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「縦置きエンジン」ってナニ? どこが「タテ」なの?

バイクのニュース / 2024年9月13日 11時10分

バイクのエンジンには、排気量や気筒数、シリンダー配置など様々な形式がありますが、「横置きエンジン」と「縦置きエンジン」というジャンル分けがあります。……が、そもそも「横」とか「縦」とか、ナニの向きを表しているのでしょうか?

■「横or縦」はクランクシャフトの配置で決まる

 バイクのエンジンには様々な形式がありますが、大きなジャンル分けのひとつとして「横置きエンジン」と「縦置きエンジン」の2種類があります。しかし現在は、国内メーカーが製造・販売しているバイクはほとんどが「横置きエンジン」です。そして海外メーカーも横置きエンジンが主流ですが、少なからず縦置きエンジンのバイクも存在します。ドイツのBMW Motorradの「R」シリーズは、縦置きエンジンの代表格と言えるでしょう。

BMW Motorrad「R 1300 GS」の透視図。クランクシャフトが車体の前後方向と同じ向きになる「縦置きエンジン」を搭載するBMW Motorrad「R 1300 GS」の透視図。クランクシャフトが車体の前後方向と同じ向きになる「縦置きエンジン」を搭載する

 ……ところで、横置きと縦置きは何が違うのでしょうか? それはエンジンの「クランクシャフト」の向き(配置する方向)です。

 クランクシャフトは、ガソリンと空気の混合ガスの燃焼によるピストンの上下運動を回転運動に変える部品で、非常に強度が高く重量があります。そのクランクシャフトの回転軸が、車体の前後方向(進行方向)に対して90度に配置するのが「横置きエンジン」で、車体の前後方向(進行方向)と同じ向きに配置するが「縦置きエンジン」になります。

■縦置きエンジンのメリットは?

 現行バイクでは少数派の縦置きエンジンですが、歴史はけっこう古く、銃器で有名なベルギーのFN社は1910年代に縦置き4気筒エンジンのバイクを作っていました。また有名なところでは、BMWが1923年に初めて生産・販売したバイクが、縦置き水平対向2気筒の「R 32」です。

1923年にBMWが初めて生産・販売したバイク「R 32」。排気量198ccで出力は8.5馬力1923年にBMWが初めて生産・販売したバイク「R 32」。排気量198ccで出力は8.5馬力

 縦置きエンジンはバイクでは珍しく感じますが、クルマ(4輪車)ではかつて主流だったFR方式と基本的に同じレイアウトと言えます。

 縦置きエンジンは後輪の駆動にシャフトドライブを用いる場合が多いです。これはクランクシャフトやトランスミッションの各軸が車体の前後方向と同じ向きなので、設計上で都合が良いからですが、シャフトドライブはチェーンよりも駆動ロスが少なく、ほぼメンテナンスフリーです。BMW「R 32」が登場した当時はチェーンの強度や信頼性も低かったので、大きなメリットと言えます。

 また、重いクランクシャフトが回転すると「ジャイロ効果(回転する物体がその場に留まろうとする力)」が発生します。縦置きエンジンはクランクシャフトが車体の前後方向と同じ向きなので、ジャイロ効果によって直進安定性が高まることもメリットです。横置きエンジンの場合もクランクシャフトのジャイロ効果は発生しますが、安定性の効果は縦置きエンジンの方が大きいと言えます。

 ただし、重いクランクシャフトが回転すると、回転方向と逆側に「反力」が発生します。とくにスロットルを開けて加速したり、閉じて減速する際に大きな反力が生じます。そのため縦置きエンジンのバイクは右カーブと左カーブでコーナリング時のハンドリングの特性が変わります。これを縦置きエンジン車ならではの個性と捉えるか、端的にハンドリングにおけるデメリットと捉えるかは、ライダーの感性や好みによるところでしょう。

 ちなみに1980年代頃までのBMW「R」シリーズは、この反力(トルクリアクション)がけっこう大きかったのですが、近年はエンジン内部の構造の改良により、かなり反力が少なくなっています。

■国産の縦置きエンジンは、ホンダのみ

 縦置きエンジンは走行中の安定性に優れるため、高速ツアラー系に採用される傾向があります。反対に左右カーブで異なるハンドリングの特性や、縦置きエンジンと相性の良い後輪のシャフトドライブは、現代の本格レースのようなスポーツ走行には不向きなため、スーパースポーツ系には採用されていません。

ホンダ「Gold Wing Tour」の水平対向6気筒エンジンホンダ「Gold Wing Tour」の水平対向6気筒エンジン

 というワケで、国産の現行バイクの縦置きエンジン車はホンダ「Gold Wing Tour」のみになります。ちなみに、1975年に初登場した「GOLDWING GL1000」は、水平対向4気筒の縦置きエンジンでした。

 じつは、現存する国産バイクメーカーで縦置きエンジンを市販化したのは、おそらくホンダのみ。1960年代には縦置きの水平対向2気筒エンジンを搭載する高級スクーターの「JUNO」を発売しています。

 また1977年には縦置きV型2気筒エンジンの「GL500」を発売し(翌1978年には兄弟車の「GL400」を発売)、その後もバリエーションを拡大。1981年には「GL500」をベースに、世界初の量産ターボバイク「CX500 TURBO」を発売しました。

 他にもホンダは、1990年に排気量1085ccのV型4気筒エンジンを縦置きに搭載した大型ツアラー「ST1100パンヨーロピアン」を輸出モデルで発売しています(2002年に排気量アップした「ST1300パンヨーロピアン」にモデルチェンジ)。このエンジンをベースに、2014年に新型クルーザーとして「CTX1300」にモデルチェンジし、国内販売も開始しました。

「GL1000」や「GL500/400」は新機軸のスポーツモデルを目指して開発・販売しましたが、結果として高いツアラー性能を発揮しました。そして「ST1100パンヨーロピアン」や、後の「CTX1300」もツアラーとして優位な縦置きエンジンを採用したと思われます。

■欧州メーカーは、縦置きエンジンに拘る!?

 BMW Motorradは水平対向2気筒の縦置きエンジンで有名ですが、過去には水冷4気筒エンジンを縦置きに配置した「K100」(3気筒の「K75」もアリ)を生産していました。シリンダーを横向きに90度寝かせて車体の左側がシリンダーヘッド、右側がクランクケースという特異な配置でしたが、これは低重心化を狙った合理的な設計でした。後に排気量を拡大して「K1200」となり、スポーティな「RS」や「GT」、豪華装備の「LT」とバリエーションを広げて2007年まで生産されました。

BMW Motorrad「K100」の縦置きエンジンとシャフトドライブのユニットBMW Motorrad「K100」の縦置きエンジンとシャフトドライブのユニット

 英国のトライアンフは、市販量産バイクで最大排気量を誇る2458ccの直列3気筒エンジンを縦置きに搭載する「ロケット3」を販売。巨大な縦置きエンジンは強力なデザインアイコンと言えます。

 そしてイタリアのモトグッツィは、縦置きのV型2気筒のみをラインナップしています。クラシカルな「V7」シリーズは、1966年に登場した初代からリファインを重ねた空冷Vツインですが、もちろん現行の環境性能に合致しています。

 また最新機種の水冷1000ccエンジンはすべてを刷新していますが、縦置きのV型2気筒というレイアウトは不変です。

 これら縦置きエンジンのバイクは国内外でも少数派ですが、そのぶん強い拘りを持ったモデルと言えます。

 縦置きエンジンならではの乗り味はもとよりルックスも独特なので、他人とは違う個性的なバイクに乗りたいライダーにオススメかもしれません。

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