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まるでキャブ車のような焙煎機とは⁉︎ バイク乗りのコーヒー屋デイドリップ通信VOL.13

バイクのニュース / 2024年12月14日 8時10分

バイク乗りのコーヒー店主、黒田悟志さんによる連載コラム。今回は焙煎機を取り巻く状況に見え隠れする、バイクとコーヒーの共通点についてお届けします。

■知られざる焙煎機の世界

 こんにちは!バイク好きのコーヒー屋、Day Drip Coffeeのクロダです。コーヒーとバイク。それぞれに奥深い世界観を持つ魅力的な存在ですね。このコラムでは、そんな二つの世界を行き来するうちに見えてくるトピックをお届けしています。

 今回はコーヒー豆の焙煎機について。コーヒー好きの人ならいろいろなドリップ器具を持っていることは珍しくありませんが、焙煎機まで持っているという人はそう多くはいませんよね。今回はそんな知られざる? 焙煎機の世界と、その背景もご紹介したいと思います。

筆者(黒田悟志)が使用する「直火(ちょっか)式」の焙煎機筆者(黒田悟志)が使用する「直火(ちょっか)式」の焙煎機

 皆さんが一般的に目にするコーヒー豆は茶褐色〜コゲ茶色をした、香ばしい香りがする状態のものですよね。あれは生豆を煎った(焼いた)もので、そのための機械を焙煎機と呼びます。自家焙煎珈琲店を利用する人なら、店のどこかにデーンと構えている機械を見かけたことがあるかもしれません。

 ところで生豆のことをコーヒー界隈では「きまめ」ではなく「なままめ」と読みます。僕は未だに言いにくくて、違和感を感じてしまいます。

 焙煎機って皆さんの普段の暮らしには登場しないので、これはあまり知られていないことですが、方式の違いがあり、熱風式・半熱風式・直火式の3タイプに分かれています。

 僕の中では熱風式と半熱風式は結構近しい関係に思うので、大きく分けて熱風&半熱風式 vs 直火式という2タイプで捉えています。コーヒー界隈で直火式は「じかび」ではなく「ちょっか」と読みます。

■焙煎機の種類「熱風式・半熱風式・直火式」の違いは?

 熱風式はバーナーで起こした熱い風を、回転ドラムに送り込んで焙煎する方式です。コインランドリーのドラム式乾燥機のようなイメージでしょうか。

 熱風は豆全体に均一に熱が加わるので、焙煎のコントロールがしやすいです。温度管理・数値管理もしやすく、データプロファイルの蓄積とその再現性も高いので、誰でも(と言ったら言い過ぎですが)焙煎を習得しやすい方式です。大量焙煎にも向いているので、皆さんが口にする大手メーカーのコーヒーは、大半が熱風式で焙煎したコーヒーです。

 半熱風式はバーナーが回転ドラムの下に設置されていて、熱風を作るのと同時に回転ドラム自体も熱します。生豆はその二つのカロリーを得て焙煎されるので、味わいは熱風式より少し力強さが加わります。と言っても熱風式・半熱風式ともに、柔らかくマイルドな味わいが特徴。それは昨今、流行りの浅煎りの焙煎にも向いていて、コントロールのしやすさも手伝って、街なかの自家焙煎店では熱風式・半熱風式が非常に多く使われています。

 直火式は回転ドラムにパンチングの穴があいていて、その真下からバーナーで熱を加える方式です。炎の熱が直接的に豆の表面に伝わるので「直火」なのですね。鋭い熱エネルギーが加わるので、輪郭のしっかりした味わいが特徴です。

筆者(黒田悟志)が使用する「直火(ちょっか)式」の焙煎機。構造的にどうしても焼きムラが起こりやすいため、均一に焙煎するには経験値が必要になります筆者(黒田悟志)が使用する「直火(ちょっか)式」の焙煎機。構造的にどうしても焼きムラが起こりやすいため、均一に焙煎するには経験値が必要になります

 豆の個性も強く表現され、深煎りにした時のコクと苦味は直火式の得意技と言えます。でもある理由で、直火式は少数派の焙煎機です。ちなみに僕の店の焙煎機は直火式です。

 それは焙煎をマスターするのがちょっと難しいことです。焙煎時に周辺温度の影響を受けやすく、気温が急に下がったりすると、前日までと同じ火力では上手く焼けません。同じ焙煎機でもその設置状況、例えば排気管の長さが違うだけでプロファイルは変わります。

 構造的にどうしても焼きムラが起こりやすく、均一でキレイな焙煎にはコツが入ります。これら全ては数値化しにくい要素であり、その分「カン」を養う必要があるのです。

筆者(黒田悟志)が使用する「直火(ちょっか)式」の焙煎機。構造的にどうしても焼きムラが起こりやすいため、均一に焙煎するには経験値が必要になります筆者(黒田悟志)が使用する「直火(ちょっか)式」の焙煎機。構造的にどうしても焼きムラが起こりやすいため、均一に焙煎するには経験値が必要になります

 ではカンを養うにはどうするのか。それは千本ノックのように淡々と経験を積んでいく、その一言に尽きます。僕が焙煎を学んでいた当時、師匠から言われたのは「豆に訊け」でした。

 豆を見て、香りを嗅ぎ、音を聞いて、豆の状態を把握して焙煎する、という意味です。今やそんな遠回りで、職人芸みたいなキャリアの積み方は流行りません。

 そもそも現在コーヒー業界を牽引しているスペシャルティコーヒーと呼ばれる世界では、酸味を表現するための浅煎りが主流なので、苦味系が得意な直火式が時代の流れから外れていくのは、仕方のないことかもしれません。

現在の筆者(黒田悟志)の愛車、ヤマハ「XSR155」現在の筆者(黒田悟志)の愛車、ヤマハ「XSR155」

 焙煎機を取り巻くそんな事情のせいか、いつも「僕の焙煎機はまるで2ストのキャブ車のようだな」と感じます。効率や環境問題、操作性の良さなどで、現代のバイクは2ストから4ストへ、キャブレターではなくフューエル・インジェクションと進化しました。

 でも寒い冬には程良くチョークを引いたり、キックを失敗しようものならプラグが被って途方に暮れ、標高の高い高原では空気の薄さでパワーが出ない……なんていう「愛すべき面倒臭さ」がありました。

 そんな風に「バイクと自分がいる今この瞬間の状況」に合わせて、ヤンチャな相棒をなだめつつ乗りこなす感じを、自分の焙煎機にも感じています。実際面倒でやんちゃな奴だけど、僕の良き相棒です。ドンピシャで合った時には最高のフィーリング! さて今日も上手に乗りこなせるかな?

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