値段が高い方が良いの? メンテナンスに使うグリスの種類に迷う
バイクのニュース / 2024年10月18日 11時10分
ハードな整備作業はプロにお任せするとしても、簡単なメンテナンスは自分でやってみたいライダーも多いのではないでしょうか。作業するには工具だけでなく、ケミカル用品も必要です。その代表格である「グリス」にはたくさんの種類があり、それぞれ使う箇所に応じて選ぶことが重要です。
■高いモノが良い、とは限らない
バイクにはハンドル(ステム)やスイングアーム(ピボット軸)、ホイールの車軸(アクスル)など可動部分がたくさんあり、組み付ける際には部品の摩耗を防ぎながらスムーズに動くように「グリス」を塗布します。他にもクラッチやブレーキレバー、シフトペダルなど操作系のパーツも取り付け部分にはグリスを塗布しています。
レバー類の可動部分には、部品の摩耗を防いで動きを良くするためにグリスが塗布されている
前者のような「大モノ」の分解整備はバイクショップに依頼する方が無難ですが、レバー類のメンテナンス作業などは、ライダー自身で行なうことも可能です。マメに清掃や潤滑をすれば動きが軽くなり(想像以上に効果アリ)、操作がグッとラクになります。
そんなメンテナンス作業に必要なグリスですが、どんなモノを使えば良いのでしょうか? バイク用品店に行くと様々な種類のグリスが販売されているので、どれを選べば良いのかわからない……という人も多いでしょう。
そんな時に「とりあえず値段が高いモノなら大丈夫だろう……」という選び方はおススメできません。じつはグリスの種類によっては、塗布したことでかえって部品を傷めてしまうこともあるからです。価格ではなく塗布する場所に適したグリスを選ぶことが大切です。
■大抵の可動部分は「万能グリス」でOK
メンテナンス用のグリスとして、最初に用意したいのが「万能グリス」です。「汎用グリス」とか「マルチパーパスグリス」とも呼ばれ、主成分はリチウムせっけんやウレア系、カルシウム系などで、レバーの軸やホルダー部分、他にもベアリング類など潤滑を必要とするほとんどの場所に使えます。部品の材質に関わらず、塗布した部分を傷める可能性は極めて低く、価格が安いこともポイントです。
■ゴムやプラスチックには「シリコングリス」
次にあると便利なのが「シリコングリス」です。ゴムやプラスチックなどの樹脂製品を傷めないので、オイルシールやOリングの組み付け時等に最適です。高温になっても固まりにくく、電気を通さないためバッテリーの端子に塗布すれば腐食防止にも役立ちます。
ただし強い負荷(極圧)がかかる部分の金属同士の潤滑には向いていないので、ハンドルのステムやスイングアームピボットなどの軸受け部には使えません。
シリコングリスをフロントフォークのインナーチューブに塗布すると、伸縮の動きがスムーズになる
たとえばフロントフォークのインナーチューブにシリコングリスを塗布して、フォークを何度かしっかりストロークさせると、ダストシールやオイルシールが馴染んでフォークの動きが良くなります(キレイに清掃してから塗布し、ストロークさせた後はベタつかないようにしっかりウエスで拭き取ること)。
シリコングリスはプラスチックなどの樹脂を傷めないので、ヘルメットのシールドの取り付け部に塗布することもオススメできます。開閉の動きが軽くなる上に、開閉時のキーキーと擦れる音を消すことができます(ゴミが付着しないよう、極少量塗ればOK)。
■「モリブデングリス」は使用場所に注意!
エンジンの分解整備でよく使うのが「モリブデングリス」です。配合される二硫化モリブデンの極小の粒子が「コロ」の役割を果たし、高い極圧性能を発揮するので、大きな荷重のかかるトランスミッションの軸受部などの組み立て時に塗布します。
ただし二硫化モリブデンの粒子は非常に硬いため、ゴム製のシールやプラスチックなどの樹脂パーツ、またアルミや真鍮など(ブレーキやクラッチレバーの軸受部など)の柔らかい材質だと、粒子が部品を削ってしまう(塗布したことで摩耗しやすくなる)ので使用できません。価格も相応に高く、高性能グリスであることは事実ですが、使う場所には注意が必要です。
トランスミッションの組付け時などは、軸受け部分にモリブデングリスを塗布する
他にも高額なグリスとして「カッパーグリス」があります(カッパーペーストやカッパーコンパウンドと呼ぶ場合もアリ)。こちらは銅粉を配合し、高い耐熱性を持つため、モリブデングリスのようにマフラーのフランジボルト/ナットのような高温になるネジ部分の焼き付きや腐食防止に役立ちます。
またブレーキパッドの「鳴き」防止にも効果があります(ブレーキパッドの背板とブレーキキャリパーのピストンの接触面に塗布する)。
銅粉を配合しているので、やはりゴムや樹脂パーツなど軟らかい材質の部品には不向きです。
■塗布前にキチンと清掃、余分なグリスはシッカリ拭き取る!
「カッパ―グリス」はブレーキパッドの不快な「鳴き」を抑えることにも活用できる。パッドの摩材やディスク板に付着するとブレーキが効かなくなって大変危険なので、背板に極少量を薄く塗ること
このように、グリスは塗布する場所や部品の材質に合わせて選ぶことが大切です。そしていずれのグリスを使う場合でも、塗布する前にまずは部品をしっかり掃除することが重要です。掃除せずにそのままグリスを塗ると、付着したままの汚れ(砂粒や泥、部品の摩耗で発生した金属粉など)がグリスに混ざるため、研磨剤のようにパーツを削って摩耗を早めてしまう危険があるからです。
また、グリスを塗布して部品を組み付けたら、余分なグリスはキレイに拭き取ることも重要です。グリスがハミ出していると、そこにどんどんホコリや泥が付着します。すると見た目が汚いだけでなく、やはりグリスに混入した汚れが部品を摩耗させる原因になるからです。
なんとなく「タップリ塗った方が効果がある」と思いがちですが、部品同士の接触面以外のグリスには意味が無いので適量で十分です(サビ止めにはなるかも)。もしもハミ出したグリスが飛散してタイヤやブレーキなどに付着したら大変危険なので、塗り過ぎには注意しましょう。
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