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東京工科大学の学生が作った「水素燃料電池の特定原付」!? 小型化が難しい技術を学生がどうやって実現したのか?

バイクのニュース / 2024年11月7日 8時10分

電動モビリティに造詣の深い近藤スパ太郎さんがジャパンモビリティショー2024で発見した東京工科大学の学生が作った「水素燃料電池の特定原付」について解説します。

■水素燃料電池って、小型化が難しい…と言われていたんじゃないの?

 こんにちは! 先進モビリティに興味津々の近藤スパ太郎です。 今年のジャパンモビリティショーは、スタートアップ企業が145社も出展していました。

「Chat Kart水素燃料電池改」の車両を製作した東京工科大学 陸海空ロボティクス(福島)研究室に在籍するお二人。向かって右が工学部4年生の菅原陸さん、左が同大学院工学研究科 博士課程2年の荒井大地さんです「Chat Kart水素燃料電池改」の車両を製作した東京工科大学 陸海空ロボティクス(福島)研究室に在籍するお二人。向かって右が工学部4年生の菅原陸さん、左が同大学院工学研究科 博士課程2年の荒井大地さんです

「なんだコレ?」とボクが注目したのは、電動モビリティブランド「エベサー」を展開するHundredths(株)のブース。水素燃料電池で発電しながら、小さな車両「Chat Kart水素燃料電池改」がフリーローダーの上を走っていたのです。 聞くと、ナント製作したのは東京工科大学の学生でした!

 燃料電池車とは、走行時にCO2を排出しないゼロエミッション車のひとつで、車両に搭載した燃料電池という発電機で発電し、電気で走る車両のこと。FCV(Fuel Cell Vehicle)と呼ばれています。

 発電には水素やメタノールなどを使用し、水素燃料電池は水素と酸素の化学反応によって発電し、排出されるのは水のみ。トヨタの「ミライ」など市販自動車はあるのですが、現在は水素ステーションの数が少なく、普及には至っていません。

そして、クルマに搭載する燃料電池は、「水冷式」の大型の物が一般的で、小型化は難しい…と言われていました。

スズキ「バーグマンフューエルセル」カットモデル(2013年6月撮影)。200ccのスクーターバーグマンがベース車両ですスズキ「バーグマンフューエルセル」カットモデル(2013年6月撮影)。200ccのスクーターバーグマンがベース車両です

ところが、スズキがバイクにも積める「小型で軽量な空冷式の燃料電池」を開発し、2017年には「バーグマン フューエルセル」18台にナンバーを取得して実証実験を行っていました。圧縮水素とインホイールモーターを使って、最高速度75km/h、航続距離は120km(時速60km定地走行/スズキ社内テスト値)を実現していますが、車両の発売はされていません。

スズキ「バーグマンフューエルセル」に搭載した空冷式の水素燃料電池ユニット(2016年5月撮影)スズキ「バーグマンフューエルセル」に搭載した空冷式の水素燃料電池ユニット(2016年5月撮影)

 スズキがイギリスのインテリジェントシナジー社と共同開発をし、車両のタンデムシート下側に搭載していました。小型化に成功したとは言え、燃料電池の大きさはこんなに大きいのです。

 それを学生が、こんな小さい車両に搭載している事に、「えっ、どうなってるの??」とボクは驚いたのです。

■これが特定原付「Chat Kart水素燃料電池改」 だ!

「Chat Kart水素燃料電池改」を製作した一人、4年生の菅原さんが解説してくれました。

 東京工科大学の学生が作った「Chat Kart水素燃料電池改」 東京工科大学の学生が作った「Chat Kart水素燃料電池改」

 ベース車両はエベサーの電動四輪車「Chat Kart(チャットカート)」。最高速20km/h、16歳以上は免許不要の特定小型原付(以下:特定原付)です。48V/20Ahのバッテリーが車両の底に搭載され、300Wのインホイールモーターをリヤタイヤ両輪に搭載して、計600Wの定格出力です。

「Chat Kart水素燃料電池改」のシートしたスペースには水素ボンベや燃料電池の発電ユニットを収納「Chat Kart水素燃料電池改」のシートしたスペースには水素ボンベや燃料電池の発電ユニットを収納

 この車両の特徴は、シート下に四角い広めの収納スペースがあり、ここに水素ボンベや燃料電池の発電ユニットを収めていました。

水素を吸収・放出する特性を持つ特殊な水素吸蔵合金が入っている水素吸蔵合金キャニスター。石川県のサイテム社製で200Lを充填できます水素を吸収・放出する特性を持つ特殊な水素吸蔵合金が入っている水素吸蔵合金キャニスター。石川県のサイテム社製で200Lを充填できます

 青いのが、中に水素を吸収・放出する特性を持つ特殊な水素吸蔵合金が入っている水素吸蔵合金キャニスター。水素を圧縮せずに、こんなに小さくても200Lを充填できます。石川県のサイテム社製です。

圧力レギュレーター(手前)と水素残量のメーター(奥)圧力レギュレーター(手前)と水素残量のメーター(奥)

 手前は圧力レギュレーター、奥のメーターで水素残量を確認します。水素ガス燃料ならではのパーツですね!

シルバーの箱が「空冷の燃料電池」。アメリカのホライゾン社製で発電量は100Wシルバーの箱が「空冷の燃料電池」。アメリカのホライゾン社製で発電量は100W

 えーーー! こんなに小さいの? と驚かされたのが、シルバーの箱「空冷の燃料電池」で、発電量も100Wと少ないアメリカのホライゾン社製です。

電力測定のデータ取得のための基盤電力測定のデータ取得のための基盤

 今後、電力測定まわりのデータを収取したいそうで、その基盤も搭載しています。

リヤバスケットに搭載されているのはアンカー製の発電機。バッテリーへは、従来の100V AC電源を使った充電と、燃料電池からの充電、両方が可能なハイブリッド仕様に仕上げられていますリヤバスケットに搭載されているのはアンカー製の発電機。バッテリーへは、従来の100V AC電源を使った充電と、燃料電池からの充電、両方が可能なハイブリッド仕様に仕上げられています

「Chat Kart」に標準装備されているリヤバスケットに搭載されているのは、アンカー製の発電機です。燃料電池が発電する電圧は20Vしかなく、電気を一度この発電機に貯めて60Vに昇圧させて車両の標準装備バッテリーに充電して、モーターを回していました。発電機がDCコンバーターの役目も兼ねています。

 つまり、「燃料電池で発電(直流)→アンカー発電機(直流→交流に変換&60Vに昇圧)→車体ACアダプター(交流→直流に変換)→本体バッテリーに充電→モーターを回す」という電気の流れです。

 車両に標準装備されたバッテリーへは、従来の100V AC電源を使った充電と、燃料電池からの充電、両方が可能なハイブリッド仕様に仕上げています。

机上での計算では、「燃料電池からの電力供給のみで、特定原付の最高速度20km/hで、航続距離10~15kmは走る」とのことです机上での計算では、「燃料電池からの電力供給のみで、特定原付の最高速度20km/hで、航続距離10~15kmは走る」とのことです

 実際に、インホイールモーターを搭載した後輪は、ずーーーっと回転していました。 まだ人が乗車して走らせてはいないものの、机上での計算では、「燃料電池からの電力供給のみで、特定原付の最高速度20km/hで、航続距離10~15kmは走る」そうです。

■そもそも、何で水素燃料電池車を作ろうと思ったのか?

 東京工科大学では水素を扱う授業の導入を検討中で、福島研究室(14名程が所属)が先行してトライアルを行うことになったそうです。

 今年の8月に「水素をやりたい人!」と募集があり、菅原さんと、荒井大地さんが手を挙げたそうです。

 とは言え、水素の知識や情報は全くなく、二人がリサーチを開始。定電圧で危険性が低く、取り扱い資格も必要ないのが、水素燃料電池と行きついたそうです。

 それにしても、約2カ月という短期間で、知識を深めてここまで完成させてしまった二人ですが、今後は「人を乗せてデータを取りたい」「市販の発電機ではなく、DCコンバーターや昇圧モジュールを自作したい」「車体のバッテリーが満杯になった場合に発電をどうするか?」などなど、今後実施したこと、未解決課題が沢山あるそうです。

 今後どんな風に車両が進化するのか、そしてどう完成するのか、ボクもとても楽しみです!

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