カワサキ「Z2」エンジン お気楽過ぎる「丸塗り」では後々後悔 可能な限り緻密なマスキングを目指す!! 〜日本の至宝「空冷4発」を未来へ継承〜Vol.23
バイクのニュース / 2024年11月22日 7時10分
メイド・イン・ジャパンのモーターサイクルを代表する一台として、誰もが認める存在と言えるのがカワサキZ1/Z2シリーズです。フルレストアに取り掛かり、薄汚なかったコンプリートエンジンは、完全分解しました。このタイミングで「機能ペイント」として知られるガンコートペイントをDIY作業で施すことにしましたが、せっかくペイントし直すのなら、可能な限りしっかり仕上げてみようと思いますが、果たして……
■純正ペイントと塗り直しは作業工程が異なります
メーカー出荷時に、ブラックアウト=黒塗りされているエンジンの多くは「完成部品」として仕上げられる以前の初期段階で、ペイント処理されているのが一般的です。
具体的には、アルミダイキャストで鋳型から抜き取られたエンジン部品には、プラモデルでいうところのランナーのような部品同士の連結部分(ダイキャスト鋳物の場合は、その接続部分が溶けたアルミ=湯の注ぎ口やエアー抜きを併用していることが多い)があります。
その連結部分を切り離し、大雑把なバレル研磨処理によって、鋳物のバリ(不要な部分)が取り除かれます。この状態で部品の切削加工は一切行われていません。
薄汚れていたブラックエンジンが蘇るだけでも、バイク全体の美しさは格段に良くなります。自分自身で行うフルレストアなのだから、可能な限り徹底的に美しく仕上げてあげたいものです
次に、鋳物部品は脱脂洗浄が行われ、エンジンならプリヒートによる乾燥後に、耐熱ペイントが施されます。
乾燥工程を経て塗りあがったエンジン部品は、機械加工による切削工程に入ります。国内仕様のZ2Eや初期型Z1Eのブラックエンジンは、このような作業工程でクランクケースやシリンダーやシリンダーヘッドが完成します。ペイント仕上げされた後に切削加工されているため、メーカーのエンジン製造工程では、マスキングなどの面倒な作業は行われません。
作業進行中の過程をリポート中のカワサキ750RS/Z2-A後期モデル。まさに仕上がった車両の姿がここにあります。威風堂々との表現が相応しい「4本マフラーが似合う美しいバイク」です。まさに日本の至宝と呼ぶことができる「機械遺産の1台」です
一方、今回のようなフルレストアの場合は、すでに「完成部品」になっているペイント済エンジン部品をサンドブラストで剥がし、アルミ地肌にしてからブラック仕上げするため、そもそもの作業工程が異なります。
要するに、面倒なマスキングを施しからペイントされている訳ではないのが、メーカー純正部品になります。
ペイント仕上げ後に、例えばシリンダーヘッドなら、基準面となるシリンダーヘッド面が切削加工されます。そこが決まれば、そこから先は図面寸法通りに数値が追いかけられ、スタッドボルト穴やプラグ穴などなど、次々と穴加工や面切削が進められていきます。
また、Z2E/Z1Eの初代空冷Zシリーズは、シリンダーヘッドやシリンダーの左右冷却フィン端面がアルミ地肌になっていますが、これもペイント後に冷却フィンのエッジを切削して、空冷フィンの存在感を演出=魅せるエンジンとなっています。
■ペイント作業よりも大変な下処理と脱脂洗浄
リペイント作業前には、サンドブラストによってアルミ地肌を露出した後に、純正仕上げに模したマスキングを施し、それから実際の塗り作業へ移行します。
今回のような後塗り補修で純正部品のような仕上がりにしたい場合は、徹底的なマスキング作業が必要になります。そこでフィン端面をサンディングブロック+耐水ペーパーであらかじめ磨き出し、マスキングしやすい処理を行いました
この下処理のサンドブラストも、マスキングもガンコートペイントもDIYで仕上げましたので、サンドブラスト後の部品洗浄には気を配らないといけません。
プロショップで行われる、より確実な脱脂洗浄方法としては、サンドブラスト後のエンジン部品は、純水と呼ばれる脱脂能力が高い水の中に浸され、超音波洗浄が施されます。単純なエアーブローだけでは落とし切れないサンドブラストメディアは、純水超音波洗浄によって、徹底的に除去されます。レストアのプロショップでは、このような段取りで作業が進められていきます。
シリンダーやシリンダーヘッドが入るようなバケツが手元に無かったので、ウエスや軍手を洗う2槽式洗濯機の洗濯層に水を溜めてママレモン作戦でゴシゴシやりました。投げ込みヒーターを洗濯槽へ差し込んで、お湯を使えるようになれば脱脂洗浄効果はさらに高まります
しかし、作業担当者であるぼくのガレージには、そのような機器がありませんので、ぼくの場合は、中性洗剤を入れた水道水の中でブラシを使って徹底的に洗浄し、洗浄後のエンジン部品はすべて「だるまストーブ」の上でしっかり温めて、乾燥させた後に徹底的なエアーブローを行います。
サンドブラスト後のアルミ部品は、水分を吸収しやすい傾向なので要注意です。ストーブの上である程度温まったら、ネジ山部分やオイル通路にエアーガンを差し込んで徹底的にエアーブローします
部品が熱くなるまで完全乾燥させた後に、圧縮空気でエアーブローすることで、サンドブラストメディアは除去しやすくなります。水分を吸収したメディアがオイル通路などに引っ掛かっていると、エアーブローでは除去し切れないことが多くあります。しかし、部品をしっかり温めて乾燥させることで、オイル通路内に残留した水分が乾燥し、残留メディアも吹き飛ばすことができます。それでもやっぱり、超音波洗浄機はぼくにとっても欲しい機器のひとつになります。
解説したやり方でマスキング作業は効率良く仕上げることができます。4ミニエンジンのペイントカスタマイズなどなど、機会があるときには是非、お試し下さい。レストア車を凝視すると、スタットボルトの座面やスパークプラグの座面まで塗ってしまっている丸塗り例が多いです
フルレストア済みとして販売されている車両の中には、面倒なマスキングを施さず、ペイントされている例も珍しくはありません。
工数=時間的な労力を考えれば、致し方ないことだと思います。そこまで求めるレストアには、相当な手間=工賃がかかることも覚悟しなくてはいけません。
しかし、DIYペイントなら、心配ご無用です。手間を惜しむことなく作業進行すれば、良い仕上がりになります。空冷Z系エンジンに限らず、マスキング&ペイントの機会があった時には、ここに紹介するような脱脂洗浄手順とマスキング作戦で、納得の仕上がりを追及していきたいものです。
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