ホンダが最も輝いていた時代に誕生! ホンダ「シティ・ターボII」とは
バイクのニュース / 2024年9月15日 17時10分
モータースポーツ界の生き字引、現役レーサーの木下隆之氏の新連載コラム「木下隆之のヒストリカルパレード(通称:ヒスパレ)」連載第28回目は、以前にもご紹介したホンダ「シティ・ターボII」とF1の関係性を踏まえ解説します。
■ホンダが輝いていた時代に生まれた「シティ・ターボII」とは
ホンダがもっとも輝いていたのは1980年代、もっと具体的に指し示すならば、1983年はないだろうかと思わざるを得ないのは、今回ここで紹介する「シティ・ターボII」がデビューした年だからです。
ホンダF1参戦の第二期は、最もホンダが輝きを放った年代となった
そもそもホンダF1参戦の第二期は、1983年がスタートなのだから、もっとも輝いていた年であることに疑いはない。正確にいうならば、1983年からホンダは、最高に輝き始めたというべきであろう。15年間の沈黙を破り、ウイリアムズとコンビを組むことでF1界に復帰し、その後のホンダF1の記録的な快進撃に結びついたのだから、1983年はホンダにとって、もっとも輝いていた年と言って差し支えないはずですね。
そんな1983年にホンダに就職した人達は、さぞかし幸福なホンダマン人生を過ごしたに違いありませんね。1983年に新卒で入社したのは、およそ1960年生まれですね。大学に浪人したとか留年したとかの誤差はあるでしょうから、およそ1960年、つまり昭和35年生まれの御仁が幸運のホンダマン人生の扉を開けることができたわけです。
はなはだどうでもいい話ですが、僕はちょうど1960年(昭和35年)生まれであり、卒業が1年遅れた関係で1983年にホンダの就職試験を受けている。もののみごとに一時試験で不合格通知をもらっているから、1983年入社のホンダマンにはただならぬライバル心がある。
1983年にデビューした「シティ・ターボII」(写真提供エムクラフト)
という個人的な遺恨はともあく、ホンダは1983年にF1復帰を果たしたその一方で、いかにもホンダらしい刺激的なモデルが1983年にデビューさせた、それが「シティ・ターボII」なのです。
1981年にユニークなトールボイスタイルのシティが誕生していますが、そのデビューから2年後には、都会的ユースがメインだったコンパクトハッチのシティに、激烈なターボエンジンを押し込んだのです。その名は「シティ・ターボII」。はっきり言って、とんでもない非常識なクルマでした。
もちろん非常識とはホンダにとっては褒め言葉です。平凡なとか、一般的なとか、没個性とかを嫌い当時のホンダにとってシティ・ターボIIは、とんでもない非常識なクルマです。それに異論を持つ人がいたら、ぜひお目に掛かりたいものです。
搭載するエンジンは、直列4気筒1.2リッターに、ハイブーストのインタークーラーターボが合体されていた(写真提供エムクラフト)
搭載するエンジンは、直列4気筒1.2リッターですが、ハイブーストのインタークーラーターボが合体されていまいた。小排気量エンジンをパワーアップするのにターボチャージャーの助けを借りるのは常套手段ですが、エンジンペットに刻まれている「COMBAX(COMPACT BLAZING-COMBUSTION AXIOM)」が指し示すように「高密度速炎燃焼原理」を盛り込んでいたのです。
これは燃焼効率をギリギリまで高めた最先端の技術の証です。おそらくF1ホンダにもこの技術が盛り込まれていたはずです。ただのポン付ターボではないのです。
燃料噴射装置は、PGM-F1です。キャブレターではなく電子制御で燃料供給されます。それでいて、過給圧は0.85まで高められていました。最高出力は110馬力です。ボディ重量はわずか約650kgでしたから、刺激的な加速感でしたね。
ホンダ社員の夢破れた僕は、クルマ雑誌の編集部に就職したこともあり、1983年製のシティターボIIを試乗する機会に恵まれています。そこでの印象は超激辛でしたね。駆動方式はFFですから、アクセルペダルを床まで踏み込むと、前輪が激しく空転を繰り返すのです。やはり非常識なクルマなのです。
ボディも強化されています。ワイドフェンダーがシティターボIIの証です。ボンネットのバルジは力こぶのようです。荒々しい性格は、そのスタイルからも想像できますよね。
「シティ・ターボII」の愛称はブルドック(写真提供エムクラフト)
愛称は「ブルドック」です。スタイルはどこかズングリムックリでありながら、獰猛なエンジンを搭載していたのですからブルドックのイメージが漂っています。実際のブルドックは穏やかで従順な性格だそうですが、たしかにブルドックの愛称は似合っています。
しかも驚きは、「スクランブルブースト」なる物騒な装置が組み込まれていたことでした。エンジン回転が3000rpm以下の状態でアクセルを全開にすれば、ブースト圧がさらに10%高まるのです。ドライバーが過激な加速を求めたのだとエンジンが判断し、スクランブルモードに移行するというわけですね。
最大10秒間に限ってという条件なのは、それ以上はエンジンの耐久性が保証できないのか、速すぎるからなのかはわかりませんが、ホンダの良心でしょう。いやはや、それほど過激なのです。
これはまさに、ウイリアムズF1からの発想ではないかと想像してしまいます。
ホンダF1参戦の第二期は、最もホンダが輝きを放った年代となった
といほどにシティ・ターボIIは過激でした。これはもう、ホンダのエンジニアが遊びでこしらえたとしか思えません。そうです、ユーザーの顔色を伺いながら売れそうなクルマを出すのではなく、自分達が作りたかったクルマをもしよければ買ってくれてもいいよ、といった魂がこのクルマには込められているような気がするのです。
という意味でシティ・ターボIIがデビューした1983年がホンダがもっとも輝いていた年だと思えわけです。
◾️ホンダ「シティ・ターボII」
<エンジン>
形式:ER(ターボ付)
トランスミッション:5速マニュアル
種類:CVCC・水令直列4気筒横置OHC
使用燃料:無鉛ガソリン
総排気量(cc):1231
圧縮比:7.6
最高出力(ps/rpm):110/5500
最大トルク(kg-m//rpm):16.3/3000
燃料供給装置:電子制御燃料噴射式(ホンダPGM-FI)
燃料タンク容量(リットル):41
<寸法・定員>
全長(mm):3420
全幅(mm):1625
全高(mm):1470
ホイールベース(mm):2220
最低地上高(m):0.160
乗車定員(名):5
※ ※ ※
1983年にホンダから販売されたスポーツバイク「CBX750F」は、高性能とすぐれた整備性、経済性を実現した新エンジン搭載したモデルです。
ホンダの大型スポーツバイク「CBX750F」
車体設計は、コンピュータ解析による軽量、高剛性のダブルクレードル型フレームや走行条件に合わせて調整が可能なサスペンションを前後に装備し、リヤには、乗り心地、路面追従性にすぐれたプロリンク式を採用していました。また、独特な造形のフロントカウルは、デュアルヘッドライトを採用し、独特の存在感を醸し出していた。
ホンダのスポーツバイク「CBX750F」の発売当時の価格は、69万8000円でした。
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