「新基準原付」 国交省と警察庁が同時発表 同じバイクで原付と自動二輪の区別をつける方法とは
バイクのニュース / 2024年11月17日 15時10分
「新基準原付」の規格が、ついに確定しました。車両規格も決まり、交通ルールにも位置付けられて、普通免許の付帯でも「原付」として運転することができます。排気量125cc以下のバイクの出力を落としただけで、どうやって仕様の違いを見分けることができるのでしょうか。
■技能試験のない「新基準原付」の運転は危険? 警察庁の回答は?
「新基準原付」の規格について、国土交通省と警察庁が同時発表(公布)しました。「新基準原付」とは排気量125cc以下のエンジンを搭載したバイクで、なおかつエンジンの最高出力を4kW以下に落とすことで、原付免許による運転を可能にしたバイクのことです。両省庁は、それぞれ施行日も確定しました。国交省は2024年11月13日に公布し、同日に施行。警察庁は国交省と同日に公布し、施行日を2025年4月1日に定めました。施行日の違いは、型式申請しやすい環境を整えた上で、商品が供給される段階で運転を可能にするためです。
国交省が「新基準原付」の車両規格を公表(同時発表:警察庁)
「新基準原付」の制度が登場する背景は、割安な移動手段の確保にありました。2025年に規制強化される排出ガス規制で50ccエンジンを搭載したバイクの新車が販売できなくなると、ユーザーの選択肢はエンジンバイクより約3割ほど割高な電動バイクしか選ぶことができません。「新基準原付」が可能になれば、現行の125cc以下のバイクの最高出力を落とすことで、環境規制に対応した新たな原付エンジンバイクを供給することが可能です。
ただ、ここで気になるのが、いわゆる原付2種として流通するバイクの最高出力を落として供給するバイクですから、全長や全高、シート高やホイールベースなど、車体は基本的に同じです。外観では見分けが付きません。こうした心配は、警察庁が改正に先立ち実施したパブリックコメントでも寄せられました。
警察庁には「現行の免許制度のまま運転できる体制を維持していくことは非常に重要で妥当かつ必要」という賛意が寄せられる一方で、次のような意見も寄せられています。
・技能試験のない原付免許で運転できるようにするのは危険ではないか
・総排気量125cc以下の全ての二輪車を原付免許で運転できるようになるという誤った解釈が広まらないよう周知する必要があるのではないか
・新基準原付と出力制限のない125ccの小型二輪車を外見上識別できることが必要ではないか
「新基準原付」の制度設計で、125ccの車体を採用することを最も心配していたのが警察庁でした。125ccの車体は、他の交通と同じ法定速度で走ることを前提としているため、どうしても車体が大きくなります。そのため有識者検討会を立ち上げ、市場投入されていないホンダ「PCX」をベースとした車両を「新基準原付」の規格で作り、バイクの運転経験のない人にも試走させて、原付免許で運転する安全性を確認し、改正に踏み切った経緯があります。
また、制度改正に伴う誤解が広がることは、施行の前に周知徹底することで対応すると、パブリックコメントの結果でも公表しています。
■外見上の識別、課税しか考えない総務省の対応に振り回される
国交省や警察庁の対応だけでは不十分なのが、外見上識別できるかどうかという国民の心配についてです。「新基準原付」を外見で見分けられる方法については、車両の規格を定めた国交省が、型式を認定する段階で、エンジンと車体の両方に最高出力を表示することを求めることを定めましたが、これだけでは公道走行中に見分けることはできません。
警察庁がパブリックコメント募集の結果を公表
警察庁は、寄せられたパブリックコメントに対する結論をこう記しています。
「ナンバープレートの区別をはじめ、外見上の識別措置についての検討を関係省庁と進めているほか、施行までに新基準原付について、分かりやすい広報啓発に努めていくこと等を踏まえ行うもの」
経済産業省、国交省、警察庁と合同で提出した税制改正要望では、「新基準原付」は原付なので、排気量の大きさに関係なく現行の排気量50cc原付と同じ課税とすることを求めています。
「新基準原付」には白地ナンバー、同じ車体でも125ccであればピンク地ナンバーにすることができれば、課税標識(ナンバープレート)で公道走行時にも見分けることが可能です。
しかし、総務省は軽自動車税の課税に関することは法改正が伴うことを判断したため、税制を検討する与党国会議員の判断が必要となり、さらに国会で法改正の議決が伴います。課税の方向性は、他の様々な税制改正に混じって議論されるので、「新基準原付」が導入される見通しがまったく立っていません。
車両規格や運転ルールが決まっても、まったく見通しが立っていないことが、実は最大の心配事かもしれません。
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