白煙モクモクのエンジン内部は、部品摩耗が凄かった!! 同い年のバイク=スーパーカブと生きるバイクライフVol.12
バイクのニュース / 2024年9月11日 7時10分
どんなバイク、どんなモデルでも、自分自身にとって思い入れがあるバイクには、ある種違った感情がありますよね!? 自分自身の生誕年は「記念すべき年」ですが、そんな生誕年に想いを馳せて、1962年型スーパーカブC100と暮らしているぼくなのです。マフラーからの白煙が酷いエンジンを降ろして、腰上部品は分解。内燃機加工を依頼しました。コンディション回復できればいいですね~。
■一見ではコンディション良く見えたスーパーカブC100
しっかり保管されていた様子は伺い知れる筆者が手に入れたスーパーカブC100。野ざらし、雨ざらし状態の放置車両と比べれば、やっぱりコンディションは良い印象です。ガソリンが腐っていても、ネチョネチョにはまだ届かず、ガソリンタンク内部のサビも、薄っすら始まっている程度で済みました。中性洗剤+お湯で一晩洗浄した後に、水道水ですすぎ洗いしただけで、サビも汚れも洗い流すことができそうなコンディションでした。
あまりに薄汚いコンディションのまま走るのが好みではないので、エンジンの分解メンテナンスに便乗して、クランクケースの左右カバーは下処理後に耐熱シルバーでお化粧直ししてみようと考えてます。車体は手が入る範囲で磨く程度にとどめようと考えています
しかし、エンジンに関しては、正直、苦労しそうです。クランクケース周りやエンジン周辺の見え難い部分のコンディションは今ひとつでした。農道や田んぼの畦道で走っていたスーパーカブだと思われます。
クランクケースの底から後方にかけてはドロの堆積で「地層」ができていました。C100E型エンジンは、1958年に登場した初期型以来、何度も仕様変更を繰り返しています。クランクケースのデザインだけでも、この年式あたりで5代目くらいでしょうか?
粘土質のドロは、洗車だけでは簡単に落すことができない強烈なものです。エンジンを降ろしてからひっくり返して、クランクケースの底から後方に堆積していたドロをスクレパーでそぎ落としました。その作業中には地層!? のような部分もありました。
プレスフレームの内側にもドロがびっしり付着していて、こちらも水道水+ホースで洗浄しても、簡単には落ちません。ここでもスクレパーを使って、ドロの塊を砕き落としながら、腰の強いナイロンブラシでゴシゴシ磨きを繰り返しました。結果的には、半日以上かけて気になる部分のドロ汚れを落しましたが、まだまだ納得できる状況に至ってはいません。
■驚きのピストンリング摩耗!! 白煙モクモクの原因が明らかに
エンジン内部も想像以上に汚れていました。過去にクラッチカバーを外そうとした形跡がありましたが、パンスクリューの頭がナメてしまったことで、おそらく分解することなく(分解できずに)、そのまま何年も走り続けていたのかも知れません。
今回のエンジン降ろしのタイミングでは、エンジン始動時に吹き出す白煙モクモク対策がメインになります。しかし、せっかく分解するのだから、クランクケースカバーやエンジン腰上パーツは耐熱缶スプレーでペイントして、分解できる部品は取り外してから美しく磨いてあげたいと考えています。
鋳鉄シリンダーを引っ張り上げると、抵抗なくスーッと抜き取ることができました。シリンダーベースガスケットの固着もありません。ピストンリングに擦られたシリンダー内壁は大変美しく、カジリキズなどなどは一切ありませんでしたが……
気になるエンジン腰上(シリンダー+ピストンやシリンダーヘッドの総称)は、ピストンリングが完全磨耗状況でした。抜き取ったシリンダーに、分解したピストンからピストンリングを取り外して「単品」で挿入することで、ピストンリングの合口隙間を測定することができます。
ピストン単品でシリンダーへ挿入してみます。本来なら、ダイヤルゲージとシリンダーボアゲージを利用して、ピストンクリアランスは厳密に測定しますが、シックネスゲージを隙間に差し込んで、現状クリアランスを簡易測定できます。楽々0.3mmゲージが挿入できました
そのような作業手順で合口隙間を測定すると、なななんと!! 3mm近くもの隙間がありました!! ぼくの経験上では、最大値です。2ストエンジン以上に元気良く白煙を吹き出すはずです……。本来の合口隙間は0.3~0.4mm前後で、0.7mmを超えると部品交換限度とサービスマニュアルに記載されている例が多いはずです。
こんな状況になるまで乗り続けられていたことを考えると、以前のオーナーさんは、2ストエンジン車と同じ感覚でスーパーカブに乗られていたのかも知れませんね。こんな部分からも、スーパーカブC100の耐久性には驚かされてしまいます。
■【改ページ】摩耗したエンジン部品は「内燃機部品加工で再生」
エンジン腰上の分解手順を大雑把に記しますと、シリンダーヘッド→シリンダー→ピストンの順で分解していきます。OHVエンジンだから分解作業は楽々です。
シリンダーヘッドを取り外すと、上死点にあるピストントップと燃焼室内に堆積したカーボンの様子を確認できます。いずれもコゲ付いたような印象ではなく、オイルにまみれながらカーボン堆積している様子が見て取れます。こんな燃焼状況だから、白煙モクモクだったのですね
シリンダーヘッドを取り外すと、ピストントップや燃焼室内に堆積した真っ黒なカーボンがよく見えます。コンプレッションがしっかりしているコンディションだとすれば、燃焼室内もピストントップも「焦げ付いたカーボン」と表現できます。しかし、このC100エンジンに堆積していたカーボンには「エンジンオイルの輝き」が目立ちました。
STDボアの新品ピストンは呼び寸でΦ40mm、厳密に測定すると呼び寸よりも100分の数ミリほど小さくなっていますが、当然ながら摩耗によって、原寸はもっともっと小さくなっていました。今回の内燃機加工では0.75mm大きなオーバーサイズピストンを組み込みます
シリンダーヘッドを降ろした段階では「オイルあがりが酷いなぁ……」と思いましたが、その直後にシリンダーを抜き取り、前記したようにピストンリングの合口隙間を目視確認したことで「白煙まき散らすわけだよね~」と理解しました(オイルあがりとは、ピストンリングの摩耗や、特に、オイルリングの張力不足が原因で、白煙を吹き出すケース)。
取り外したピストンリングが果たしてどの程度摩耗しているのか? 単品ピストンリングを縮めてシリンダーへ挿入すれば、合口の隙間で摩耗状況を理解することができます。その結果はご覧の通り!! ぼくの経験では、過去最高の摩耗量でした……超驚き!!
燃焼室内とピストントップがこうもカーボンだらけということは、逆に、燃焼ガスがクランクケース内に入り込んでいて、相当な汚れ状況になっているのだろうと想像できます。
シリンダーヘッドと旧排気バルブ、シリンダーとオーバーサイズピストンをiB井上ボーリングさんへ持ち込み、内燃機加工をお願いしました。STDサイズのピストンだったので、通常なら0.25オーバーサイズで済むような気がします。
バイク仲間の知人がストックしていた、ホンダ純正C100用075OSピストンとピストンリングを格安購入できた。日本のバイク産業がイケイケ時代に作られた当時物部品だと思われます。ピストンクリアランスはやや大きめの15~20/1000mmで指定しました
しかし今回は、あまりにもピストンリングが摩耗していたので、0.50オーバーサイズ(通称2オーバーサイズ)を探しました。
小排気量エンジンの場合、ちょっとのオーバーサイズ化でパンチ感に変化が出るのと、ピストンクリアランス適正化でマフラーから吹き出す白煙は間違いなく減ります。そこで、ホンダ純正0.75オーバーサイズピストンを利用してプラトーホーニングで仕上げて頂きました
しかし、バイク仲間の知人がスペアで0.75オーバーサイズ(3オーバーサイズ)のピストン+ピストンリングをストックしていて、しかもバイクは売ってしまったから手元に無いとのお話しを聞き付け、0.75オーバーサイズのセットで格安購入し、ピストンクリアランスを指定して、プラトーホーニングにて加工仕上げして頂きました。
075オーバーサイズのピストンを使い、クリアランスを15~20/1000mmに指定してプラトーホーリングを実施。仕上がったシリンダーに新品リングを組み込んだら、合口隙間はピッタリ0.20mmだった。これで白煙とはオサラバ!できるのかな~!?
プラトーホーニングとは、指定したピストンクリアランスに仕上げながらも、要所要所に深い溝をつけて「潤滑用のオイル溜まりを作る」と言った、メーカー純正シリンダーでは当たり前のボーリング&ホーニング仕上げ技術になります。iB井上ボーリングは、60年代からメーカー純正シリンダーの量産を請け負う工場でもあったので、メーカー純正クォリティの内燃機加工が可能なのです。
取材協力/井上ボーリング
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