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アグレッシブさマシマシ!! でも乗り味はフレンドリー KTM「390デューク」の意外な特性

バイクのニュース / 2024年11月30日 11時10分

KTMの主力ネイキッドモデル「DUKE(デューク)」シリーズは30周年を迎え、日本では普通2輪免許で乗れる最大排気量の400ccクラスに位置する「390 DUKE」が2024年モデルで刷新されました。どのような進化を遂げたのでしょうか。試乗しました。

■30周年を迎えた「デューク」シリーズ

 当ウェブサイトを含め、すでに多くの媒体が報じているように、KTMの「DUKE(デューク)」シリーズは2024年で30周年を迎えました。第1号車の1994年型「620デューク」が、「620エンデューロ」の基本設計を転用したスーパーモタード的なモデルで、一部の好事家のみが絶賛するやんちゃな特性だったことを考えると、多種多様な「デューク」シリーズが同社のオンロードバイクの主力になった近年の状況は、少なくとも私(筆者:中村友彦)にとっては隔世の感があります。

KTM「390 DUKE」(2024年型)に試乗する筆者(中村友彦)KTM「390 DUKE」(2024年型)に試乗する筆者(中村友彦)

 そんな「デューク」シリーズは、2024年型で大改革を敢行しました。旗艦の「1290スーパーデュークRエボ」は「1390スーパーデュークRエボ」に、ミドルレンジの上位モデルだった「890デューク」は「990デューク」に進化し、基本設計の多くを共有する兄弟車の「390/250/125デューク」は、数年ぶりのフルモデルチェンジを敢行したのです。

 ちなみに、2023年に登場した「1290スーパーデュークGT」と同年に復活した「790デューク」は、2024年型での仕様変更はありません。

 ここで紹介する「390デューク」は、排気量から推察すると、日本の普通2輪免許を意識している……かのように思えますが、KTMはそれ以上に東南アジア市場やヨーロッパのA2ライセンス(排気量制限無しで最高出力47.6ps以下)を重視しているはずです。

 とはいえ、日本では普通2輪免許で乗れるシリーズ最大排気量車として、2014年の初代デビュー以来、「390デューク」は幅広い層から支持を集めてきました。

■兄貴分に負けず劣らずの作り込み

 どこからどう見ても「デューク」、と言うか「スモールデューク」なのに、どこからどう見ても従来型とは別物。従来型を知るライダーが新世代の車体と対面したら、誰もがそう感じるでしょう。

KTM「390 DUKE」(2024年型)KTM「390 DUKE」(2024年型)

 その一番の原因は、KTMならではのアグレッシブさがマシマシになった外観ですが、スチール製トレリスフレーム+アルミ製オープンラティスという構造を維持しながら、剛性バランスを刷新したメインフレーム+スイングアーム、オーソドックスな形状からショートタイプに変更されたマフラー、最新型「RC 390」と共通のデザインを採用した5本スポークホイールも(従来型のスポークはY字5本)、別物感に寄与する要素です。

 もっとも、新世代スモールデュークの特徴はそれだけではありません。アルミ鋳造製シートレール(従来型はフレームと同様のスチール製トレリス)、車体中央から右に移設されたリアショック、表示内容を変更すると同時にスマホとのコネクト機能を追加したTFTメーター(ただし「250デューク」はLCD)なども、従来型とは異なる装備です。

 そして390に関しては、水冷単気筒エンジンの排気量を373.2から398.7ccに拡大したこと、3種のライディグモード(ストリート/レイン/トラック)やリアタイヤの滑りを抑制するトラクションコントロール、ゼロ発進時の最大加速を適正化するローンチコントロールなどを導入したことも、新世代ならではの特徴です。

 いずれにしても2024年型スモールデュークの概要を把握した私は、KTMのアンダー400ccクラスにかける意気込み、兄貴分の1390や990に負けず劣らずの気合いを感じました。

■予想外の進化を遂げたエンジン

 ワインディングロードでスポーツライディングをしたときの体感的な速さと高揚感は、従来型を明らかに上回っているのに、何だか妙にフレンドリーで乗りやすい……そう言えば、過去にどこかで同じ経験をしたような……。

アグレッシブな外観ではあるが、乗りやすくフレンドリーな仕上がりになっていたアグレッシブな外観ではあるが、乗りやすくフレンドリーな仕上がりになっていた

「390デューク」で走り始めて30分後、私の脳内に浮かんだモデルは、2022年に登場した「1290スーパーデュークRエボ」と、2020年型から発売が始まった「890デュークR」でした。改めて振り返ると、あの2台も先代を凌駕する抜群の動力性能を実現しながら、「エッ?」と感じるほど乗りやすかったのです。

 となると、おそらく近年の「デューク」シリーズは、モデルによって異なる要素がいろいろあるとしても、全車が共通の思想で開発されているのかもしれません。2024年から発売が始まった「1390スーパーデュークRエボ」と「990デューク」は未体験ですが……。

 ただし思想が共通でも、手法は同じではありません。具体的な話をするなら、「1290スーパーデュークRエボ」と「890デュークR」のフレンドリーさが、主に電子デバイスで実現していた(ように思えた)のに対して、390は排気量を拡大したエンジンや座面が10mm低くなったシート(830→820mm)、動きが上質になったWP製前後ショック、さらにはバネ下重量の軽減やマスの集中化など、物理的な変更で乗りやすさを生み出しているのです。

KTM「390 DUKE」(2024年型)KTM「390 DUKE」(2024年型)

 中でも、私が興味を惹かれたのはエンジンでした。前述したように、新世代の水冷単気筒は約25ccの排気量拡大を行なっているのですが、その手法はストロークアップで(89×60mm→89×64mm)、結果的に従来型と比べればロングストローク型になっています。だからこそ低中回転域が、扱いやすいと感じるのではないでしょうか。

 念のために、最高出力と最大トルクの数値を比較すると以下のようになります。

【従来型】
最高出力:44ps/9000rpm
最大トルク:37Nm/7000rpm

【新世代】
最高出力:45ps/8500rpm
最大トルク:39Nm/7000rpm

 これらの中で目を引きやすい数字は、44→45ps、37→39Nmですが、私は9000→8500rpmに下がった最高出力発生回転数に、新世代の水冷単気筒の素性が現れているような気がしました。

 近年の日本市場における排気量300~400ccのスポーツネイキッドの価格帯(消費税10%込み)は70万円前後が定番で、ヤマハ「MT-03」は68万7500円、カワサキ「Z400」は72万6000円、BMWモトラッド「G 310 R」は66万9000円~、ハーレーダビッドソン「X350」は69万9800円です。ちなみに当初は69万8000円だったトライアンフ「スピード400」は、現在は72万9000円です。

 そういった事情を考えると、78万9000円という新世代「390デューク」はやや強気な設定ですが、今の私はこのモデルに対して、ライバル勢+αの価値がある……と感じています。

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