスプリング式となっています。フレーム各部に見えるブロンズブレイジングのロウ付け溶接のビード跡もかなり美しい仕上がりです

 このように美しい品格を持ちながら、各部のデザインやエンジンに込められたヒストリーは、YOKOHAMA HCSのチャンピオンマシンに相応しく、やはり「アメリカの息吹」を、そこかしこから感じさせるものとなっています。

 昨年は冒頭で述べたとおり2万5000人もの観客を動員し、モーターサイクル出展も600
台を越えるYOKOHAMA HCSが日本最大のアメリカン・カスタムカルチャーの祭典であることに異論を挟む人も少ないとは思いますが、その中で頂点を掴むのはやはり『アメリカの空気感』を漂わせるマシンであるべきと筆者も個人的に考えます。

 たとえば膨大な台数のエントラントの中には、ジャンルに関係なく素晴らしい出来栄えのカスタムマシンも存在するのですが、やはり『HOTROD SHOW』という冠がある限り、最低限のドレスコードは必要です。その為のショー事前審査であり、その厳格化が会場の空気感に繋がるのだとも思います。

 今年の12月1日にパシフィコ横浜で開催されるHCSでライドインが予定されている『NEIGHBORHOOD』と『CHEETAH CUSTOM CYCLES』による『JURASSIC CUSTOMS』の1台。その珠玉のマシンが会場の中で時空を超え、いかなるエキゾーストノートを響かせるのか……今から楽しみで仕方ありません。

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