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あのストリート系カスタムは米国レースから!? ホンダ「RS750D」は200km/h超のフラットトラッカー

バイクのニュース / 2024年9月30日 19時40分

アメリカ伝統のフラットトラックレースで米国車の牙城に挑んだホンダ「RS750D」は、空冷45度Vツインエンジンでトラクション性能と溢れるトルクで優れたパフォーマンスを発揮し、1984年に念願の初タイトルを獲得。その後4年連続で勝利に輝きました。

■ホンダが米国車を超えた時代

 ホンダ「RS750D」は、1984年からアメリカ国内のレースで活躍したレース専用マシンです。ゼッケンが付いているのでレースマシンだと分かりますが、「そういえば、こういうカスタムバイクあったな」と思う人も少なくないでしょう。

アメリカのフラットトラックレースで4年連続チャンピオンの栄光を獲得したホンダ「RS750D」(1984年)アメリカのフラットトラックレースで4年連続チャンピオンの栄光を獲得したホンダ「RS750D」(1984年)

 低い車体姿勢で、ロードレーサーのようなカウリングはありません。一方、オフロード用にしてはサスペンションが短いので、どんなレースのためのバイクなのか不思議に思うかもしれません。

「RS750D」が活躍した「フラットトラック」という競技は、アメリカで最も歴史ある大人気のレースです。日本ではあまり馴染みがないので簡単に説明すると、競馬場のような左回りのオーバルコースをグルグル何周も走ります。バイク版「インディ500」的な、とも言えますが「RS750D」が走るコースは1周約1.6kmで路面はアスファルトではなく土です。

 そこを200km/hオーバーのスピードで走るので、路面コンディションがシビアです。凸凹が無いようにカチカチに固められて、モトクロスと違って雨が降って路面が緩んだらレース中止です。

 単純なコースですが、ロードレースのような完全グリップ走行では速く走れませんし、派手なスライドもタイムをロスします。「パワーがあってスライドコントロールしやすい」そんなバイクの性能が求められます。

 車両規則で空気抵抗軽減効果があるカウルは禁止されており、当時も今も、フラットトラックのバイクはほぼ同じスタイルの車両で行なわれています。クラシックらしさも感じさせるこの形が、ファンの人にはたまらない魅力となっています。

コーナーでは前に、ストレートではカウリングがないので後ろに座って目一杯伏せることができる前後に長いシート。シートカウルのデザインも秀逸コーナーでは前に、ストレートではカウリングがないので後ろに座って目一杯伏せることができる前後に長いシート。シートカウルのデザインも秀逸

 さて、1970年代は日本メーカーが北米の二輪市場に進出する際に、宣伝活動としてレースへの参加を積極的に行なっていました。

 フラットトラックは伝統的に米国車が強かったのですが、日本メーカーがチャンピオンを獲得し、アメリカのホンダも1979年に参戦することになります。

 しかし世界GPを席巻したホンダでも、フラットトラック用にそのまま使えるマシンは無く、イチから制作することになります。

 最初に制作されたのは「GL500」(1977年)用の縦置きVツインエンジンを90度横に回して搭載した、常識破りのマシンでした。

 改造に次ぐ改造を重ね、ホンダ本社のサポートを受けつつ「NS750」と名付けられ、その後も試行錯誤の開発とレースが続きます。

 参戦3年目の1982年には初優勝したものの、「NS750」は性能の限界に達しており、新型マシンの開発が進んでいました。

「FTR」ファンにはたまらないトリコロールカラーの燃料タンク。キャブレターは後ろ側のシリンダーを避けつつ排気まで直線的なるように配置「FTR」ファンにはたまらないトリコロールカラーの燃料タンク。キャブレターは後ろ側のシリンダーを避けつつ排気まで直線的なるように配置

 当時の車両規則でエンジンは排気量750ccまでの2気筒となっており、待望の新型車は発売されたばかりのクルーザー「NV750カスタム」(1982年)や「XLV750R」(1983年)のVツインエンジンがベースでした。

 しかし面影があるのは挟み角45度Vツインの全体的な雰囲気だけです。水冷から空冷に、SOHC3バルブは4バルブに、後ろシリンダーは前後逆転し前方排気へ、さらに吸排気をストレートにするため車体に対して捻られた構造で、キャブレターも排気管も車体外側へ大きくはみ出しています。

 それらの効果により、「NS750」で課題だった後輪の路面への食いつきが向上し、滑りのコントロールを容易にするトルクのあるエンジンに仕上がりました。ここで開発されたグリップさせやすい、あるいはライダーがコントロールしやすいエンジン特性の知見は、現在のバイク設計にも寄与していると思われます。

 車体はホンダ独自のプロリンクを使用していますが、他のカテゴリーのバイクに比べるとかなり剛性が低く、しなやかなフレームでした。

 ホンダ本社によって制作されたフラットトラック専用マシン「RS750D」は、1983年のシーズンに投入されました。米国車と激しい争いを繰り広げながら、1984年から4年連続でのチャンピオン獲得をホンダにもたらしました。

「RS750D」によるホンダのファクトリーレース活動は1988年で終了しましたが、ファクトリー撤退後も一部の「RS750D」レーサーは参戦を続け、1990年代後半まで活躍が続きました。

空冷45度Vツインエンジン。排気効率を優先して排気管の取り回しはご覧の通り。フレームはスイングアームが外側となるインナーピボット空冷45度Vツインエンジン。排気効率を優先して排気管の取り回しはご覧の通り。フレームはスイングアームが外側となるインナーピボット

 現在のアメリカのフラットトラックは車両規則などが変更されて、日本車や欧州車など多くのメーカーが参戦しており、ホンダは「XL750トランザルプ」(2023年)のエンジンを使用したマシンで走っています。

「RS750D」のイメージに近い市販車としては、1986年に発売された「FTR250」や、2000年に発売された「FTR」、2011年に発売されたロードスポーツモデル「VT750S」などです。独特のトリコロールカラーは、ホンダのレーシングイメージをクールに伝えています。

■ホンダ「RS750D」(1984年型)主要諸元
エンジン種類:空冷4ストローク45度V型2気筒SOHC4バルブ
総排気量:768.55cc
最高出力:100.5PS/8500rpm

【取材協力】
ホンダコレクションホール(栃木県/モビリティリゾートもてぎ内)
※2023年12月以前に撮影

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