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0.03秒で危険を検知!! 0.025秒で完全膨張!! ヒョウドウのエアバッグウエア『エアブースト』とは

バイクのニュース / 2024年9月22日 12時10分

日本のライディングウエアブランド『HYOD(ヒョウドウプロダクツ)』が独自に開発した身に着けるタイプのエアバッグは、一体どのような特徴があるのでしょうか。詳しく話を伺いました。

■転倒経験が豊富だから(?)、興味津々

 ここ十数年の自分(筆者:中村友彦)のバイクライフを振り返ると、仕事とストリートでは無事故無転倒なのですが、愛車で走ったサーキットと林道で、私は数回の転倒を経験しています(日常生活に支障が出る骨折はしていないが、林道でコケた際はアバラにヒビが入った模様)。だからヒョウドウプロダクツが2024年6月に発売を開始したエアバッグウエア『エアブースト』には以前から興味津々でした。

全国に5店舗を展開するヒョウドウストア(浜松・東京・大阪・福岡・仙台)では「エアブースト」コーナーが設置され、試着はもちろん、希望があれば膨らんだ状態も体感できる全国に5店舗を展開するヒョウドウストア(浜松・東京・大阪・福岡・仙台)では「エアブースト」コーナーが設置され、試着はもちろん、希望があれば膨らんだ状態も体感できる

 もっとも、カタログやウェブサイトでは全容が把握できなかったので、静岡県浜松市のヒョウドウプロダクツ本社を訪れ、製品企画課プロダクトマネージャーの見城行宣さんに、エアブーストの話をじっくり聞いてみることにしました。

■頭脳はフランスのIn&motion製

 カタログやウェブサイトに記されている通り、エアブーストの要となる検知デバイスやエアバッグは、2輪だけではなく、スキーや乗馬の世界でも著名なフランスの『In&motion』製です(ガス発火装置のインフレーターは、同社が指定するスウェーデンのAutoliv)。このメーカーを選択した背景には、どんな理由があったのでしょうか。

検知デバイスのIn&boxは、バックプロテクターの一部としてピッタリ収まっている検知デバイスのIn&boxは、バックプロテクターの一部としてピッタリ収まっている

「エアバッグウエアとして、理想的な性能を備えているからです。まずは大前提の話をすると、背面に備わる検知デバイスのIn&boxには、3つの加速度センサーと3つのジャイロスコープ、GPSが内蔵されていて、走行中は1秒あたり1000回の分析を行なっています。そういった分析の中から、転倒リスクの検知に要する時間は0.03秒で、検知後にガス発生装置のインフレーターに点火し、エアバッグが完全膨張するまでの時間は0.055秒です」(見城さん。以下同様)

「いきなり細かい数字を言ってしまいましたが、転倒時にライダーの身体が路面と接するまでの時間は、最短で0.06秒と言われているんですよ。その時間をきっちり下回っていることが、In&motionの最大の美点でしょう」

■世界中のユーザーの走行データを収集

 続いてもカタログとウェブサイトに記されている話で、In&motionでは2億km・7万人の走行データをべースにして、アルゴリズムを構築しているそうです。それだけの走行データを、同社はどうやって得たのでしょう。

「MotoGPやSBKに参戦しているプロレーサーも含めて、In&motionでは世界中のユーザーの走行データを、Wi-Fiを通して匿名で収集しているんです。走行データの収集は現在も継続中で、もちろん当社のエアブーストのユーザーも対象になります。逆にエアブーストを含めたIn&motion製品のユーザーには、最新の走行データをベースとするアルゴリズムのアップデートが、Wi-Fiを通して定期的に行なわれます。いずれにしても、モーターサイクル用のエアバッグウエアで、こういったシステムを実現しているのはIn&motionだけだと思いますよ」

バックプロテクターは2層構造。左がハードシェル素材のアウターで、右がソフトタイプのインナー。もちろん、ヨーロッパの安全規格であるCE認証を取得しているバックプロテクターは2層構造。左がハードシェル素材のアウターで、右がソフトタイプのインナー。もちろん、ヨーロッパの安全規格であるCE認証を取得している

 背面に備わる検知デバイスのIn&boxには、電源のオン/オフスイッチと4種のLEDランプが備わっています。ただし、エアブーストはIn&motionが用意しているアプリ、My In&boxのインストールが必須で、検知モードの切り替え(トラック、ストリート、アドベンチャーの3種が存在)はスマホが無くては行なえません。こういった構造に対して、違和感は無かったのでしょうか。

「皆無だったわけではないですが、専用アプリをダウンロードしたスマホを使用することで、ウエアが軽量化できますからね。逆にウエア側にいろいろなスイッチや画面を設置していたら、検知デバイスやインフレーターを含んで1.5kgという重量は実現できなかったでしょう」

「検知デバイスのIn&boxは、30時間連続して使用することが可能で、ゼロからフル充電に要する時間は約3時間です。また、本体にはオートスリープ機能が備わっているので(2分以上放置すると自動で電源が切れ、わずかな動きを検知すると自動で再起動)、電源ボタンに触れるのは、基本的に出発前・走行前の1回だけでOKです」

■インフレーターは自分で交換できる

 ここまでに述べた要素に加えて、ガス発火装置のインフレーターがオーナー自身の手で簡単に交換できることも、In&boxならではの特徴です。既存のエアバッグウエアの多くが、インフレーターの交換はメーカー・輸入元で……というスタンスだったことを考えると、この構造はエアブーストの大きな美点と言って良いでしょう。

「例えばサーキット走行会に出かけて、1本目で転倒を喫してエアバッグが膨らんだら、次の走行前にインフレーターを新品に交換すれば、以後も安心して走行が続けられるわけです。もちろんツーリングでも、予備を荷物に入れておけば安心材料になるでしょう。なおIn&boxのエアバッグは耐久性に優れる無縫製ですが、5回膨らんだら当社で新品に交換という規定を設定しています」

■バストに13cmの余裕があれば、ジャケットは何でもOK

 エアブーストの購入を考えているライダーの中には、現在所有している製品がそのまま使えるのか、1サイズ大きい製品を買うべきなのかという感じで、ジャケットやレーシングスーツとの相性を気にする人が数多く存在するようです。そういう質問を受けたとき、ヒョウドウプロダクツではどんな回答をしているのでしょうか。

エアバッグの膨張前後。右の膨張後を見ると、ジャケットは1サイズ大きめを選択したほうがいいような気がするが、バストに13cmの余裕があれば、どんなジャケットにも対応できるそうだエアバッグの膨張前後。右の膨張後を見ると、ジャケットは1サイズ大きめを選択したほうがいいような気がするが、バストに13cmの余裕があれば、どんなジャケットにも対応できるそうだ

「まずジャケットは、バストに13cmの余裕があれば、どんなメーカーのどんな製品もOKで、1サイズ大きい製品の購入は必要ありません。ただしレーシングスーツに関しては、当社のダイナミックシリーズ、エヴォリューションシリーズ、レーシングシリーズ、そして今秋から展開を開始するアジリティシリーズのみを認証品としています。他メーカーさんのレーシングスーツでエアブーストがきちんと使用できるかどうかは、当社の基準に沿ったテストができないので、何とも言えないんですよ」

「現在所有しているジャケットとの相性も含めて、エアブーストの感触を把握するためには、実際に着ていただくのが一番です。インフレーターを使った膨張は行なっていませんが、ポンプでエアバッグを膨らませることは可能ですから、この製品に興味がある方は、ぜひとも全国のヒョウドウストアを気軽に訪れて欲しいですね」

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