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国産バイクでは数少ない「シャフトドライブ」のメリットって?

バイクのニュース / 2024年9月6日 11時10分

BMWバイクやモトグッツィなど、欧州製のバイクには後輪をシャフトで駆動する車両が数多くあります。それに対して日本メーカーのバイクはほとんどがチェーン駆動ですが、この違いは何でしょうか? シャフト駆動ならではのメリットがあるのでしょうか?

■じつは昔からあったシャフト駆動

 バイクは後輪の駆動方式に「チェーン」、「ベルト」、「シャフト」の3種類がありますが、多くの人が馴染み深くてパッとイメージするのはチェーン駆動ではないでしょうか。また「ベルト駆動」は、有名なところではハーレーダビッドソンが採用しています。

BMW Motorrad「R 1250 RT」のシャフト駆動部分。太いスイングアームの中に、エンジンの回転を後輪に伝えるシャフトが収められているBMW Motorrad「R 1250 RT」のシャフト駆動部分。太いスイングアームの中に、エンジンの回転を後輪に伝えるシャフトが収められている

 チェーン駆動とベルト駆動では構造や材質が異なるので、それぞれにメリット・デメリットがありますが、後輪を駆動する仕組みとしてはなんとなく似ているし、見た目(自転車と同じ?)で構造もおおむね理解できるのではないでしょうか。

 ところが「シャフト駆動」は、構造がまったく異なります。そもそもチェーン駆動やベルト駆動のように、見た目だけではどうやって後輪を回しているのかよく分かりません。

 シャフトドライブ(シャフト駆動)は文字通り「Shaft=軸」によって、エンジンの回転を後輪に伝えています。シャフトは後輪の中心軸と回転方向が90度異なるため、特殊な「かさ歯車」を用いた「ファイナルドライブギア」が必要になります。チェーン駆動のスプロケットやベルト駆動のプーリーと比べると、けっこう複雑な構造になります。

 バイクのシャフトドライブは意外と歴史が古く、1990年代初頭には存在しました。これは当時、「縦置きエンジン(クランク軸が車体に対して縦方向)」のバイクが多かったためで、かつてクルマでは主流だったFR方式(フロントエンジン、リアドライブ)で一般的だったことと同じ理由で、シャフトドライブは縦置きエンジンと構造的に相性が良かったからだと言えます。

■駆動方式によるメリット・デメリットは?

 後輪の駆動方式は、それぞれにメリット・デメリットがあります。まず、もっともメジャーな「チェーン駆動」のメリットは、様々なバイクに対応する汎用性の高さと、それに伴う安価な製造コストが大きいでしょう。また最終減速比(二次減速比)が簡単に変更できるため、レース等にも対応しやすいです。対するデメリットは、定期的(比較的頻繁)にメンテナンスが必要になり、交換が必要(チェーンやスプロケットは消耗部品)なところです。

ベルト駆動はメンテナンスがほぼ不要で静粛性が高い。ただし異物の噛み込み等で切れる可能性がある。写真はハーレーダビッドソン「ローライダーS」のベルト駆動部ベルト駆動はメンテナンスがほぼ不要で静粛性が高い。ただし異物の噛み込み等で切れる可能性がある。写真はハーレーダビッドソン「ローライダーS」のベルト駆動部

 次にベルト駆動ですが、メリットはほぼメンテナンスフリーで静粛性に優れる点です。デメリットはベルトとプーリーの間に異物(飛び跳ねた小石など)を噛み込むと、ベルトが切れる可能性があります。また最終減速比(二次減速比)を変更しにくい部分もあります。

 そしてシャフト駆動のメリットは、ほぼメンテナンスフリーで耐久性が高く、チェーンやベルトのような消耗部品ではありません。また静粛性にも優れています。

 さらに大きなメリットとして「伝達効率」が優れています。ちなみにチェーン駆動は5~10%ほどの損失がありますが、シャフト駆動の損失は約2%と言われます。もしエンジン本体の出力が同じなら、理屈の上ではシャフト駆動の方が速い(!?)ということになります。

 ……が、速さを最優先するスーパースポーツ車やレーシングマシンは、シャフト駆動を採用しません。それは最終減速比(二次減速比)を変更しにくく、チェーンより駆動システム全体の重量が増すことが大きな要因です。

モトグッツィ「Vストーン」のシャフト駆動部モトグッツィ「Vストーン」のシャフト駆動部

 マニアックな部分では、構造的にスイングアームのピボット部の配置に制限があるため、ハンドリングに影響する車体のディメンション作りに不利だったりします。

 さらに言えば、シャフト駆動はスロットルを開けた時に車体の後部がグッと持ち上がり、反対にスロットルを閉じると車体後部が沈み込む「トルクリアクション」という特性があり、この独特な癖を好まないライダーも少なくありません。

■国産バイクにシャフト駆動が少ないのは?

 じつはシャフト駆動のデメリットの中の「重量」と「トルクリアクション」に関しては、近年は様々な技術進化によってかなり改善されています。とはいえ最終減速比の問題も残るためレーシングマシンには使われませんが、アドベンチャー系やツアラー系ではメリットが勝る部分も多く、採用するバイクはとくに欧州モデルに多く見られます。

1985年に発売されたヤマハ「VMAX1200」は、V4エンジンが当時としては破格の145馬力を発揮。強大なパワーに対応するためシャフト駆動を採用1985年に発売されたヤマハ「VMAX1200」は、V4エンジンが当時としては破格の145馬力を発揮。強大なパワーに対応するためシャフト駆動を採用

 それではなぜ日本製バイクはほとんど採用しないのでしょうか? これは国産車に縦置きエンジン車が少ないこともひとつの理由でしょう。

 とはいえ、過去には国産バイクで一般的な横置きエンジンの車両でもシャフト駆動のモデルは相応に存在していました(大排気量の大馬力モデルや、高級ツアラー系に多かった)。中にはほとんど同じ構成のバイクで、チェーン駆動とシャフト駆動の2仕様をラインナップするモデルもあったくらいです。

 というワケで、現行国産車でシャフト駆動が姿を消した理由は定かではありませんが、複雑な構造による高い製造コストが要因では、と思われます。シャフト駆動ならではのメリットも少なくないので、少々残念な感もありますが……。

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