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【MotoE第8戦サンマリノ大会】「2時間しか寝ていない!」大きなプレッシャーを跳ね除けE.ガルソ選手が歓喜のチャンピオン獲得

バイクのニュース / 2024年9月17日 17時10分

電動バイクレース『FIM Enel MotoE World Championship』2024年シーズン最終戦となる第8戦サンマリノ大会が、9月6日から7日にかけて、イタリアのミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリで行なわれました。

■迎えた最終戦、チャンピオンの心中とは

 電動バイクによって争われる『FIM Enel MotoE World Championship』(以下、MotoE)は、2024年シーズン最終戦である第8戦を、MotoGP第13戦サンマリノGPに併催のサンマリノ大会で迎えました。この大会をチャンピオンシップのランキングトップで迎えたのは、エクトル・ガルソ選手です。ランキング2番手のマッテア・カサデイ選手に対し、38ポイントの差を築いていました。

【MotoE第8戦サンマリノ大会】エクトル・ガルソ選手、チャンピオン獲得のバーンナウト!【MotoE第8戦サンマリノ大会】エクトル・ガルソ選手、チャンピオン獲得のバーンナウト!

 ガルソ選手がタイトル争いをするカサデイ選手は、2023年MotoEチャンピオンの実力者です。MotoEは1戦2レース開催であり、優勝したライダーは25ポイントを獲得できるため、最終戦で最大50ポイント(25ポイント×2レース)の逆転が可能です。といっても、もちろんそれは計算上の話で、38ポイントという差は、圧倒的にガルソ選手が有利な状況であることを意味していました。

 しかし、ガルソ選手は初日に行なわれた予選ではQ1から挑むことになり、Q2進出は果たしたものの、8番手となりました。土曜日に行なわれる決勝の2レースは、3列目8番グリッドからのスタートとなったのです。対して、カサデイ選手はポールポジションを獲得しています。

 MotoEは、バッテリー容量の関係で、レースの周回数が非常に少ないのが特徴です。周回数は各サーキットによって異なりますが、レースのトータルタイムは15分以下で設定されます。これは、スタートからフィニッシュまでライダーが全力で攻めることができる、つまり、電費を抑えるためにペースをコントロールすることなく最後まで走り切れる周回数となっています。サンマリノ大会は8周が設定されていました。

8番手からスタートとなったエクトル・ガルソ選手。レース前、グリッド上でじっと前を見据えて微動だにせず、集中していた8番手からスタートとなったエクトル・ガルソ選手。レース前、グリッド上でじっと前を見据えて微動だにせず、集中していた

 また、参戦するライダーはドゥカティの電動レーサー「V21L」を走らせ、タイヤはミシュランを使用しています。短い周回数とイコールコンディションのため、オーバーテイクが難しく、予選順位が重要になるのです。ガルソ選手にとって、やや厳しい予選結果となりました。

「予選とプラクティスがあまり良くなくて、土曜日はすごくナーバスになっていた」と、レース後の会見で、ガルソ選手は語っていたのです。

 迎えた日曜日、ガルソ選手は朝から緊張していたそうです。チャンピオンがかかるレースのプレッシャーは、どれほど大きなものなのでしょう。

「2時間くらいしか寝ていなかったと思う。でも、僕は(この日のレースを)チャンピオンシップのひとつのレースのようなものだ、と自分に言い聞かせようとしたんだ」

レース1では、3列目からスタートしてじりじりと順位を上げていったレース1では、3列目からスタートしてじりじりと順位を上げていった

 レース1は、最後にドラマが待っていました。ガルソ選手が4位でゴールすれば、カサデイ選手の順位に関わらず、チャンピオンが決定するという状況です。ガルソ選手は6周目までに5番手に浮上していましたが、その周にトップを走っていたケビン・ザンノーニ選手が転倒を喫しました。これによってガルソ選手は4番手に浮上し、そしてそのまま4位でゴールしました。2024年シーズンのMotoEチャンピオンは、ガルソ選手が獲得したのです。

 レース1ではカサデイ選手が優勝を飾り、2位はアレッサンドロ・ザッコーネ選手、3位はエリック・グラナド選手が獲得しました。

 夕方に行なわれたレース2では、MotoEルーキーのオスカル・グティエレス選手が優勝し、2位がカサデイ選手、3位はグラナド選手で、ガルソ選手は7位でした。

 レース2のあとに行なわれたチャンピオン会見で、ガルソ選手はこうレースを振り返っています。

「(レース1の)最終ラップは、本当に表彰台を獲得したかったよ。でもまあ、それはそれ。僕はとても落ち着いていた。“4位でいい。チャンピオンになれる。次のレースで(表彰台に)挑戦できる”って自分に言い聞かせたんだ」

 ガルソ選手は、2024年シーズンを振り返って、フランス大会が転機になったと語っています。フランス大会は、ポールポジションからスタートしながら、クラッシュによって2レースともにリタイアを喫した大会でした。

「ル・マン(フランス大会)のあとはすごくふさぎこんだよ。僕のパーソナリティや、やらなければいけないことについて、とても良い転機になった。そして、ムジェロ(イタリア大会)のレース2で、僕は自分の考え方を完全に変えたんだ。自分を疑わなかった。できると考えたんだ。ムジェロはいつも僕が苦戦するコースだったんだけど、ムジェロのレース2での3位は、再びチャンピオン争いに加わるのに良い道筋になった」

スペイン国旗を掲げてチームの元に戻ってきたエクトル・ガルソ選手スペイン国旗を掲げてチームの元に戻ってきたエクトル・ガルソ選手

 MotoE初年度の2019年に参戦し、2022年から再びEパドックに戻ってきたガルソ選手は、2019年から速く、注目のライダーでした。2023年からはさらに速さを増し、昨年はMotoEでの初優勝を飾って、ランキング4位で終えていました。そして今季は、4勝を含め、非常にコンスタントに表彰台を獲得しています。なぜ、今季はここまでの安定性を発揮することができたのでしょうか? ガルソ選手に尋ねました。

「目標は、良い仕事をすることだった。MotoEでは予選が重要で、いつも1列目にいる必要があると思う。覚えていないけど、僕はシーズンを通して、1列目か2列目にいたと思うんだ(※実際は2戦を除いて1列目または2列目を獲得)。前で戦う方が良いからね。それがカギだったと思う」

「良い金曜日、良い予選をすること。これで翌日のレースの半分は決まる。なにしろ、バイクが全く同じだから、オーバーテイクがすごく難しいんだ。あまりリスクは冒せない。というわけで、最初から前でレースをするのがすごく重要になるんだ」

 2019年から始まったMotoEの6シーズン目は、エクトル・ガルソ選手のチャンピオン獲得によって幕を閉じました。

■FIM Enel MotoE World Championshipとは

 2019年にスタートした電動バイクによるチャンピオンシップ。2019年から2022年まではWorld Cup(ワールドカップ)として開催されていたが、2023年よりWorld Championship(世界選手権)となった。MotoGPのヨーロッパ開催グランプリのうち数戦に併催され、各土曜日に2レース開催で全8戦16レースが行なわれる。バイクはドゥカティ「V21L」のワンメイクで、タイヤはミシュラン。9チーム18名のライダーが参戦している。

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