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言われてみれば確かにスゴイ バイクの電子デバイスを劇的に進化させた3種の機構

バイクのニュース / 2024年9月20日 11時10分

近年のバイクには、ライダーをサポートする数多くの電子デバイスが装備されています。……が、多様な電子デバイスが登場したのは、おおむね21世紀になってからのコト。何か大きなブレークスルーがあったのでしょうか?

■電子デバイスが進化したのは、この20年

 近年、スーパースポーツ系はより速く走るため、アドベンチャー系は走破性を高めるため、そしてツアラー系は快適性や利便性を増すために、様々な電子デバイスを装備しています。もちろんネイキッドモデルや見た目がクラシカルなネオレトロ系でも、相応に電子デバイスを備えているモデルが増えています。

現代のバイクは、その車両のカテゴリーに応じて、速さや走破性、快適性や利便性を高めるために多様な電子デバイスを装備している現代のバイクは、その車両のカテゴリーに応じて、速さや走破性、快適性や利便性を高めるために多様な電子デバイスを装備している

 これらの電子デバイスがいつ頃登場したのかというと、意外と近年(2000年代以降)のモノが多いように感じます。それ以前からある装備といえば、ブレーキ時のタイヤのロックを防ぐABS(アンチロック・ブレーキ・システム)か、レース用の装備としてのクイックシフター(アップ側のみ)くらいです。

 ちなみにABSは、最初は大型の航空機用に開発され、それが自動車に降りてきた技術です。バイクではBMWが1980年代後半に初採用しましたが、他メーカーに波及するには結構時間がかかりました。

 また昔のクイックシフター(アップ側のみ)は、単純に電気的に点火をカットするシンプルな仕組みで、電子デバイスとは少し異なる存在でした。

■「ECU」は、バイク用のコンピューター

 2000年以前も点火系などに電子部品が使われ始めていましたが、バイクに本格的な電子化が始まったのは、燃料供給がキャブレターから電子制御式燃料噴射装置(FI)に移行した頃ではないでしょうか。FI化はBMWやドゥカティが早く、1980年代に始まっていますが、日本メーカーではごく一部の車両を除いて、1990年代後半~2000年代中盤に移行しました。

FIのガソリン吐出量や点火時期などを制御するECU(エンジンコントロールユニット)の一例。メーカーによってECMなどと呼び名が異なる場合もあるFIのガソリン吐出量や点火時期などを制御するECU(エンジンコントロールユニット)の一例。メーカーによってECMなどと呼び名が異なる場合もある

 このFIをコントロールするために装備されたECU(エンジンコントロールユニット)の存在が、バイクの電子化を進める大きなキッカケと言えるでしょう。

 ECUは、ザックリ言えばエンジンを制御するためのコンピューターです。スロットルの開度やその時のエンジン回転数、他にも吸気温度など様々な情報を元に、適切なガソリンの噴射量を決めます。この燃調マップ(プログラム)を複数持たせることで、出力やエンジン特性を切り替える「パワーモード」や「ライディングモード」といった電子デバイスが登場しました。

 さらにエンジン回転数や選択したギア、前後のタイヤの回転差などを検知して、燃料カットや点火カットによってスロットルを開けた際のタイヤの空転を抑える「トラクションコントロール」も可能になりました。従来からのクイックシフター(アップ側)もECUで制御することで、動作が緻密になりました。

■「ライド・バイ・ワイヤ」でエンジン制御がきめ細やかに

 さらに2000年代には、FIをさらに進化させた「ライド・バイ・ワイヤ(スロットル・バイ・ワイヤ)」が登場しました。

スロットル・バイ・ワイヤ式の電子制御式燃料噴射(FI)の概念図スロットル・バイ・ワイヤ式の電子制御式燃料噴射(FI)の概念図

 ライダーがスロットルグリップを開け閉めする操作を電気信号に変えてECUに伝え、スロットルボディのバタフライバルブの開閉はECUからの電気信号で作動します。ここだけ見ると機械式ケーブルを電気モーターに置き換えただけにも感じますが、じつは大違い!

 その時々のスピードや使用ギア、吸気量などエンジンの状態に対してスロットルの開度が最適になるように、ECUが演算してバタフライバルブをジワ~ッと開けたりスパッと開けたりします。これによりライディングモードなどのエンジン特性の作り込みや、トラクションコントロールがより緻密になりました。

 そして従来のクイックシフターはアップ側のみでしたが、シフトダウン時にトランスミッションの回転差を埋めるためのブリッピング(空ぶかし)を、ライダーの操作ではなくECUが判断して自動で行なう「オートブリッパー」によって、シフトダウン側も可能になりました(双方向クイックシフター)。

■車体姿勢を把握して様々なデバイスに活用!

 そして2010年代に登場したのがIMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)です。……難しそうな名前の装置ですが、端的に言えば、バイクの姿勢や状態を知るためのセンサーです。

 たとえばライダー自身も「フロントブレーキをかけたら“前のめり”になった」とか「右カーブを曲がるために重心移動して右側に傾いた」といった具合に、ライディング中には「車体の姿勢」を感じています。それをIMUでその瞬間のバイクの姿勢と動きを、いっそう緻密に検知しています。

 IMUでは車体の姿勢はもちろんバンク角や横滑りなど動的な変化も検出します。その情報をECUに伝えることで、トラクションコントロール等の電子デバイスを、いっそう緻密に制御することが可能になりました。

■電子デバイスの「合わせ技」で、速く安全快適に!

6軸IMUはバイクの車体のピッチ(Pitch:左右軸に対する回転)、ロール(Roll:前後軸に対する回転)、ヨー(Yaw:上下軸に対する回転)の角速度と、前後・左右・上下方向の加速度を計測している6軸IMUはバイクの車体のピッチ(Pitch:左右軸に対する回転)、ロール(Roll:前後軸に対する回転)、ヨー(Yaw:上下軸に対する回転)の角速度と、前後・左右・上下方向の加速度を計測している

 この「電子制御式燃料噴射」、「ライド・バイ・ワイヤ」、「IMU」の3種の機構によって、バイクの電子デバイスは劇的に進化しました。既存のABSや前後連動ブレーキは、IMUとの連携で車体がバンクしている最中でも威力を発揮する「コーナリングABS(レースABS)」に発展しました。

 また電子制御サスペンションも、IMUによる姿勢の把握や「ライド・バイ・ワイヤ」によるライダーの操作(加速中や減速中など)をECUと連携することで、路面追従性や乗り心地などスポーツ性や快適性にも寄与する性能を得ることができました。

 他にも、坂道発進を容易にする「ヒルホールドコントロール」もIMUとABS、そしてECUの「合わせ技」と言えるでしょう。

 さらに最新電子デバイスのミリ波レーダーによる「アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)」なども、「ライド・バイ・ワイヤ」やIMU、それらと連動するABSがあるからこそ可能になったシステムと言えます。

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