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クラシカルな「2本ショック」は絶滅寸前!? やっぱり「モノショック」の方が高性能なの?

バイクのニュース / 2024年10月25日 11時10分

いまどきのスポーツバイクのリアサスペンションは「モノショック(1本ショック)」が主流で、昔のバイクに多かった、いかにも衝撃を吸収している感じの「2本ショック」は目にする機会がずいぶんと減ってきました。それは性能の問題なのでしょうか?

■スイングアーム式の2本ショックで乗り心地が向上

 バイクが世に出た1900年代初頭からしばらくは、路面からの衝撃を吸収するサスペンションは装備していませんでした。そして現在のような「スイングアーム方式」のリアサスペンションを初めて装備したのが、1955年のBMW(R27、R50、R69など)の車両で、車両の両側とスイングアームの間に2本のショックユニットを備えていました。

1950年に発売されたBMWの「R 69 S」は、リアサスペンションにスイングアーム方式を採用し、2本のショックユニットを装備。バイクの乗り心地が飛躍的に良くなった1950年に発売されたBMWの「R 69 S」は、リアサスペンションにスイングアーム方式を採用し、2本のショックユニットを装備。バイクの乗り心地が飛躍的に良くなった

 それから世界中のスポーツバイクがスイングアーム&2本ショックのリアサスペンションを採用しました。人気の旧車、ホンダ「CB750FOUR」やカワサキ「Z1」はもちろん、1980年代後半から盛り上がったネイキッドモデルや、“アメリカン”と呼ばれたクルーザー系、そして近年流行のクラシック系も、2本ショックを装備する車両は少なくありません。

■意外と古い、モノショックの登場

 ところが、1970年代初頭に大きな変化が訪れます。オフロードで闘うモトクロスレースでは、路面のギャップを乗り越え走破性を高めるために、長いホイールトラベル(サスペンションのストローク量)が必要で、当時はどんどんショックユニットの全長が長くなっていました。とはいえバイクのレイアウト上、またライダーの体格的にも、ショックの長さは限界を迎えていました。

ヤマハが1970年代初頭にモトクロッサーに採用した「モノクロスサスペンション」ヤマハが1970年代初頭にモトクロッサーに採用した「モノクロスサスペンション」

 そこで、ヤマハが取り入れたのが「モノクロスサスペンション」です。トライアングル状のスイングアームから、エンジンの上を通ってステアリングヘッドに届くくらい長い1本のショックユニットを持つ構造です。モトクロスレースで圧倒的な性能を収めたことから「空飛ぶサスペンション」と呼ばれ、この構造をロードレースにも転用したところやはり好調で、市販車にも装備が始まりました。

 そしてヤマハのモノクロスサスペンションに対抗して、ホンダがモトクロスレースで開発を進めたのが、1本ショックにリンク機構を組み合わせた「プロリンク・サスペンション」です。

 市販バイクで最初に投入したのが、現在も大人気の「CBX400F」(1981年)と、同年発売のオフロードモデル「XL250R」です。

 そして同時期にカワサキが「ユニトラック」、スズキが「フルフローター」という名称でリンク式のモノショックを発表し、オン/オフ問わず多くのスポーツモデルが続々と採用しました。そしてヤマハも1983年頃にはリンク式の新型モノクロスサスペンションになっています。

現行スーパースポーツ車のホンダ「CBR1000RR-R」が装備する最新のプロリンク式サスペンション現行スーパースポーツ車のホンダ「CBR1000RR-R」が装備する最新のプロリンク式サスペンション

 モノショック(1本ショック)は、そもそもモトクロスで長いストローク量を確保するために生れましたが、不整地を走らないオンロードレースやロードスポーツ車にも採用されたのはナゼでしょうか?

 それは小さなギャップは素早くソフトに衝撃を吸収し、大きなギャップの強い衝撃はシッカリと踏ん張れるように、サスペンションの反発力を二次曲線的な特性(プログレッシブ効果)にするために、モノショック&リンク式が適していたからです。この特性はオフロードの走破性だけでなく、オンロードでの路面追従性にも大きく影響し、コーナリング速度や安定性を高めるのに役立ちます。

 またショックユニットは、バイクを構成する部品の中では“けっこう重いパーツ”になります。そのため、フレームの後部とスイングアームを繋ぐ2本ショックよりも、車体の重心近くに配置したモノショックの方が、バイクの運動性能に影響する「マスの集中化」にも貢献します。単純に重量で比較しても、モノショックは大きくて太いとはいえ文字通り1本なので、2本ショックよりは軽量になります。

 これらのメリットにより、リンク式のモノショックは進化を続けて現代ではスーパースポーツモデルはもちろん、スポーツネイキッドやアドベンチャー、オフロードモデルなどに採用されています。

 ちなみに近年のスーパースポーツや高速ツアラー、大排気量アドベンチャーなどが装備する「電子制御サスペンション」のリアサスペンションはすべてモノショックで、2本ショックには存在しません。

■“バイクらしさ”からハズせない2本ショック

 このように、性能や合理性を考えるとモノショック(1本ショック)の方が圧倒的に優位なことは事実です。とはいえ、サーキットやモトクロスコースでタイムを競うようなスポーツ走行をするならリンク式モノショックが間違いなく有利ですが、公道を走る上では、現代の2本ショックなら性能的にも乗り心地でも何ら問題は無いでしょう。

カワサキ「メグロK3」が装備する、カバー付きのシックなデザインの2本ショックカワサキ「メグロK3」が装備する、カバー付きのシックなデザインの2本ショック

 というワケで、レトロなスタイルのネイキッドやクルーザーなどには、昔ながらの2本ショックを装備している車両が少なからずあります。日本メーカーではホンダが「CB1300SB/SF」を筆頭に、「レブル」シリーズと「CL」シリーズ、「GB350」シリーズが2本ショックで、人気の125ccクラスのリバイバルシリーズ(スーパーカブC125、CT125・ハンターカブ、ダックス125、モンキー125)やスーパーカブ系も2本ショックです。

 また、カワサキは「メグロK3」とベースとなる「W800」、そして「エリミネーター」が2本ショックですが、スズキとヤマハはモノショックのみになります(※2024年9月18日現在の国内販売モデル。スクーターや競技モデルを除く)

 こう見ると“2本ショックのバイクもそこそこある”ような気もしますが、車体を共有する兄弟車なども多く、実際には、やはり少数派と言えます。

 海外メーカーを見ると、ドゥカティ、BMW Motorrad、KTM、MVアグスタ、アプリリアの現行モデルはモノショックのみになります。しかしトライアンフやモト・グッツィがラインナップするネオクラシック系は2本ショックで、インドのロイヤルエンフィールドは多くのモデルが2本ショックです。

 ここからも見て取れるように、性能と合理性を優先するとモノショックがマストですが、スタイルを重視するバイクに2本ショックはハズせない存在……なのかもしれません。

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