ヤマハの自動変速機構「Y-AMT」搭載車に注目が集まるが…… 「MT-09」の最上級モデル「SP」は何が凄い?
バイクのニュース / 2024年11月5日 8時10分
自動変速機構「Y-AMT」をヤマハとして初搭載したことで話題となった「MT-09」ですが、先駆けて販売されていたシリーズで最もハイエンドな「SP」の実力はどれほどのものなのでしょうか。モーターサイクルジャーナリストの伊丹孝裕さんがその実力を検証します。
■「MT-09」の最上位モデル
クラッチレバーとシフトペダルを廃したヤマハの新型ロードスポーツ「MT-09 Y-AMT」に話題が集まっているところですが、ひと足先にリリースが始まっていた兄弟モデル「MT-09 SP」にも乗りました。
ヤマハ「MT-09SP」に試乗する筆者(伊丹孝裕)
以前お届けしたMT-09 Y-AMTの試乗記では、ハンドシフトの操作性や、それがもたらすライディングの変化に注力し、それ以外はばっさり排除。基本的なことを何ひとつ報告しておりませんでした。
MT-09 SP(以下、SP)は、シリーズの最上位グレードです。ベースになったスタンダードモデル「MT-09」は、2024年3月にモデルチェンジを受け、デザインを一新。この時、ライディングポジションが見直されたり、メーターが新しくなったり、電子デバイスの充実が図られたり……と大小様々な改良が施されています。
従来型と最新型のヤマハ「MT-09」ライディングポジションの比較
では、スタンダードモデルとSPの違いはなにか。その差は主に足まわりにあり、フロントにKYBの倒立フォークとブレンボのモノブロックキャリパー、リアサスペンションにはオーリンズのモノショックを装備。また、スマートキーの採用、スイングアームのバフ仕上げとクリア塗装、電子デバイスのメニュー追加といったアップデートを受けています。SPは走りのパフォーマンスを引き上げたスポーツ仕様と言ってよく、今回そのハンドリングをサーキットで体感することができました。
ヤマハ「MT-09SP」と筆者(伊丹孝裕)
以前のモデルと比較してすぐにわかるのは、よりナチュラルになったライディングポジションです。ハンドルは低くなり、ステップは後退したとはいえ、前傾を強いられるようなものではなく、スポーツライディングにちょうどいい感じ。
コーナーの進入で車体をクイックにバンクさせたり、スロットルを開けながら旋回するような場面でもフロントのバタつきは抑えられ、タイヤの接地感をしっかり感じながらコーナリングを楽しむことができます。
ヤマハ「MT-09」スタンダードモデル
この特性自体はスタンダードモデルでも同様ですが、サスペンションやブレーキに強く入力した時の余力は、あきらかにSPに分があります。剛性感と言い換えてもよく、特にブレーキを軽く引きずりながら倒し込んでいくようなコーナーでは、フロントフォークがひとまわり太くなったように感じられるほど、頼もしい手応えが伝わってきます。
これによって、狙ったラインをトレースしやすく、コーナリング中のスタビリティも向上。それらの効果が合わさって、さらにペースが上がっていく……という流れの中で、スポーツライディングの醍醐味を堪能できるはずです。
ヤマハ「MT-09SP」に試乗する筆者(伊丹孝裕)。様々な電子制御を搭載することで安定したライディングを可能にします
コーナーの立ち上がりでは、フルアジャスタブルになったオーリンズのリアショックと、より開けやすくなったリンク特性がトラクションをアシスト。これ以上あるとかなり乗り手を選ぶことになる、120PSの最高出力をきっちりと路面に注ぐことができます。
だからといって、その出力を野放しにしているわけでもありません。パワーモード、トラクションコントロール、スライドコントロール、リフトコントロール、ブレーキコントロールといった従来の電子制御に加え、エンジンブレーキマネージメント(エンブレの強弱を調整)とバックスリップレギュレータ(エンブレによる挙動の乱れを抑制)が、車体の安定性に貢献。逆に、自分の意志で振り回したいライダー向けには、リアのABSをオフにできる機能もあるなど、これまで以上に高い自由度が確保されているのです。
■高揚感を煽るヤマハ独自の「アコースティックアンプリファイアグリル」にも注目
現在、幅広く展開されている888ccの水冷4サイクル3気筒エンジンですが、そのサウンドの魅力を全面的に押し出しているモデルが、このSPを筆頭とするMT-09シリーズです。モデルチェンジの際、吸気ダクトの変更によって、その高周波サウンドが強調された他、吸気音がライダーの耳に届きやすいように独自の開口部(ヤマハはこれをアコースティックアンプリファイアグリルと呼ぶ)を設置。
ヤマハ「MT-09」シリーズで採用されているアコースティックアンプリファイアグリル。吸気音がライダーの耳に届きやすいように独自の機構となっています
その音響効果によって、トルクフィーリングが明瞭になり、出力を自在にコントロールしている感覚も強まっているため、スロットルを積極的に開けていきたくなるのです。そんな風に、エンジン自体の特性もさることながら、サウンド面からもドライバビリティの向上が図られています。
ヤマハ「MT-09SP」ではフラッグシップモデル「YZF-R1M」との親和性を演出するカラーリングを採用しています
そしてもうひとつ。SPならでは特徴が上質さでしょう。車体色には、ブルーイッシュホワイトメタリックと呼ばれるシルバーが設定され、燃料タンクの塗り分け、艶やかなスイングアーム、DLCコーティングとゴールドのアウターチューブで引き締められたフロントフォークなどによって、ヤマハのフラッグシップモデル「YZF-R1M」との親和性を演出。スタンダードモデルとは明らかに異なる、高い質感が与えられています。
ヤマハ「MT-09SP」シリーズ最新モデル(左からスタンダード、Y-AMT、SP)
走りよし、見た目よしのSPのパフォーマンスは、MT-09シリーズのトップグレードにふさわしいものであり、タウンユースからサーキットまで楽しめるモデルに仕上がっています。
MT-09 SPの車体価格(消費税10%込み)は、144万1000円。発売は、2024年7月から始まっています。
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