中上貴晶 vs 同世代ライバルたち! 実はMoto2・125cc時代から続いていたMotoGPへの出世争い
バイクのニュース / 2024年9月29日 11時10分
2024年いっぱいでMotoGPレギュラーライダーの座を退く中上貴晶は、125ccでの2年とMoto2での6年を合わせた8年間、まばゆいばかりの才能を持つ同世代のライバルたちとしのぎを削ってきた。2018年に最高峰クラスへ昇格を果たすまでの、そんな世界の猛者との熾烈な出世争いを中上の存在を軸に振り返っていく。
■MotoGP昇格前夜、中上が繰り広げた出世争い
7年にわたった中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)のMotoGPレギュラーライダーとしての挑戦は、2024年で幕を閉じる。
7年にわたった中上貴晶選手のMotoGPレギュラーライダーとしての挑戦は、2024年で幕を閉じる
1992年2月9月生まれの中上は、2008〜2009年に125ccで2年、2012〜2017年にMoto2で6年、今もMotoGPの中核を担う、まばゆいばかりの才能を持つ同世代のライバルとしのぎを削ってきた。
MotoGP昇格前夜、日本のエースはいかに世界と互してきたのか、猛者たちとの戦いを振り返っていく。
■“未知なる競合との遭遇”が連続した125cc時代
まず125ccで立ちはだかったのは、現在WSBK(スーパーバイク世界選手権)を走るアンドレア・イアンノーネ(1989年8月9日生まれ)だ。
I.C.チームで2008年、同チームながら改称したオンガッタ・チーム I.S.P.A.で2009年、イタリアの中堅チームでの2年間、イアンノーネとは同じチームで争った。
2016 MotoGP日本グランプリ Moto2クラスでの中上選手の走行
2008年が参戦4年目のイタリアンに比べ、当時16歳の中上は、未経験のコース、初めてのアプリリアに苦戦。さらに2009年はイアンノーネにのみ進化型のRSA125が与えられ、中上はカスタマー仕様のRS125R。対抗できる状況ではなかった。
また125ccではマルク・マルケス(1993年2月17日生まれ)、ヨハン・ザルコ(1990年7月16日生まれ)、今年はワイルドカード参戦にとどまるポル・エスパルガロ(1991年6月10日生まれ)、ホンダのテストライダーを務めるステファン・ブラドル(1989年11月29日生まれ)らとも遭遇するが、その中で群を抜いた結果を残したのはマルケスだ。
■Moto2クラス1年目に再会した、後の絶対王者
中上がMoto2クラスで世界へ戻った2012年、マルケスは前年ランキング2位の2年目。この年は17戦中9勝、完走したレース全て表彰台という圧倒的な成績で、2010年の125ccに続く2度目のチャンピオンに輝いた。
2011年 Moto2クラスにてポールポジションを獲得したマルケス選手
当時は新たに昇格するライダーのファクトリー・チーム加入を認めない『アンチ・ルーキー・ルール』が存在していたが、シーズン中の撤廃を受け、2013年からのレプソル・ホンダでのMotoGP参戦が決定。後に最高峰クラスで絶対王者と評される活躍を見せることは周知の通りだ。
■ザルコとは125cc・Moto2時代から速さを競う
LCRホンダの同僚として競い合うザルコとも、クラスを変えつつ数年にまたがって相まみえている。
2015 MotoGP日本グランプリでポールポジションを獲得したザルコ選手
125cc以来となるMoto2新人同士での2012年の争いは、ザルコ最高4位に対し、最高5位。シングルフィニッシュ数、完走数でも上回ったザルコがランキング10位でルーキー・オブ・ザ・イヤー。中上は新人2番目の15位で終えた。翌2013年はポディウム5回の中上が総合8位、ザルコ9位と逆転。その後は2015〜2016年と連覇したザルコの後塵を拝すことが増えるが、現在の戦いぶりを見ても本来同等のスピードを備えていることは間違いないだろう。
■2018年、同時にMotoGPへ昇格したモルビデリ
2013年にワイルドカードでMoto2にデビューしたフランコ・モルビデリ(1994年12月4日生まれ)は、中上と同じ2018年にMotoGP昇格を果たしている。
モルビデリがフル参戦を開始した2014年、中上はイタルトランス・レーシングから岡田忠之が監督を務めるイデミツ・ホンダ・チーム・アジアに移籍。発足2年目のチームが新たに採用したカレックス製フレームのセッティングを煮詰められなかったこともあり、ランキング22位と大不振。一方、モルビデリは最高5位と初年度からまずまずの成績を残すが、続く2015年は怪我もあって総合10位。復調した中上が8位と盛り返した。
2015 MotoGP日本グランプリでの中上選手 当時、日本人で唯一Moto2クラスにフル参戦した
共にMoto2最終年となった2017年はモルビデリにタイトルをさらわれたが、中上も優勝1回を含む4度の表彰台と、トップレベルの速さを示した。
■Moto2後半、徐々に増えてきた年下のライダー
マーベリック・ビニャーレス(1995年1月12日生まれ)も2014年のみMoto2で戦っている。前年にMoto3王座を戴冠したビニャーレスは、勢いそのまま4勝を挙げ、1年でMoto2を卒業。
2015年からの2年間はアレックス・リンス(1995年12月8日生まれ)とも争った。参戦5戦目でポールポジションを獲得したリンスは初年度から2勝を挙げてランキング2位。2016年も2勝を含む7回のポディウムで総合3位。中上より1年早い2017年にチーム・スズキ・エクスターから最高峰クラスに昇格した。なお2021年にコンビを組んだアレックス・マルケス(1996年4月23日生まれ)もリンスと同じ年にMoto2へ上がってきている。
2016年は前年Moto3ランク2位のミゲル・オリベイラ(1995年1月4日生まれ)、現在レプソル・ホンダ所属のルカ・マリーニ(1997年8月10日生まれ)、2017年は後にMotoGPチャンピオンとなるファビオ・クアルタラロ(1999年4月20日生まれ)に加え、2022〜2023年のMotoGP王者、フランチェスコ・バニャイア(1997年1月14日生まれ)、Moto3タイトルを引っ提げたブラッド・ビンダー(1995年8月11日生まれ)らがMoto2にデビューし、覇を競った。
32歳の中上は2024年シーズンでMotoGPの一線から退く
Moto2後半は年下が増えてきたように、32歳の中上がMotoGPの一線から退くのは自然な流れ、世代交代が進みつつあることの証左なのかもしれない。しかし、下位カテゴリーから続く250戦以上に及ぶ軌跡は、後に続く日本人ライダーの道標となることだろう。
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