足が長くてシートがもっと高い! BMW Motorrad「R 1300 GS・GSスポーツ」は不慣れなライダーでも楽しめる?
バイクのニュース / 2024年11月23日 11時10分
BMW Motorradが世界に誇るアドベンチャーモデルの最新バージョンが「R 1300 GS」シリーズです。水平対向2気筒のボクサーエンジンは排気量を1300ccまで拡大し、先代よりすべてが刷新されて日本では2023年末より発売されました。3つあるグレードの中から、オフロード性能に割り切った「GSスポーツ」に試乗しました。
■装備が異なる、3つのグレード
2023年末から発売が始まったBMW Motorradの「R 1300 GS」には、スタンダード(284万3000/286万6000円)、GSスポーツ(297万1000円)、ツーリング(317万9000/318万5000円・オプション719仕様は336万8000円)、という3種のグレードが存在します。当記事で紹介するのは「GSスポーツ」です(※価格表記はすべて消費税10%込み)。
BMW Motorrad「R 1300 GS・GSスポーツ」(2024年型)に試乗する筆者(中村友彦)
ここで他の2つのグレードとは異なる、「GSスポーツ」ならではの装備を以下に羅列します。
●ストロークが210/220mmの前後サスペンション(スタンダードとツーリングは190/200mm)
●オフロード指向のブロックパターンタイヤ
●グリップ位置を高くするハンドルライザー
●ショートタイプのブレーキ/クラッチレバー
●独立式のフロントウインカー(スタンダードとツーリングはハンドガードにビルトイン)
●ショートタイプのスクリーン
●エンデューロフットレスト
●エンジンプロテクションバー
●大型アンダーガード
●ラジエターコアガード
●リアフレームプロテクションカバー
改めて文字にするとかなりの数ですが、「ツーリング」が標準装備する電子デバイス、状況に応じて車高が自動で上下するアダプティブライドハイトコントロールや、前走車を自動で追尾するアクティブクルーズコントロール(ACC)、バンク角や速度に応じて照射範囲が変わるコーナリングライト、手元のスイッチで高さが調整できる電動スクリーンなどは採用していません。
言ってみれば「GSスポーツ」は、快適性や利便性をある程度切り捨てて、オフロード性能に特化したキャラクターなのです。スーパースポーツ的な表現をするなら、車名の末尾に「R」や「SP」を追加したモデルと言っていいでしょう。
ただし2025年型では、「GSスポーツ」の日本仕様は、アダプティブライドハイトコントロールを標準装備としています。また、2024年型のシート高は870mmですが、おそらく2025年型では850~870mmになるでしょう。なお、「スタンダード」のシート高は850mmで、「ツーリング」は830~850mmです。
■スパルタンでニッチな仕様?
今回の試乗は、10月5日・6日に長野県の志賀高原で開催された、「BMW Motorrad G/S DAY’S」(以下、G/Sデイズ)に体験取材とてして参加しながら……という形で行ないました。となると、メインはオフロード? と思う人がいるかもしれませんが、東京から現地の往復は自走しているので、舗装路の峠道や高速道路、市街地などもしっかり走っています。
BMW Motorrad「R 1300 GS・GSスポーツ」(2024年型)は、「スタンダード」や「ツーリング」のグレードとは装備内容が異なる
そして2日間に渡って「GSスポーツ」にじっくり乗り込んだ私(筆者:中村友彦)は、自分の技量と使い勝手に向いているのは、いろいろな面でフレンドリーな「ツーリング」?……と感じました。
いや、「GSスポーツ」のインプレでそんなことを言うのは我ながらどうかと思いますし、クラッチレバーとリアブレーキペダルの操作感や、重心が上ったことによる軽快なハンドリングには感心したのですが、残念ながら「GSスポーツ」の装備の多くは、オフロードの技量が万年初級から中級の私にとっては宝の持ち腐れだったのです。
と言っても、フラットツインGSを熟知したオフロードのエキスパートなら、豊富なストロークの前後サスペンションを有効に使って、「スタンダード」や「ツーリング」とは次元が異なる悪路走破性をしっかり満喫できるのでしょう。事実、G/Sデイズの参加者の中では、「GSスポーツ」ならではの走りを高く評価するライダーが少なくありませんでした。
でも私を含めた一般的な技量のライダーが、フラットツインGSでオフロードを楽しむなら、シートが低く、多種多様な電子デバイスを標準装備する「ツーリング」を購入して、ブロックパターンタイヤやエンデューロフットレスト、プロテクションバーなど、「GSスポーツ」のパーツのいくつかを後付けした方が良いような気がします。
もちろん、そのあたりの事情はメーカーも把握しているはずです。逆に言うなら把握しているにも関わらず、スパルタンでニッチな仕様を展開するあたりに、私は現在のBMWモトラッドの懐の広さと自信を感じました。
■シリーズ全車に共通する美点
さて、「GSスポーツ」の感想が意外にアッサリまとまってしまったので、ここからは他のグレードにも通じる話として、今回の試乗で印象的だったふたつの出来事をお伝えしたいと思います。まずひとつ目は、車両を先代の「R 1250 GS」から最新の「R 1300 GSツーリング」に変更して、5度目のG/Sデイズに参加した60歳のライダーが語ってくれた言葉です。
オフロードの技量が万年初級から中級の筆者(中村友彦)にとって、「GSスポーツ」ならではの装備は宝の持ち腐れだったが……
「昨年までと比べると、ものすごく楽になりました(笑)。実は昨年の時点で体力の衰えを如実に感じていて、もうフラットツインは厳しかなと思っていたんですが、軽くて小さくてフレンドリーなR 1300 GSなら、あと数年は行けそうです。個人的にビックリしたのはレインモードの出来の良さですね。GSでオフロードを走るときは、エンデューロかエンデューロプロモードを選ぶのが定番ですが、私の技量ならレインで十分。それどころか、レインの穏やかで優しい特性のおかげで、1度も転倒をすることなく、林道やゲレンデが楽しめたんだと思いますよ」
つまり「R 1300 GS」には、ライダー生命を伸ばす資質が備わっているわけです。そしてこのモデルの特性は、既存のフラットツインGSに手強さを感じていたライダー、小柄な人や女性にとっても歓迎したくなる要素でしょう。
続いてお伝えしたい2つ目の印象的な出来事は、ロングランにおけるフラットツインGSの尋常ではない疲労の少なさです。
長い時間と距離をじっくり乗ってみて、BMW Motorrad「R 1300 GS」でのロングラン性能は、想像をはるかに上回るレベルに達していたことに気付かされた
具体的な話をするなら、G/Sデイズに参加して朝から夕方まで、志賀高原近辺の林道とゲレンデを走り回ったにも関わらず、2日目が終わった時点で、私は自分の心身にまだまだ余裕があると感じていました。
そこで、帰路の途中までは峠道をメインに走ることにしたのです。まずは国道292号を上って標高2172mの渋峠を通過し、草津温泉に下りてみると、やっぱりまだまだ余裕でした。
ならばと考えた私は、大小のコーナーが連続する草津中之条線(県道55号)を走り、さらに県道28号を通って榛名山の山頂まで行ってみたのですが、依然として心身にツラさは感じていなかったのです。
榛名山の山頂に到着した時間は21時で、周囲には小雨がパラつき、翌日は早朝から仕事が入っていたため、以後の私は高速道路を使って帰路につくことしました。いずれにしても、2日間に渡って不慣れなオフロードを走り回ったにも関わらず、まだまだ行けるという気持ちが途切れなかったのは驚くべきことだと思います。
これまでの試乗仕事を通して、フラットツインGSの快適性や安定性を理解している……つもりでした。しかし、シリーズ最新作となる「R 1300 GS」でのロングラン性能は、私の想像をはるかに上回り、まさかここまで? と言いたくなるレベルに達していたのです。
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