クランクケース内側は真っ黒!! 高齢エンジンの現実…… 同い年のバイク=スーパーカブと生きるバイクライフVol.15
バイクのニュース / 2024年10月2日 7時10分
どんなバイク、どんなモデルでも、自分自身にとって思い入れがあるバイクには、ある種違った感情がありますよね!? 自分自身の生誕年は「記念すべき年」ですが、そんな生誕年に想いを馳せて、1962年型スーパーカブC100と暮らしているぼくなのです。エンジン分解とともにシリンダーヘッドとシリンダーは内燃機加工によってリフレッシュしましたが、通称、エンジン腰下ことクランクケースは分割分解する予定はありません。しかし、カバーを取り外すと、その内側は真っ黒けでした……
■クランクケースの内側には真実が見え隠れ……
正直なお話しをしますと、所有するスーパーカブC100はエンジン始動にチャレンジして、そこそこ走ってくれそうなコンディションを確認できたなら、そのまま外観だけクリーニングしてから、ナンバー登録。気が向いた時に走ることができればいいなぁ…… なんて考えていました。ところが、これまでのリポート通り、そうは問屋が卸してくれません。
1962年の秋頃、おそらく9月末から10月頃に本田技研工業鈴鹿製作所で生産されたスーパーカブ。1961年の前期生産車までは赤い表皮のシートを装備していましたが、1962年後期にはC100/C102/C105ともに黒/白ツートンのシートを採用していました。
エンジン始動まではスムーズでしたが、驚くほどモクモクな白煙を吹き出すエンジンコンディションでした。
シリンダーヘッドを取り外すと、上死点にあるピストントップと燃焼室内に堆積したカーボンの様子を確認できます。いずれもコゲ付いたような印象ではなく、オイルにまみれながらカーボン堆積している様子が見て取れます。こんな燃焼状況だから、白煙モクモクだったのですね
エンジン腰上を分解すると、ピストンリングは想像以上に摩耗していました。トップリングとセカンドリングの合口ギャップは何と3.0ミリ以上もありました。C100サイズのピストンボアだと、トップもセカンドも、おおよそ0.2~0.3ミリが、新品ピストンリングを組み込んだ際のリング合口隙間の規定値で、0.7ミリを超えると、ほぼ使用限界になります。
それが3.0ミリを超えていた訳ですから、それはもうエンジンオイルが燃焼室内に侵入して(これが〝オイルあがり”と呼ばれる症状)、白煙モクモクになって当然です。この段階で、このエンジンはハズレかな!? と感じました。
オイル交換せずに走らせ続けたり、オイル交換サイクルが長くなってしまうと、エンジン内部は真っ黒に汚れてしまいます。ブローバイガスがこの汚れの元だと考えられます。クラッチカバーの内側も、想像通り汚れたオイルスラッジで真っ黒状態でした
そんなエンジン腰上コンディションでしたので、エンジン腰下も当然ながら心配でした。早速、クラッチカバーを外して、内部コンディションを確認しましたが、想像通りでした。
クランクケースカバーでもあるクラッチカバーの内側は、オイルスラッジで真っ黒け!! 後のOHCエンジンの遠心クラッチユニットと、基本構造的には似ていますが、残念なことに「遠心式オイルフィルター機能」がOHVエンジンには採用されていません。
遠心クラッチ式のホンダ横型エンジンのルーツがここにあります。見た目では、モンキーのそれと酷似していますが、オイルポンプがレイアウトされる代わりに、クランクシャフト右下にはカムシャフトが組み込まれます。それにしてもエンジン内部が真っ黒け……
だからこそ、このエンジンオイルの汚れは、気になってしまいます。クランクベアリングにダメージが無ければ良いですが、白煙モクモクの中で、元気良く回っていたエンジンからは、幸いにも気になる異音は感じませんでした…… 正直、そんな記憶です。
C100系OHVエンジンには、オイルフィルター機能がありません。1966年(昭和41年)に登場した、後のC50系横型OHCエンジンには、遠心式オイルフィルターが装備されていました。
オイルフィルターどころか、OHVエンジンのC100系には、オイルポンプすらありません。つまり4ストロークエンジンなのに、オイルポンプも無ければ、オイルフィルターも無いという(オイル通路の途中にネットスクリーンのストレーナーのみ装備している)、ある意味、消去法で設計されたエンジンなの、が初代OHVエンジンのようです。
後のOHCエンジンではオイルポンプが取り付けられる部分に大きなギヤがあるOHVエンジン。カムシャフト+ギヤはクランクケースへ差し込んであるだけで、クラッチカバーの内側に組み込まれる2個のスプリングに押されて抜け止めとなっているおおらかな設計です
ちなみに2代目横型OHVエンジンでもあるCM90/C200系の90ccエンジンには、オイルポンプ(ギヤポンプ)と、遠心式オイルフィルターを装備した設計でしたので、初代横型OHVエンジンシリーズの弱点を、C100ユーザーの走らせ方や扱い方から得て改善されたのだと思います。
オイルポンプ機能に関しては、カムシャフトの軸受けにスパイラル溝が掘られていて、クランクの回転と同期するカムシャフトからシリンダーヘッドへ向けてエンジンオイルがちょろちょろと押し上げられ、ロッカーアーム周りを潤滑する仕組みとなっています。メーカーや年代は異なりますが、スズキのチョイノリにも、オイルポンプは装備されていませんでした。
プライマリードリブンギヤの内部には、発進時やギヤチェンジ時のショックを吸収するためのラバーダンパーが組み込まれてます。このラバーダンパーにガタが出ると、激しいメカノイズや走行時にギクシャク感が出るので、歯車を指先でつまんでガタの有無を確認しました
クラッチユニットの取り外しには、専用工具のロックナットレンチが必要です。この特殊工具は、後の横型OHCエンジン用=スーパーカブやダックスやゴリラにも継承されていましたので、ガレージ常備工具で分解できました。
プライマリードリブンダンパーにガタが出ていないかの確認は、中央のスプライン付近の突起を万力で固定して、外周ギヤを握って回転方向と横方向で振れをチェックしました。
クランクケースは分解しませんでしたが、クランクケースカバーはシルバーに焼き付けペイントを行い、鋳鉄製のシリンダー、シリンダーヘッド、シリンダーヘッドカバーは、半ツヤブラックで焼き付けペイントを実施。エンジンの見た目は美しく仕上げることにしました
気になるガタが無かったのは良かったです。また、発電機裏のオイルシールリップ部分から、オイル漏れが無かったのもラッキーでしたが、走り出せばオイルシールの痛みが発生する可能性もあるため、純正部品を購入できるうちに(無いものは社外部品で)、オイルシールやガスケット類は、交換部品をすべてガレージ在庫にしておこうと思います。
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