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斬新な外観だけじゃない!? “神社仏閣スタイル”と呼ばれた日本的な個性を表現するホンダ「ドリームC70」とは

バイクのニュース / 2024年9月9日 19時40分

1957年生まれのホンダ初の並列2気筒エンジンを搭載した「ドリームC70」は、車体各部が角張ったデザインで統一され、「神社仏閣スタイル」と呼ばれました。欧州車の模倣から脱却し、メカニズム的にも「世界水準を超えた」と評価されたバイクでした。

■注目すべきは外観だけじゃない。当時最速の4スト250ccマシンだった

 戦後に創業したホンダは日本の復興とともに成長し、1949年には同社では初めての自動二輪車となる「ドリームD型」の生産が始まります。

1957年に登場したホンダ初の4ストーク並列2気筒SOHCエンジンを採用した「ドリームC70」は、世界水準を超えたと評されるほど洗練された作り(写真の展示車両は1958年型)1957年に登場したホンダ初の4ストーク並列2気筒SOHCエンジンを採用した「ドリームC70」は、世界水準を超えたと評されるほど洗練された作り(写真の展示車両は1958年型)

 それによって日本を代表する自動二輪車メーカーとなったホンダは、生産するバイクのエンジンは2ストロークから4ストロークへ、さらに動弁系は旧式なOHVからより高性能なSOHCへと進化していきます。

 1957年には当時のホンダの主力モデルである「ドリーム号」の最新型「ドリームC70」(排気量250ccクラス)が発売されます。

 時代的な流れとしては、本田宗一郎のマン島TT出場宣言の3年後であり、海外から4億円以上と言われる最新鋭の製作機械を輸入し、それらが稼働したタイミングでした。関係者やファンの注目を集める「ドリームC70」の発売は、当時のメディアが「世界水準を超えた」と評価するほどの高性能でした。

 注目すべき特徴は、ホンダでは初の2気筒エンジンです。以前の「ドリームSA/SB」は単気筒エンジンのSOHCですから、「ドリームC70」は第2世代目のSOHCエンジンとなります。

 左右に並んだシリンダーは等間隔で交互に燃焼する構造で、トルク変動が少なく回転が円滑です。振動が少なく乗り心地が良い上に、高回転に適したSOHCにより、当時としては驚異的な最高出力18ps/74000rpmを発揮しました。

 そして4速ミッションを採用し、最高速は130km/hという、これも当時としてはクラス世界最速を誇り、西ドイツ車を凌ぐ性能でした。高速スポーツ走行から、低速トルクが必要な街中の実用走行までを快適にカバーし、138kgの軽量(乾燥重量)な車体と相まって、4ストローク2気筒エンジンならではの走りを提供したと言われています。

ホンダ初の2気筒エンジン。当時としてはハイメカのSOHCを採用。セルモーターはなく、始動はキックのみだったホンダ初の2気筒エンジン。当時としてはハイメカのSOHCを採用。セルモーターはなく、始動はキックのみだった

 これら走りの特徴は現代のホンダ車とも重なるイメージですが、車体のデザインにもホンダならでは個性があふれています。

 現在ではバイクの多くはフレームと外装を分けた設計・開発ですが、「ドリームC70」のフレームは鋼板プレス製で、そのフレームの一部は外装そのものとなっています。

 つまりストレスがかかる応力外皮なので頑丈で衝撃に強く、同時に美しい外観でなければいけません(燃料タンクは別体)。さらに剛性もありながら軽量であること。このやっかいなフレーム設計は、単気筒から2気筒になったエンジンで重量が増えればなおさら難しいはずです。

 そこへ、創業者の本田宗一郎は「デザインにお寺や神社の建築様式を取り入れて、日本らしい個性を出してみたらどうか」と提言したと言われています。

 確かに、ヘッドライトやウインカー、さらにはリアショックまで角張ったデザインとなっており、それまでのバイクとは違うユニークな外観となっています。

たいへんユニークな角型断面のリアショック。スイングアームも鋼板プレスで製作されているたいへんユニークな角型断面のリアショック。スイングアームも鋼板プレスで製作されている

 1950年代半ばまでは、日本のバイクのほとんどが欧州車のデザインをお手本としていました。しかし条件が重なり合う難しい設計をこなしたエンジニアの苦労は、「ドリームC70」のデビューによって日本のバイク界の新たな出発点となります。

 角張ったデザインはフロントからリアまですべてのパーツを統合してホンダオリジナルの「神社仏閣スタイル」を生み出しました。

 その後、兄弟車として同じルックスを持つ排気量305cc版の「ドリームC75」もラインナップされました。ユーザーからはより高性能を望む声も熱く、バイクが発売されるたびに性能が大きく向上していく時代でした。

「ドリームC70」も「ドリームC71/C72」へとモデルチェンジするたびに熟成されたのです(写真の車両は1958年型の「ドリームC70」)。

 同時に、2気筒エンジンと車体をベースにしたスタイリッシュなスポーツモデル「ドリームCS71」をバリーションに加え、さらに1960年には「ドリームC70」の2気筒エンジンをベースに改良した「ドリームCB72スーパースポーツ」が発売されました。

当時としては珍しい角型ヘッドライト。鋼板プレス製のハンドル上部に配置された角型ウインカーもユニーク当時としては珍しい角型ヘッドライト。鋼板プレス製のハンドル上部に配置された角型ウインカーもユニーク

 華やかなバリエーションモデルの中で、実用車的な印象もある「ドリームC70」ですが、乗りやすく便利で、高性能な走りも楽しめるホンダらしさが詰まった1台だと言えるのではないでしょうか。

 ホンダ「ドリームC70」(1957年型)の当時の販売価格は16万9000円です。

■ホンダ「ドリームC70」(1957年型)主要諸元
エンジン種類:空冷4ストローク並列2気筒SOHC
総排気量:247cc
最高出力:17.7PS/7400rpm
車両重量:138kg(乾燥)
最高速度:130km/h
フレーム形式:鋼板プレスバックボーン

【取材協力】
ホンダコレクションホール(栃木県/モビリティリゾートもてぎ内)
※2023年12月以前に撮影

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