2025年 激変する“原付界隈”をホンダ企業広報が回答
バイクのニュース / 2025年1月6日 12時10分
2025年秋の排出ガス規制強化の影響を受け、原付バイクを巡る環境が大きく変わろうとしています。税制改正の成立を待つばかりとなった新基準原付と電動化。ホンダの電動化主流であるバッテリー交換方式のラインナップは広がるのでしょうか。ホンダ企業広報課が話します。
■新基準原付を「スーパーカブ」とスクーターで対応
環境規制の強化で、2025年秋から販売ができなくなる50ccエンジンのバイクにかわって、「新基準原付」は生活の足である小型コミューターを守るための規制改革として実現しました。排気量125cc以下のエンジンの最高出力を4kWに抑えることで、排気量が大きくても50ccバイクと同等にみなす規格です。
排気量125ccクラスのエンジンを搭載するホンダ「スーパーカブC125」(2024年型)。価格(消費税10%込み)は45万1000円。新基準原付に対応させると販売価格はいくらになるのか?
道路交通法、道路運送車両法、地方税法など複数の法令の見直しが必要で、2025年になった今でも軽自動車税の手続き改定のため地方税法改正案の国会での成立を待っている段階です。
軽自動車税の取り扱いの方針が定まったことをきっかけに、新基準原付と電動化の展開を世界のバイクメーカーであるホンダに取材。企業広報課から回答を得ることができました(文書による回答です)。
――新基準原付の市場投入の戦略、とりわけプライシング(価格設定)について。
「スーパーカブ、スクーターを新基準原付に対応させる予定ですが、具体的な将来のラインナップ、プライシングについては、現時点ではお答えてきません」(Honda企業広報課)
新基準原付の第1号モデルは気になるところですが、それ以上に気になるのが、価格設定の戦略についてです。
物流の一翼を担う原付クラスの販売は、特に車両価格が重視されています。バイクの車両価格は、排気量に比例して上昇するのが基本でした。
新基準原付は、より大きな排気量の車両を50ccクラスに合わせるため、そのコストが上乗せされる一方、原付を購入するというイメージから期待される車両価格より大きく外れると、原付に代わるコミューターとしての価値が失われることになります。
原付市場全体を占うポイントになるのですが、言及はありませんでした。
新基準原付のベースとなる車両が国内販売されている場合、価格差がユーザーの想定を上回ると、新基準原付市場の成長は見込めませんが、仮にベース車を下回る価格で販売されることになれば、これまでとは違う新たな新基準原付ユーザーの拡大が見込めます。
さらに、電動化モデルを加えると、2025年の“原付界隈”は、今までになく真新しいラインナップの市場が出来上がることになります。
■バッテリー交換方式と、インドの市場をはじめとする電動化
新基準原付と共に、2025年はバイクの電動化に弾みが付くことも考えられます。新基準原付車格になじむことのできない買替え需要や、ガソリン価格の高騰、ガソリンスタンドの減少による電動への切替が増えることが考えられるからです。
ホンダの電動スクーター「EM1 e:」(原付1種)は、動力用電源に「Honda Mobile Power Pack e:」を1個搭載
ホンダは2019年から、バッテリー交換方式で電動化を切り拓くことを宣言しています。日本がバッテリー交換方式の先進国となるための方程式について、同課は次のように話しました。
「交換式が拡がるポイントは、二輪車を代表する交換式電池を使うアプリケーションが、様々な領域で充実することと、充電を含め、電池そのものを安心して使いやすくすることと考えている。
Hondaは、二輪車に留まらず交換式電池を使う完成機の拡大を進めておりその他産業機器などのモビリティ以外の製品でもHonda Mobile Power Pack e:の活用を広めている。アプリケーションが増えれば、利用者が増加し、社会での交換式のメリットが認知される」
ホンダは交換式バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:」(以下、MPP)を使った電動バイクのモデルを、郵便バイクを含めたすべてのビジネスバイクで用意。個人向けバイクでも50ccクラスとなる「EM1 e:」を販売しています。
2024年、ホンダとヤマハはMPP方式のバイクについても国内での協業を発表し、ヤマハブランドの電動バイクに搭載が決まっています。
インドネシアで発表された電動二輪パーソナルコミューター「CUV e:」は、「Honda Mobile Power Pack e:」を2個使用
さらに、ホンダは交換式バッテリー方式の電動バイクを、インドネシアとインドにも展開することを発表しました。「CUV e:」と「ACTIVA e:」の2モデルで、国内の「EM1 e:」がMPP1個に対して、こちらは各2個を搭載します。
ほかにも、固定式バッテリーを搭載した電動車も発表し、ホンダは2024年を、アジア各国で電動バイク市場へ進出する“電動バイク元年”と位置付けています。
インド市場では三輪タクシー「リキシャ」の動力源として採用を先行させて、バッテリー交換方式の浸透を図ってきました。バッテリーシェアリングスキームの提供会社を設立し、バイクでも利用できるようにバッテリー交換ステーションを整備し、ホンダブランドの浸透を図ってきた経緯もあります。
こうした世界での電動化の波は、国内での電動バイクの購入コストを押し下げ、さらに加速させることにつながるのでしょうか。
「電動化の展開は各国の状況・背景により異なるため、国内への影響については一概にお答えすることはできない。今後の国内の社会情勢や法規、お客様のニーズを捉えながら海外メーカーも含め切磋琢磨しつつ、お客様に喜んでいただける商品をお届けしたい」(前同)
さらに、こう話します。
「国内二輪市場でHondaは生活に密着したコミューター領域から電動化を進めていくことに変わりなく、ビジネスとパーソナルの両面から普及に向けた取り組みを着実に進めていく。海外銘柄の電動二輪については、品質も価格競争力も高まっており、Hondaとしては、ICE車両でこれまで培ってきたお客様との信頼関係や販売・メンテナンス網を強みに拡販に努めていく」
二輪事業でも電動化を推進、「2030年までに、グローバルで電動モデルを30機種投入」を実行する三部敏宏社長(撮影=中島みなみ)
インド市場では、交換式バッテリー方式の先行者である台湾メーカー「Gogoro(ゴゴロ)」が進出し、インド国内での新興メーカーとも競争が激化しています。
2024年はほぼ無風状態だった国内。2025年、原付バイクの新車を買うなら、新基準原付バイク? それとも電動バイク?
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