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75周年を迎えた2024年のMotoGP。熾烈なチャンピオン争いの歴史は国と国による興亡の物語だった

バイクのニュース / 2024年10月23日 13時10分

1949年に始まったロードレース世界選手権は、2002年にMotoGPと名を改め、今年で75周年を迎えたが、その歴史は国と国による興亡の物語と言い換えることができるかもしれない。コンストラクターズおよびライダーズチャンピオンを輩出した国の年代による移り変わりを軸に、最高峰2輪レースの系譜に迫る。

■GP黎明期にAJSとノートンが開いたイギリス王朝

 1949年に始まったロードレース世界選手権は、2002年にMotoGPと名を改め、今年で75周年を迎えた。

MotoGPと名を改め、75周年を迎えたロードレース世界選手権。これまで幾多の名車、名ライダーが現れたMotoGPと名を改め、75周年を迎えたロードレース世界選手権。これまで幾多の名車、名ライダーが現れた

 これまで幾多の名車、名ライダーが現れたが、その歴史は国と国による興亡の物語と言い換えることができるかもしれない。まずは最高峰クラスのコンストラクターズ争いに絞って話を進めよう。

 4ストローク990ccと2ストローク500ccが混走するMotoGPクラス実施までプレミアムクラスは500ccで争われてきたが、当初は4ストロークのイギリス車が主役だった。

フェザーヘッドフレームに499cc単気筒エンジンを載せたノートンは1950年からコンストラクターズ3連覇。さまざまな仕様が存在し、多くのプライベーターによってGP以外のレースでも活躍したフェザーヘッドフレームに499cc単気筒エンジンを載せたノートンは1950年からコンストラクターズ3連覇。さまざまな仕様が存在し、多くのプライベーターによってGP以外のレースでも活躍した

 並列2気筒を搭載した1949年のAJSを皮切りに、1950年からは路面追従性と安定性に優れるフェザーヘッドフレームに単気筒を載せたノートン・マンクスが3連覇。GP黎明期に英国王朝を開いた。

■20年近く続いたイタリア製多気筒エンジンの天下

 だが、それはいつまでも続かず、時代は多気筒エンジンへ。かねてよりイギリス勢の好敵手だったイタリアのジレラが1953年に初めてコンストラクターズを制すると、その後は同国のMVアグスタが全盛期を迎えた。

MVアグスタは1958年から500ccの製造者部門を4気筒エンジンで8連覇すると、1967年以降は3気筒で7連覇。約20年間、イタリア製多気筒エンジンの天下が続いた(写真は3気筒モデル)MVアグスタは1958年から500ccの製造者部門を4気筒エンジンで8連覇すると、1967年以降は3気筒で7連覇。約20年間、イタリア製多気筒エンジンの天下が続いた(写真は3気筒モデル)

 1956年に珠玉の4気筒エンジンで初タイトルを獲得したジョヴァンニ・アグスタ伯爵が興したメーカーは、1958年から1965年まで8連覇を達成。一度は王座を逃すも、1967年以降は3気筒で7連覇。約20年間、イタリアの天下が続いた。

■のべ46回メーカータイトルを獲った日本メーカー

 1966年にホンダがDOHC4バルブ並列4気筒を積むRC181で1年だけタイトルを奪うが、本格的に“ジャパン・アズ・ナンバーワン”の時代が訪れるのは1974年。

 ヤマハがYZR500で2ストローク初のチャンピオンに輝くと、そこから2001年まで2ストロークの日本メーカーが28連覇。4ストローク990ccのMotoGP時代になっても強さは続き、2007年にタイトルを譲るまでさらに5連覇し、33年間、王座を独占した。

1974年に2ストローク車初のチャンピオンマシンとなったYZR500(0W20)。そこからドゥカティにタイトルを譲る2007年まで日本メーカーが33連覇(2ストロークでは2001年まで)1974年に2ストローク車初のチャンピオンマシンとなったYZR500(0W20)。そこからドゥカティにタイトルを譲る2007年まで日本メーカーが33連覇(2ストロークでは2001年まで)

 ここ何年かはドゥカティらに押されて苦戦しているが、ホンダ24回、ヤマハ13回、スズキ9回と、のべ46回メーカータイトルを獲得した日の丸軍団が、GP史の中で最も長い期間、時に主人公を入れ替えながらプレミアムクラスで最強ストーリーを紡いできたことは間違いない。

■1960年代の半ばまで続いた英国人ライダーの時代

 次にライダーへ目を移すと、マシン同様、GP初期は英国勢の活躍が続く。レスリー・グラハムが母国のAJSで初代チャンピオンに就いたのに始まり、2輪レース初のスーパースターと称されたジェフ・デューク、後にフェラーリでF1も制覇するジョン・サーティースが共に3年連続を含む4回と、1949年から1960年までの12年間で9回イギリス人が500cc王者に。

 コンストラクターズ争いは数年でイタリア勢に立場を逆転されたが、デュークはジレラ、サーティースはMVアグスタと、ライバル国のメーカーに移籍し、英国人ライダーの時代をつないだ。

RC181を駆るマイク・ヘイルウッド。“マイク・ザ・バイク”はMVアグスタ時代の1962年から1965年に500ccを4連覇。英国人の最高峰クラス王者は1977年のバリー・シーンが最後だRC181を駆るマイク・ヘイルウッド。“マイク・ザ・バイク”はMVアグスタ時代の1962年から1965年に500ccを4連覇。英国人の最高峰クラス王者は1977年のバリー・シーンが最後だ

 1970年代にかけては“マイク・ザ・バイク”ことマイク・ヘイルウッドが4連覇、フィル・リードとバリー・シーンがそれぞれ2連覇と最大排気量クラスで存在感を示した。

■史上最高のライダーたちが打ち立てた2度の黄金期

 その頃に台頭し、MVアグスタで隆盛を極めたのが、1966年から1972年まで500ccを7年連続で制したジャコモ・アゴスチーニ。

ヤマハに500cc初タイトルをもたらしたジャコモ・アゴスチーニ。1966年から1972年にはMVアグスタで500ccを7連覇。計15回の世界王座、通算122勝を手にし、黄金期を打ち立てたヤマハに500cc初タイトルをもたらしたジャコモ・アゴスチーニ。1966年から1972年にはMVアグスタで500ccを7連覇。計15回の世界王座、通算122勝を手にし、黄金期を打ち立てた

 この時代は同一シーズンに複数クラスにエントリーするライダーも少なくなかったが、アゴスチーニのそのひとりで、1968年から1974年に350ccも7連覇。ヤマハに500ccで初のメーカータイトルをもたらしたのも特筆に値する。計15回の世界王座、通算122勝を手にし、イタリア黄金期を打ち立てた。

 1996年デビュー。通算115勝を挙げ、9回世界チャンピオンになったバレンティーノ・ロッシと並び、“史上最高のライダー”との呼び声も高い。

■ダートトラックで腕を磨いたアメリカンとオージー

 1978年にケニー・ロバーツが登場するとアメリカの時代が到来。

1978年にフル参戦を開始し、1980年まで500ccを3連覇した“キング・ケニー”ことケニー・ロバーツ。その後、1990年代前半までダートトラックで鍛えたアメリカンたちがGPを席巻した1978年にフル参戦を開始し、1980年まで500ccを3連覇した“キング・ケニー”ことケニー・ロバーツ。その後、1990年代前半までダートトラックで鍛えたアメリカンたちがGPを席巻した

 ダートトラックで鍛えたアメリカンたちは2ストローク500ccのモンスターを豪快にスライドさせ、GPを席巻。1983年の“キング・ケニー”と“ファスト・フレディ”ことフレディ・スペンサーによる壮絶なタイトルを巡る戦いは伝説となっている。

 1980年代後半から1990年代前半にかけてはエディ・ローソン、ウェイン・レイニー、ケビン・シュワンツらが覇を競うが、ロバーツが初戴冠した1978年からシュワンツがチャンピオンになった1993年までの16年間の内、アメリカ人のタイトル奪取は13年に及んだ。そんな状況に割って入ったのが、こちらも未舗装路で腕を磨いたワイン・ガードナーだ。

 モリワキエンジニアリングの森脇護が見出したガードナーは、オーストラリア人初の500cc王者に輝き、その後、時代を築くミック・ドゥーハン、ケーシー・ストーナーの先駆けとなった。

■最強国家スペインの先駆けとなった英雄クリビーレ

 先駆けで忘れてならないのは、アレックス・クリビーレだろう。

1999年、NSR500に乗ってスペイン人初の500cc王者に輝いたアレックス・クリビーレ。2010年代のホルヘ・ロレンソやマルク・マルケスに続くスパニッシュライダー時代の先駆けとなった1999年、NSR500に乗ってスペイン人初の500cc王者に輝いたアレックス・クリビーレ。2010年代のホルヘ・ロレンソやマルク・マルケスに続くスパニッシュライダー時代の先駆けとなった

 アンヘル・ニエトが計13回(125cc:7回、50cc:6回)王座に就くなど軽量級でこそ実績十分だったが、かつてはスパニッシュによるプレミアムタイトル獲得は難しいと考えられていた。

 しかし、1992年にクリビーレがスペイン人初の500ccクラス優勝を果たしてイメージを払拭。1999年にスペイン国民悲願の栄冠を掴み取った。そこから少し時間を置くが、2010年代はホルヘ・ロレンソ、マルク・マルケスらが活躍し、すでにスパニッシュライダーのMotoGPクラス王座数は11。充実した育成環境を背景に今や最強国家のひとつとなっている。

 日本にMotoGPチャンピオンはまだ誕生していないが、いつか必ず現れる。その瞬間を間近で見届けた者こそ、長きにわたって刻まれてきた2輪レース史の生き証人ということができるだろう。

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