1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ

エンジンコンディションは吸排気バルブ周りが大きく影響

バイクのニュース / 2024年12月20日 7時10分

メイド・イン・ジャパンのモーターサイクルを代表する一台として、誰もが認める存在と言えるのがカワサキ「Z1・Z2」シリーズです。エンジンのガンコートペイント施工はすでにリポートしていますが、エンジン腰上の内燃機加工は、エンジンペイント前に済ませておきました。ここでは、吸排気バルブガイドの入れ換え時には必須作業となる、吸排気バルブのシートカットと擦り合わせ&点検をリポートします。

■分解時には「使われていたタペットシム」の厚さ管理が重要

 エンジンペイント前に行ったカワサキ「Z2」の内燃機加工。今回は吸排気バルブ周りの作業についてです。

 まずは、温めて膨張させたシリンダーヘッドから、旧バルブガイドを抜き取り、新しいバルブガイドを専用ドライバーツールで圧入したら、シリンダーヘッドが冷えるのを待ちます。

時系列的には、エンジンペイントの実践前に作業依頼していたのが内燃機加工です。シリンダーヘッドは、旧排気バルブガイドの入れ替えと、吸排気バルブのフェース加工、シートカット&擦り合わせになります。まずはシリンダーヘッドの内燃機加工から開始です時系列的には、エンジンペイントの実践前に作業依頼していたのが内燃機加工です。シリンダーヘッドは、旧排気バルブガイドの入れ替えと、吸排気バルブのフェース加工、シートカット&擦り合わせになります。まずはシリンダーヘッドの内燃機加工から開始です

 ヘッド本体が冷えることで、バルブガイドが締め付けられ、ガイドの交換作業は完了になります。その後、バルブステム径と同サイズのストレートリーマを準備し、圧入した吸排気バルブガイド内径を仕上げます。

iB井上ボーリングでは、今も昔もカワサキの空冷4気筒と旧いハーレーはシリンダーヘッドの修理依頼が数多いそうです。四輪エンジンよりも二輪エンジンの内燃機加工依頼が圧倒多数です。バルブガイドのセンターリング後にシートカット段取り中iB井上ボーリングでは、今も昔もカワサキの空冷4気筒と旧いハーレーはシリンダーヘッドの修理依頼が数多いそうです。四輪エンジンよりも二輪エンジンの内燃機加工依頼が圧倒多数です。バルブガイドのセンターリング後にシートカット段取り中

 このバルブガイドの交換と同時に実施しなくてはいけないのが、吸排気バルブとバルブシートの当たり(密着度)を高めるシートカットになります。

 バルブガイド交換によって、バルブテスム軸に対してバルブガイドのセンターが微妙にズレてしまうため、それを補正しながら、バルブシートとの当たり幅を規定寸法に仕上げるのがシートカット作業になります。

フェース研磨後の吸排気バルブに測定治具を当てて、バルブシートの当たり位置を決定します。その治具で得たデータから、シートカッターのセッティングを行ないます。高性能な機械でも「操る人」次第で、仕上がり精度が大きく左右されてしまいますフェース研磨後の吸排気バルブに測定治具を当てて、バルブシートの当たり位置を決定します。その治具で得たデータから、シートカッターのセッティングを行ないます。高性能な機械でも「操る人」次第で、仕上がり精度が大きく左右されてしまいます

 吸排気バルブ側の当たり面であるバルブフェースが荒れていると、シートとの当たりが悪くなり、圧縮漏れの原因にもなります。今回は、念のためにバルブフェース加工も依頼しました。今回のように、中古バルブを再利用する際には、バルブの当たりが良くないことが多いため、それを見越して吸排気バルブともにフェース加工(当たり面の精密研磨)をお願いしました。

 バルブシートの摩耗量が多いと、シートカット量が必然的に多くなってしまいます。さらにバルブフェース加工を施すと、仕上げのシートカット段階で、吸排気バルブの傘が、燃焼室側へ潜ってしまいます。バルブシートカットやバルブフェース加工を施す際には、すべての加工前に、各バルブステムの突き出し量を厳密に測定します。

 内燃機ショップ加工依頼するときには、加工前バルブステムの突き出し量と、加工後の突き出し量を一致させてもらうように依頼します。作業後に突き出し量に違いがあると、タペットシムが大きく狂ってしまう可能性もあるからです。ステムエンド部分の精密研磨によって、帳尻合わせをすることもできるのです。

 このような寸法合わせを行うことで、後々の組み立て時に、タペットシムの調整が楽になります。具体例としては、バルブが潜ってしまうことで、極端に薄いタペットシムを使わないといけない場面があります。しかし、ステムエンドの研磨量には限度があるため、シートカット依頼の際には、パーツコンディションを確認し、総合的な判断が必要になることも忘れてはいけません。

 困った時やわからない時には、内燃機加工のプロショップに事前相談するのが良いと思います。カワサキZ1やZ2エンジンに限らず、シム交換でタペット調整するすべてのモデルに共通した要綱とも言えますので、この段取りは知っておくと良いです。

 ちなみにレーシングエンジンでは、シートカット量が増えそうな場合は、シートリングの入れ換えでバルブの突き出し量を管理するケースが多いそうです。

■負圧状況を作り出し旧排気バルブの密閉度を測定

 内燃機加工を依頼した埼玉県川越市のiB井上ボーリングでは、精密機器として知られ、信頼性が高いスイスのミラ社製シートカッターを利用しています。作業前にバルブステムの突き出し量が測定され、吸排気バルブの当たり位置に合わせてからシートカットを行います。

すべてのバルブシートカットを終えたら、バルブの擦り合わせを行なった後に、光明丹と呼ばれる橙色の確認剤を使い、当たり具合を目視確認します。きっちり当たっている様子が確認いただけると思います。今回、指定した当たり幅は吸排気ともに1.0mmですすべてのバルブシートカットを終えたら、バルブの擦り合わせを行なった後に、光明丹と呼ばれる橙色の確認剤を使い、当たり具合を目視確認します。きっちり当たっている様子が確認いただけると思います。今回、指定した当たり幅は吸排気ともに1.0mmです

 シートの当たりには「位置」と「幅」があります。チューニングエンジンでは、燃料冷却のある吸入バルブは当たり位置を「外当たり」で依頼し、高温になる排気熱にさらされる排気バルブは、フェース面のほぼ中央に指定する例が多いようです。

 外当たりにすることでビッグバルブ効果を得られ、高温の燃焼ガスにさらされる排気バルブは、当たり位置を中央付近にすることで、バルブ本体への熱の伝導効率を高める効果が得られます。エンジンチューナーの考え方によって、このあたりの見解は異なることもありますが、今回は街乗り車なので、吸排気バルブともに、当たり位置は標準の中央寄りに、当たり幅は1.0mmで依頼しました。この当たり幅に関しても、様々な考え方がありますが、幅が広ければ接触面積が増えるため、熱伝導性が高まると言われています。

吸排気バルブの擦り合わせ&当たり確認を終えたら、それぞれのバルブをセットした状態で、負圧テスターを利用して各バルブの密着度を確認します。吸気ポートの端部平面や排気ポートのガスケット面に測定機器を押し付けて作業進行します吸排気バルブの擦り合わせ&当たり確認を終えたら、それぞれのバルブをセットした状態で、負圧テスターを利用して各バルブの密着度を確認します。吸気ポートの端部平面や排気ポートのガスケット面に測定機器を押し付けて作業進行します

 シートカット後には、当たり位置と幅の確認を行いますが、その前にバルブフェース研磨機で、バルブ傘の当たり面=バルブフェースを整えます。エアー式バルブラッパーと呼ばれるツールを使って、バルブシートとバルブフェースはバルブコンパウンドを使って整えます。最後に、光明丹を利用して、摺り合わせ状態を手作業で確認します。吸排気バルブともに、当たり位置は中央付近かつ、当たり幅は1.0mmに仕上げて頂きました。

 最後に負圧計を利用し、吸排気バルブをセットした状態の各ポート端面に計器の測定部を押し当てます。バルブシートの当たりが悪く僅かでも隙間があると、計器の針は規定エリアまで上昇せず、圧縮漏れを招くコンディションになります。エンジン部品の加工段階で、組み立て時を意識した作業進行にすることで、後々、トラブル無くスムーズなエンジン組み立てが可能になります。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください