初代空冷Zの持病!? タコメーターギヤのオイル漏れ修理 〜日本の至宝「空冷4発」を未来へ継承〜Vol.11
バイクのニュース / 2024年8月30日 7時10分
バイク仲間の友人が長年所有し続けてきた1975年式の750RSを購入しました。将来的にはフルレストアで仕上げようと考えています。初代空冷Z1/Z2シリーズの持病的オイル漏れ箇所は、オルタネーターカバーの出力ケーブル取り出しグロメット部だけではなく、タコメーターギヤの取り出しユニットも、同じようにオイル漏れが気になるポイントのようです。
■完成度が高かった初代空冷4発にも持病があった
タコメーターのドライブギヤ部分から、エンジンオイルが滲んでいたり、漏れていたりするケースを時折見かけることがあるカワサキ750RS/Z2シリーズ。このバイクを紹介して下さった、カワサキ直系営業所に所属していた元メカニックからお聞きしたお話しだと、Z2シリーズが現役だった当時は、一般の販売店で手に負えない重整備に関して、直系営業所への修理依頼が各ディーラーから回ってきたそう。
コンディション良く走らせることができている750RS/Z2-A後期モデルですが、タコメーターギヤからのオイル滲みが目立つようになってきました。組み立て手順によっては新品オイルシールでもオイル漏れを繰り返してしまうそうです
それまでの大型モデル、2ストトリプルエンジンを搭載したH1/H2のマッハシリーズなどと比べれば、極めて完成度が高い状態で発売されたモデルが、初代空冷4気筒エンジンのZ2シリーズだったそうです。
だから、大きなトラブルで入庫することは少なかったそうですが、小さなトラブルに対する対策は、営業所の現場レベルでもディーラーへ向けて情報共有していたそうです。
お話しは反れますが、500ccや750ccの2ストトリプルは、回し過ぎて焼き付かせた状態で入庫する車両が圧倒的に多く、仮に、しっかり暖機運転して、分離給油のエンジンオイル量をしっかり管理していれば、トラブルに遭わなくて済んだケースも多々あったそうです。
ぼく自身、500トリプルは4台、フラッグシップの750は1台だけ所有歴がありますが、暖機運転は重要だと思いました。慎重になり過ぎたあまり、暖め過ぎても決して良くはありませんが……。
カワサキ直系営業所の元メカニック経由で見つけたZ2だったので、さすがに素性は良く、気になるトラブルも無く好調に走ってくれました。
タコメーターケーブルの締め付けマウント部分が、タコメーターギヤガイドになります。整備性の良さを求めた結果、シリンダーヘッドとは別体部品になっています。このような整備性の良さに惚れたカワサキの初代空冷Zファンも多いようです
しかし、Z2シリーズが販売されていた70年代当時から多かったオイル漏れに関しては「今はまだ漏れていないけど、ある程度、走行距離が進むと必ず漏れるようになるからね……」と聞いていました。交流発電機の出力ハーネスのゴムグロメット部分と、シリンダーヘッドの右前方にあるタコメーターケーブルの取り出しユニット部分のオイル漏れがそれでした。
名義変更を済ませて乗り始めた当時は、オイル滲みや漏れはありませんでしたが、数百キロ走った頃には、オイル滲みが出てくるようになりました。車両点検時でガレージへ持ち込むと、タコメーターギヤのオイル滲みも、ついでに修理することになりました。
■オイルシールの組み立て時は「タコギヤ」に要注意
オイル滲みや漏れ原因のひとつに、オイルシールリップのダメージ問題があります。
タコメーターギヤガイドに圧入されたオイルシールの不良で、エンジンオイルが漏れてしまうことが多いそうです。ギヤガイド本体のオイル漏れ防止は、Oリングの組み込みで行われています。ここでは、オイルシールとOリングそれぞれを交換します
オイルシール交換時には、タコメーターギヤをセットしながら行いますが、このときに、ギヤシャフト部分を無理に押し込んでしまうと、シャフト先端のエッジでオイルシールリップにダメージを与えてしまうことが多いようです。
タコメーターギヤをガイドボディへ差し込む際には、極細ピックアップツールでギヤシャフトの先端がスムーズに入り、オイルシールリップをキズ付けないよう要注意。ピックツール先端にもグリスを塗布するのがベストです
ギヤを組み込む際には、ゴム×金属部品の潤滑用ラバーグリスを塗布しますが、オイルシールリップが噛み込まないように、ピックアップツールでリップをめくり上げながらながらシャフトを差し込むようにするのがダメージを与えない方法だそうです。
また、外部からゴミが侵入することによって、シールリップが痛んでしまうケースもあります。ここでは、その対策例として、タコメーターケーブルの固定ナット部分をシーリングしました。
切り出したガスケットは、ケーブル側のリングナット内側とタコメーターギヤガイドのオイルシールホルダー先端部に挟まれるようにして使います。この対策で雨天走行時にケーブルを伝って外部からゴミが入りにくく、オイルシールを保護できます
手元に不要な2ストエンジン用のベースガスケットがありましたので、ハサミで寸法に合わせてカットして利用しました。実は、以前に同様の対策パーツをメーカーが用意していた時期もあり、オイル滲みが発生しているエンジンには、このような部品で対策していたこともあったそうです。いずれにしても、せっかく新品オイルシール&Oリングに交換する時には、オイルシールが長持ちするような策を、可能な限り講じておきたいものだと思います。
タコメーターギヤガイド本体をシリンダーヘッドへ復元するときには、液状ガスケットをOリング周辺にしっかり塗布してから組み込みます。組み込み前には、シリンダーヘッド側ホルダー部も脱脂しましょう。組み込み後は即エンジン始動せずに待ちましょう
また、1970年代の「接着剤系液状ガスケット」と比べて、現代の「シリコン系液状ガスケット」は、乾燥硬化後にも弾力性があり、液状ガスケットを厚めに盛ることもできるのが特徴で、以前と比べればオイル漏れや滲み頻度が確実に減っています。
それでもある一定の期間を経過すれば、オイル滲みや漏れが発生することもあります。液状ガスケットを盛って補修したときには、すぐにエンジン始動してエンジンオイルを回すことなく、最低でも1時間近くは放置して、液状ガスケットの初期硬化を待つようにしましょう。
まぁ、オイル滲みが出た時には、その都度「対策修理すれば良い」などなど、心に余裕を持ちたいものです。歴史にその名を残す、カワサキの初代空冷4発オーナーなのですから……。
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