バイクの電脳「ECU」は、やることがテンコ盛り!?
バイクのニュース / 2024年12月13日 11時10分
いまどきのバイクは電子制御が当たり前。その要となっているのが「ECU」で、言うなればバイクの「脳」です。無くてはならない存在ですが、どんな役目を担っているのでしょうか?
■点火制御から始まった、エンジン専用のコンピューター
現行バイクなら原付スクーターからスーパースポーツまで、搭載されているのが当たり前の「ECU」は、「Engine Control Unit(エンジンコントロールユニット)」の略称で、ザックリ言えば、エンジンを制御するための専用コンピューターです。
エンジンを制御する「ECU」。メーカーによって「ECM」など呼び名が異なる場合もある
ECUという名称が一般化したのは、多くのバイクでエンジンへの燃料供給がキャブレターから電子制御式燃料噴射(FI)に移行した1990年代後半~2000年代前半頃と思われます。しかし、ECUの前身はもう少し早く登場しており、最初はエンジンの“点火タイミング”を制御するパーツでした。
バイクのエンジン(内燃機関)は「吸気→圧縮→爆発(燃焼)→排気」の行程を繰り返して回転します。ガソリンと空気をキャブレターによって「混合ガス」を作り(かつてはキャブレター、現在はFI)、その混合ガスをエンジンが吸い込んで圧縮したタイミングで点火プラグに火花を飛ばして着火・爆発(燃焼)させていました。
ここで問題になるのが“点火のタイミング”です。たとえばエンジンを高回転でスムーズかつパワフルに回すには、シリンダーの中で混合ガスが燃え広がるスピードを考慮して、アイドリングのような低回転の時よりも、点火のタイミングを早める必要があります。
1970年代頃までは機械的に制御していましたが、1980年代頃には電気・電子的に点火タイミングを制御するようになりました……が、まだアナログの範疇でした。
そこで点火タイミングをエンジンの回転数とスロットルの開度や開ける速度に応じて緻密にコントロールするための「点火マップ」をプログラムして、デジタル制御したのが最初のECU的な装置です。
ホンダが1995年に発売した「CB400 SUPER FOUR」の「PGM-IG」の点火マップ
ちなみにホンダは「PGM-IG」(電子制御点火装置)という名称でしたが、他メーカーでは“マイコン方式”という懐かしい名称で呼ぶこともありました。
そして前述したように、2000年頃に燃料供給がキャブレターからFIに置き換わったことで、ECUは必須の装備になりました。
キャブレターは単体で物理現象によって混合ガスを作っていましたが、FIはスロットルの開度やエンジン回転数を元に作った「燃調マップ」のプラグラムに応じて、インジェクターがガソリンを噴射するからです。この時点でECUは、点火の制御と燃料噴射の制御の両方を行なうようになりました。
電子制御式燃料噴射(FI)の概念図。システムを稼働するためにECUが必須になった
2000年代の中頃には、パワーモードやライディングモードと呼ばれる、エンジンのパワーや特性を選べる電子デバイスが登場します。これはECU内に書き込まれた複数の燃調マップや点火マップを切り替えることで行なっていますが、コンピューターを用いたデジタル制御だからこそ可能と言えます。
さらには排気特性や騒音をコントロールする排気デバイス、クラッチやスロットルの操作なしでシフトアップできるクイックシフター、後輪の空転を検知してエンジンのトルクを調整するトラクションコントロールなども、ECUが受け持つようになりました。
そして2000年代後半には、スロットル操作を電子制御するライドバイワイヤ方式が登場したことで、いっそうエンジン制御が緻密になります。と同時に、シフトダウンにも対応する双方向クイックシフター(シフトダウン時に回転数を合わせるスロットルの空ブカシ=オートブリッパーを装備)など、さらにECUの仕事は増えていきます。
他にも、続々と増えてきたカラー液晶ディスプレイのメーター表示や、盗難抑止装置などもECUによってコントロールされています。
■互いが繋がっている、同じ名前(?)の重要パーツ
エンジン関連の制御や電子デバイスの進化はECU無くして語れませんが、じつは同じECUという略称ながら異なる制御コンピューターが存在し、こちらは「Electric Control Unit(エレクトリックコントロールユニット)」になります。
ABSは独自のECU(エレクトリックコントロールユニット)を装備する。イメージ図はホンダ「CBR600RR」
たとえば、ABS(アンチロックブレーキシステム)は独自のECUを装備しています。また電子制御式サスペンションも独自のECUによって作動します(SCU=サスペンションコントロールユニットと呼ぶ場合もアリ)。
そして略称が同じなので少々ややこしいですが、エンジン制御や各機器のすべてのECUは、「CAN(Controller Area Network)」と呼ばれる通信ネットワークで接続されていて、互いが検知したデータやその時のバイクの状態、ライダーの操作などの情報を共有することで、より緻密で自然な制御やアシストを行ってくれます。
というワケで、バイクのECU(エンジンコントロールユニット)は、点火制御や燃調制御のみを行っていた四半世紀ほど昔と比べると格段に仕事量が増えています。
またエンジンのみならず、ブレーキやサスペンションなどと連携しつつ1/1000秒単位でコントロールするために、内蔵するコンピューター(CPU)の処理速度の速さも重視されるようになっています。
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