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それ、効果あるの? 昔からあったオモシロ空力パーツ

バイクのニュース / 2024年10月4日 11時10分

最近のMotoGPマシンは、見るたびにスタイルが変わるほどカウリングの様々な場所に“羽根”を装備しています。そんな「空力デバイス」はもちろん、昔からバイクには色々な「空力に効きそうな」パーツやデザインが施されていました。

■レースで勝つために必須の空力デバイス

 ここ数年、2輪ロードレースのトップカテゴリーであるMotoGPでは「空力デバイス」が驚くほど進化しており、その勢いはまだまだ収まりそうにありません。

ホンダのMotoGPワークスマシン「RC213V」(画像は2024年7月26日公開)。カウリングに空力デバイスを装備するホンダのMotoGPワークスマシン「RC213V」(画像は2024年7月26日公開)。カウリングに空力デバイスを装備する

「空力=空気力学」は、流体力学や運動作用など難解な学問になりますが、なんとなく空気抵抗(Cd値)が少ない方がスピードが出るような気がします。また4輪のF1やクルマのエアロパーツで「ダウンフォース」という用語も耳にしますが、こちらは空力によって車体を路面に押し付ける力のことで、やはりスピードや操縦安定性が向上するイメージがあります。

 もちろんその通りですが、バイクの場合はコーナーで車体をバンクして曲がるため、単純に空気抵抗の少ない形状にしたりダウンフォースを高めるだけでは、ハンドリングが悪化する場合もあります。そのため空力デバイスの開発は非常に難しく、かつ日々進化しています。そしてレーシングマシンの空力デバイスは、当然のように市販のスポーツバイクにフィードバックされています。

■市販車はいつ頃からカウリングを装備した?

 それではレースの世界で登場したカウリングは、いつ頃から市販スポーツバイクに装備されたのでしょうか? おそらく1975年発売のドゥカティ「900SS」が市販量産車で初と思われます(プロダクションレーサーや限定モデルを除く)。ちなみにツーリングに適した「風雨を凌ぐためのスクリーンやカウリング」は、もっと以前のインディアンやハーレー・ダビッドソンが装備しており、英国の旧ロイヤルエンフィールドは1950年代からFRP製の風防を用意していました。

レーシングマシンからフィードバックしたロケットカウルを装備するドゥカティ900SS(1975年)。レーシングマシンからフィードバックしたロケットカウルを装備するドゥカティ900SS(1975年)。

 そして日本車で初めてカウリングを装備したのは、1978年のカワサキ「Z1-R」だと思われます。角張ったフォルムにマッチしたデザインのビキニカウルは非常に斬新でした。その翌年の1979年にはスズキが「GS1000S」をリリースし、こちらはビキニカウルの下部がスポイラー形状で、いかにも空力を意識したスタイルでした。

 とはいえカワサキの「Z1-R」もスズキの「GS1000S」も輸出専用モデルです。じつは当時の日本国内では、「カウリングはスピードが出る→暴走行為を助長する」という理由から、カウリングの装備が認可されませんでした。ちなみにアフターパーツのカウリングを装備すると違法改造(整備不良)で違反切符を切られることもありました。

 そして輸出モデルのスズキ「GSX1100S KATANA」はスクリーンを装備していましたが、国内モデルの「GSX750S」は非装備です。特徴的なフロントカウルも、名目上は「ライトケース」と呼んでいました。

 1980年代初頭はバイクブームのさなかで、大人気の250ccクラスに登場したホンダの「VT250F」はフロントウインカーを埋め込んだビキニカウルを装備していました。……が、こちらもカウリングの認可前だったので「メーターバイザー」という名称でした。

 しかし1983年、ついに日本国内でカウリングが認可されました。そこで真っ先に登場したのが、フレームマウントのカウリングを装備したスズキ「RG250Γ(ガンマ)」で、ここから本格的なレーサーレプリカ・ブームが始まります。

 それまではツアラー系が主体だった大排気量モデルにおいても、1985年に世界選手権耐久レースのレーシングマシンを彷彿させる「GSX-R750」が登場し、このバイクが現在のスーパースポーツモデルに続くムーブメントを作ったと言っても過言ではないでしょう。

■1980年代は「オモシロ空力パーツ」がテンコ盛り!?

 ここまではカウリングの国内認可やレーサーレプリカの流れで「空力」を追ってきましたが、1980年代初頭頃からは「ホントに空力効果あるんですか?」というパーツや形状が続々登場しました。その一部を見てみましょう。

フロントフェンダーにもフィンを装備するホンダ「CB750F」(1981年のFB型)フロントフェンダーにもフィンを装備するホンダ「CB750F」(1981年のFB型)

 まずは1979年に登場した大人気ナナハンのホンダ「CB750F」ですが、テールカウルに「いかにも」な形状のフィンを装備していました。

 余談ですが、1980年代はこのテールフィン形状を模した……というか拡大解釈したような、主に400ccクラス用のアフターパーツのテールカウルが多数販売されていました。また「CB750F」は1981年のFB型から「エンジン冷却効果を上げるエアーガイド付フロントフェンダーを採用」(当時のニュースリリースより)しています。

 そして1980年代初頭から、フロントフェンダーがフロントフォークのボトムケースを覆う「エアロフェンダー」が登場。最初はフロントフェンダーの側面を少し広げた控えめな形状だったものが徐々に大型化し、現代のスポーツ車は倒立式フォークが主流になったため、インナーチューブの保護も兼ねてエアロフェンダーがメジャーになりましたが、そのはじまりはここにあります。

 さらに4輪スーパーカーやスポーツカーで流行した「リトラクタブルヘッドライト」を装備するバイクが登場! 有名どころではスズキ「GSX750S KATANA」(1984年)、通称「3型カタナ」ですが、じつは先発はホンダのスクーター「スペイシー125ストライカー」(1983年)になります。とはいっても、リトラクタブルヘッドライトのバイクはこの2台だけですが……。

 また1980年代半ばに登場したレーサーレプリカは、当然ながら「レーサーに似ているほどエライ」という風潮がありました。ヤマハが1985年に発売した「TZR250」のフロントカウルには、ワークスマシンの「YZR250」や「YZR500」と同様の「別体式ナックルバイザー」を装備していました。このディテールは2024年5月に発売されたヤマハ「XSR900GP」にも引き継がれています。

 同じく1984年にホンダが発売した「NS250R」は、フロントフォークのボトムケースを完全に覆うスポイラーを装備するだけでなく、跳ね上げるとアンダーカウルと一体化するカバー付きのサイドスタンドや、ヘルメットホルダーにもカバーを装着しました。

 さらに1985年には、サイドカウルに大きく「AERO(エアロ)」の文字を入れた「CBR400R」を発売。空力性能を強くイメージさせるスタイルですが、当時のレーシングマシンに似ていなかったためか、人気はいまひとつのようでした。

■リバイバル&王道のスズキ

 スズキは「空力スタイル」のリバイバルモデルも発売しました。1994年に発売された「GSX400インパルス」に、バリエーションモデルとしてビキニカウル装備の「Type S」を追加。下部がスポイラー形状のビキニカウルは、まさに1979年の「GS1000S」を彷彿させるスタイルでした。

スズキ「GS1200SS」(2001年)は、1980年代の耐久レーサーをイメージさせる丸く大きなカウリングや2眼ヘッドライトが特徴スズキ「GS1200SS」(2001年)は、1980年代の耐久レーサーをイメージさせる丸く大きなカウリングや2眼ヘッドライトが特徴

 さらに2001年に発売した「GS1200SS」は、「耐久レーサーのイメージをファッションのひとつとして街中で楽しむ“ストリート系ビッグバイク”」がコンセプトで、こちらも1985年発売の「GSX-R750」のセルフオマージュでしょうか。

 またスズキは1993年に高速クルージング向けの「RF」シリーズ(RF400R、RF600R、RF900R)を発売しました。空力的には「ウインドプロテクションに優れたフルカウルを装備」となりますが、なんといってもカウル側面に設けたルーバー状のアウトレットが、いかにもスーパーカー的です。これも空力の一種なのでしょうか?

 そして「空力の王道」とも言える「GSX1300R HAYABUSA」をリリース。鎧兜(よろいかぶと)をモチーフとした涙滴型のフォルムは、高速性能とライダーの防風効果を徹底的に追求した形状で、現行モデルの「Hayabusa」にも色濃く受け継がれています。

■「空力」と言えば、カワサキ!?

 空力と言えば、航空機や風洞試験設備も手掛ける川崎重工グループのカワサキを外せません。強く空力を意識しながらもレーシングマシンと一線を画したスタイルも大きな特徴です。

カワサキが1994年に発売した「GPZ900R」。背景のジェット機はブルーインパルスでもお馴染みのT-4練習機カワサキが1994年に発売した「GPZ900R」。背景のジェット機はブルーインパルスでもお馴染みのT-4練習機

 たとえば1994年に発売した「750 Turbo」のプロトタイプ(1981年発表)は、軽合金製のカウリングを装備したジェット戦闘機のようなルックスでした。

 また、いまだ高い人気を誇る「GPZ900R」は、一見すると武骨なデザインですが、風洞実験を重ねて当時のレーサーレプリカより良好なCd値(空気抵抗係数)を実現しています。

 そして市販バイクで最強クラスの空力性能を誇るのが、2015年に発売された「Ninja H2R/H2」ではないでしょうか。スーパーチャージャーを装備し、クローズドコース用の「Ninja H2R」は最高出力326馬力(ラムエア加圧時)、公道仕様の「Ninja H2」も210馬力(ラムエア加圧時)が注目され、川崎重工グループの航空宇宙カンパニーからノウハウを得たカウリング形状も特筆モノです。

「Ninja H2R」はミラーの代りに、アッパーパウルに大型ウイング、ミドルカウルにも翼端板装備のウイングを装備。また「Ninja H2」のバックミラーはステー部分が翼断面形状で、後端にガーニーフラップ(L字断面の整流板)を設けてダウンフォースを高めています。

 ……さて、バイクが装備する様々な空力パーツを振り返ってきましたが、設計や解析技術が進んだ現在の空力デバイスやカウリング形状は、間違いなく性能向上に貢献しており、この先は「コレ、どうなの?」というギミック的なモノはもう出てこないかもしれません。

 とはいえ、レーシングマシンはともかく趣味として楽しむバイクなら、かつてのオモシロ空力パーツも十分に魅了的ではないでしょうか。

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