エンジン始動上手なやり方は!? キックスタートのメリットとデメリットとは?
バイクのニュース / 2024年12月23日 12時10分
今ではセルスターターのバイクが主流となりましたが、昔は「キックスタート」対応のバイクが多く販売されていました。今でも根強い人気を誇るキックスタートのバイクには、どのようなメリットデメリットがあるのでしょうか。
■デメリットも許せてしまうキックスタートバイクならではの魅力がある
バイクのエンジンを始動させるには動力が必要です。セルスターターの場合、バッテリーの電気の力でモーターを回転させ、その動力でエンジンを始動させる一方で、人がキックペダルを踏み込む力を利用してエンジンを始動させるのが「キックスタート」です。
人がキックペダルを踏み込む力を利用してエンジンを始動させるのが「キックスタート」
キックスタートの一般的な手順は、以下の通りです。
まず、キーをOFFの状態でキックペダルを踏み込みます。すると、ある個所から固くて踏み下ろせなくなります。これは、シリンダー内の圧縮空気が大きな抵抗となっているためなので、シリンダーから圧縮空気を抜く必要があります。
このシリンダー内の圧縮空気を抜くことを「デコンプレッション(減圧)」と言い、この作業をおこなうため、400ccクラス以上のバイクには「デコンプレバー」が備わっていました。また、これらを自動的におこなう「オートデコンプ」が搭載されているモデルもあります。
そしてデコンプレバーを引いた状態でキックペダルを踏み込んでいき、ピストンをもっとも高い位置「圧縮上死点」まで持っていきます。この状態からでないと、エンジンはかかりにくいためです。SRの場合は、上死点を確認できるキックインジケーターが付いています。
ピストンが上死点まできたらデコンプレバーを離し、キーをONにします。そしてキックペダルを踏み込みやすい高さに戻し、思い切り踏み込むとエンジンがかかります。
夜にインジケーターが見えない場合や、そもそもインジケーターがないバイクもありますが、その場合は感覚やコツを掴んでいくしかありません。
上死点はキックペダルをゆっくり踏み込み、もっとも重くなるポイントを探し、そこからさらにゆっくりと踏み込んでいき今度は軽くなるポイントを探す
キックペダルをゆっくり踏み込み、もっとも重くなるポイントを探し、そこからさらにゆっくりと踏み込んでいき今度は軽くなるポイントを探します。その軽くなる少し手間が上死点です。
このように、セルボタンひとつで、エンジンを始動できるセルスターターのバイクとは異なり、キックスターターのバイクは手間が多く、慣れやコツ、感覚などを要します。
そのため、キックスタートでエンジンを始動させることは、「バイクを目覚めさせる儀式のよう」、「自分がエンジンの一部になったみたい」と喜びを感じる人が多く、一度キックスターターのバイクの魅力にハマってしまうと、抜け出せないというライダーも少なりありません。また、目にする人も「いかにも玄人っぽくてかっこいい」、「憧れる」と捉える人が多いようです。
かつてはヤマハの「SR400」やホンダ「CB400SS」、カワサキの「W650」など、キックスタートのバイクが多くラインナップしていました。しかし、現在それらはすべて中古でしか購入することはできません。
かつてはキックスタートを採用しているバイクが多くラインナップしていた
それもそのはず、現在は技術革新によりモーターやバッテリーが軽量・小型化して性能も向上したため、セルスターターのバイクが主流になりました。それと比例してキックスターターのバイクの多くは姿を消してしまったのです。
しかし、それでもなお、多くの根強いファンを持つのがキックスターターのバイクです。ではキックスターターのバイクには、どのようなメリットがあるのでしょうか。
まず、エンジンを始動させる際に電気を使わない、または少量の電気しか使わないというメリットが挙げられます。万が一バッテリーが上がってしまいセルスターターではエンジンがかからなくなってしまった場合でも、キックスターターがあればエンジンを始動することができます。
ちなみに、前述の通り減ってしまったキックスタートのバイクではありますが、完全になくなったわけではありません。
スクーターなどには、現在でもキックスターターが採用されているモデルがある
スクーターやカブシリーズ、そして一部のオフロードバイクや、クラシック系のバイクでクラシックな要素としてキックスターターを装備している一部のモデルでは、現在でもキックスターターが装備されています。
しかしそれらのモデルでも、この「電気を必要としない」というメリットに着目し、非常用として補助的に装備されているという場合がほとんどです。
しかしキックスタートの1番のデメリットとして、手間がかかりやすいという点があります。手順通りにおこなっても、中々エンジンがかからないということもしばしば。小排気量の小型バイクであれば容易にかかりますが、ビッグボアを持つ圧縮比の高いエンジンほど重労働かつエンジンをかけるのは難しくなります。また、交差点内でエンストしてしまうこともあるため操作に慣れていない人にとっては厄介な点と言えるでしょう。
また、キックペダルが逆に跳ね返り、怪我をする恐れがある点もデメリットとしてあげられます。これは“ケッチン”と呼ばれるもので、キックペダルの踏み込みが弱い場合、燃焼が不完全となりクランクが逆回転してキックペダルが押し返されることで起こる現象です。大排気量のバイクになるほど、“ケッチン”の威力も凄まじくスネやヒザを強打して骨折することもあります。
※ ※ ※
以上を踏まえると、どうしても手間や労力を必要とするキックスタートを所有するのは、簡単なことではないように感じてしまうかもしれません。
しかし、キックスタートバイクからしか得られない楽しさや喜び、愛着があります。気になる人はキックスタートバイクも選択肢のひとつとして考えてみるのもよいでしょう。
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