ひと際輝く「プロトタイプ」エンブレムのレプリカ!! “60周年アニバーサリーモデル”を目指したカスタムワールド
バイクのニュース / 2024年12月27日 7時10分
モーターショーの舞台はスポットライトで輝いていました。メタルフレークゴールドの参考出品スーパーカブ=生誕60周年+シリーズ累計1億台突破記念モデルは、観るものに強烈なインパクトを与えました。ところが、発売された記念モデルは、郵政バイクと同じ赤色モデルでした。それならイメチェンに挑戦してみよう!! と考えたのがオーナーさんでした。
■あくまで参考出品車なのがプロトタイプモデル
モーターショーで発表される「参考出品車」と呼ばれるモデルには、大きくわけて3タイプあると言われています。
メーカーとしての方向性や考え方を実車両として製作イメージしたプロトタイプモデル、将来的に市販を予定している試作車をそのまま展示発表した参考出品モデル、そして将来的な市販予定車両を、暫定仕様でショーに展示し、会場での評判や評価を取りまとめたうえで、新たに細部仕様を検討し直し市販化される参考出品モデルなどなど、大きく分けると、その3つの方向性があるようです。
観るものを引き寄せるオーラがあるメタルフレークゴールド仕様のプロトタイプ車を目指したカスタムマシン。アニバーサリーの限定車が、まさか普段よく見る郵便バイクと同じ雰囲気で発売されるとは思わなかった製作者の木村さん
例えば、過去のモーターショーを振り返ると、水冷2ストロークのモトクロッサーエンジンを、アルミフレームのロードバイクに搭載した、極めて尖ったスーパースポーツモデルの参考出品車もありました。それはまさしく「バブル時代」真っ只中に企画されたプロトタイプモデルでした。
また「エコな時代」と呼ばれる頃になると、家庭用の簡易型ガスコンロ用ボンベをカートリッジタンクの如くバイクへ差し込み、プロパンガス燃料で走るプロトタイプモデルも登場しました。
さらには、過去にヒットセールスを記録した歴代市販モデルのデザインイメージに、水冷並列6気筒エンジンを搭載したプロトタイプモデルもありました。バイクファン好きからは注目され、話題にもなりましたが、当時の世の中的には「まさか今の時代に6気筒は発売されないよね~」との推測が先行し、市販化に対する期待感はほぼ無いプロトタイプモデルでもありました。
現代でも、そのような参考出品モデルは登場しています。90年代にカスタムモンキーで話題になり市販化された「電動タービン」を搭載したターボチャージャーモデルがありました。そんな仕様車をバイクメーカーが提案するのだから、性能的な期待値は高いと思います、という、カスタムマシン的発想の延長線上にあるとしか思えないとのお話しもあります。一方で、今の時代に軽二輪枠の250ccエンジンで、4気筒エンジンモデルは「出ないでしょう!?」といった印象を、大きく覆したカワサキ「Ninja ZX-25R」もあります。
それらのモデルと比べれば、信ぴょう性があり、誰もが発売されるだろうと考えたのが、2017年のモーターショーで参考出品された、スーパーカブ110ベースの「生誕60周年+シリーズ累計1億台突破記念モデル」の参考出品車でした。
ところが、市販車として発表されたモデルは、凝ったカラーリングでインパクトが大きかったメタルフレークゴールドではなく、日頃から働くバイクとして見掛けることが多い、郵便配達仕様車と似た赤色ボディのスーパーカブでした。
ショー会場で見たことで大きなインパクトを受け、数日後には、そのスーパーカブを目当てに、もう一度見ておきたいとショー会場に脚を運んだファンもいました。このスーパーカブ生誕60周年+シリーズ累計1億台突破記念のプロトタイプレプリカの製作者であり、ペイント工房「GEMZ KOLOR」を主宰する、マシンオーナーでもある木村さんが、まさにそんなひとりでした。
■単なるカラーリング変更だけでは決まらない……
スーパーカブ生誕60周年+シリーズ累計1億台突破記念モデルが納車された当日から、プロトタイプレブリカの製作に取り掛かったのがマシンオーナーの木村さんでした。
東京モーターショー会場に展示されたゴールド仕様の60thアニバーサリー&累計1億台突破記念の参考出品車。このモデルだけを目当てに、数日後にもう一度、モーターショー会場に脚を運び、各部をじっくり見たそうです
カラーリングだけでは納得できないので、ショー発表モデルと同様に、赤色表皮のサドルシートへと張り替え作業をプロショップへ依頼しました。
徐々に仕上がっていく中で、どうしても譲れないと思えたのが「フロントエンブレム」でした。初代スーパーカブC100では、ホーンのカバーとしてアルミ製鋳物部品が取り付けられていましたが、新型スーパーカブでは、ホーンカバーをイメージしたエンブレムになっています。
純正エンブレムをベースに、切り抜いてプラ板で加工した鋳型用のマスターは、複数の砂型作りでカタチを失いました。溶けたアルミ(湯)を流し込み、砂型鋳造されたのがこのエンブレムベースです。まだ在庫がありますが、はめ込むエンブレムは売り切れのようです
ショー発表のプロトタイプ車のフロントエンブレムには「60」の数字を盛り込んだ、記念モデル専用のエンブレムが採用されていました。そのイメージを再現したく検討した結果、アルミ鋳物製カバーにサイドカバー用エンブレムを組み合わせた、オリジナル部品にする案が浮上したのです。
バイク仲間の知り合いに、装飾金属部品を作っている鋳物職人さんがいることを知ったので、相談したそうです。すると「砂型作り用のマスター型を作ってくだされば……」との返事を頂くことができました。
スーパーカブ生誕60周年限定モデルには、専用のサイドカバーエンブレムが取り付けられていました。このエンブレムは左右共通ではなく、進行方向に対してまっすぐになるように、エンブレムには傾斜がありました。何故か左側の方が違和感なく組み合わさったそうです
そこで、スーパーカブ110純正のフロントエンブレムをくりぬき、プラ板を加工接着してパテを盛り付け、仕上げにメッキ調ペイントを吹き付けたマスター型をDIY製作しました。この自作のマスター型と組み合わせたのが、サイドカバーエンブレムでした。
このサイドカバーエンブレムは、左右それぞれ違った専用部品で、組み合わせた時の完成イメージが左右で異なって見えたそうです。イメージ的に良かった左側エンブレムを利用して、ポリッシュ仕上げしたアルミ鋳物製ベース部分と組み合わせることで、プロトタイプ風のフロントエンブレムを完成させることができました。
プロトタイプ仕様のカスタム車が完成した直後に参加したカフェカブミーティング青山で、人気投票で第1位を獲得した木村さんのマシン。限定モデル中の限定モデルといった雰囲気を醸し出す素晴らしい仕上がりは、数多くのエントラントに認められた証でもあります
フロントエンブレムを含め、組み立て完成したプロトタイプ仕様のカスタム車で、カフェカブミーティング青山の会場に乗り付けたそうです。すると、イベント関係者が展示してあるカスタム車を見て「あれ!? 誰がモーターショー展示車を持ってきたの!?」といったヒソヒソ話が始まったそうです。
展示車の近所にいたマシンオーナーさんは、そんなヒソヒソ話に対して「プロトタイプを模したカスタム車ですよ!!」とお話しすると、関係者から「間違えるほど似ていますね!!」とのお言葉を頂き、それだけでオーナーさんは大満足のミーティング参加だったそうです。
その後、人気投票の発表で第1位となり「数多くのスーパーカブファンのみなさんに認められて、もの凄く嬉しいです!!」と、表彰式でコメントしたのがマシンオーナーさんでした。
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