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カワサキ「Z2」オーバーサイズピストンでシリンダーもリフレッシュ 〜日本の至宝「空冷4発」を未来へ継承〜Vol.28

バイクのニュース / 2025年1月10日 7時10分

メイド・イン・ジャパンのモーターサイクルを代表する一台として、誰もが認める存在と言えるのがカワサキ「Z1/Z2」シリーズです。エンジンのオーバーホール時に欠かせないのが内燃機加工ですが、シリンダーヘッドのリフレッシュを終えたので、ここでは、次の工程として行ったシリンダーのボーリングとホーニングの様子をリポート致します。

■段取り変更無く4気筒シリンダーのボアを仕上げる重要性

単気筒エンジンのシリンダーは1箇所のボアを仕上げるため、現状シリンダーのセンターを拾って、正しい真直度でオーバーサイズにボーリングします。

 一方、一体型マルチエンジン用シリンダーの場合は、シリンダーボアを仕上げる作業と同時に、各気筒間の位置関係を厳密に管理しなくてはいけません。

1975年型カワサキ750RS/Z2-A後期モデルのフルレストアを実践。1973年発売の初代モデルからシリーズ最終モデルのZ750Four/D1まで、車両型式はZ2F、エンジン型式はZ2Eで共通です。下処理・リペイントにより、エンジン打刻が目視可能に1975年型カワサキ750RS/Z2-A後期モデルのフルレストアを実践。1973年発売の初代モデルからシリーズ最終モデルのZ750Four/D1まで、車両型式はZ2F、エンジン型式はZ2Eで共通です。下処理・リペイントにより、エンジン打刻が目視可能に

 旧式ボーリングマシンの多くは、ひとつのシリンダーを仕上げるための機器が多く、仮に、4気筒エンジンの場合は、シリンダーの固定段取りを変更しながら、4か所のシリンダーを加工する作業になります。

 iB井上ボーリングが行うシリンダーボーリングは、単気筒エンジンでも4気筒エンジンでも、縦型NCフライス盤を利用しているのが特徴で、シリンダーブロックをベッドの上へ固定したら、その状態で各シリンダー孔の位置関係を測定します。

内燃機加工を依頼したiB井上ボーリングには様々な自動加工機器が導入され精密な内燃機部品加工に対応。過去には二輪四輪メーカーへ同社が製作したエンジン部品を納品していた時代もありました。ここではピストンのボアサイズに合わせてシリンダー内径の拡大加工を実施内燃機加工を依頼したiB井上ボーリングには様々な自動加工機器が導入され精密な内燃機部品加工に対応。過去には二輪四輪メーカーへ同社が製作したエンジン部品を納品していた時代もありました。ここではピストンのボアサイズに合わせてシリンダー内径の拡大加工を実施

 つまり、現状ボアの中心を拾ってオーバーサイズにボーリングするのではなく、4つのシリンダーの中心が「一直線上に並ぶ」ように、精密なボーリング加工が可能になります。量産メーカー向けに純正部品や試作部品の製作納品を長年担当してきた井上ボーリングならではです。

 ここでフルレストア中のカワサキZ2用シリンダーは、Z1用スリーブへの入れ換えと、オーバーサイズピストンに合わせたボーリング&ホーニング(もちろんプラトーホーニング)を依頼しました。

 現在では、アルミスリーブ内壁に特殊めっき処理を施したICBMシリンダーを利用した「モダナイズ」が普及しています。圧倒的な放熱性、圧倒的な耐摩耗性、そして、鋳鉄シリンダーと比べて摺動滑性が高まるので、ピストンリングやピストンスカートの摩耗対策になり、長期間に渡り性能維持が可能な内燃機加工技術になります。

■潤滑性能が高く安定したプラトーホーニング技術

 NCマシンによって高精度なボーリング加工を終えたシリンダーは、潤滑性能が高いことでも知られるプラトーホーニングで仕上げていただきました。

 プラトーとは「高原」を意味します。標高が高い山岳地帯の中にある「平野」のようなエリアを高原と呼びます。プラトーホーニングとは、まさにそのような仕上げを目指したポ―ニング技術になります。

ボーリング後のホーニング工程では複数の砥石が使い分けられ作業が進みます。平面仕上げの中に、ところどころ深い溝があるホーニング仕上げを「プラトーホーニング」と呼びますが、iB井上ボーリングではこの仕上げを標準化していますボーリング後のホーニング工程では複数の砥石が使い分けられ作業が進みます。平面仕上げの中に、ところどころ深い溝があるホーニング仕上げを「プラトーホーニング」と呼びますが、iB井上ボーリングではこの仕上げを標準化しています

 最初に粗めのホーニング砥石でボーリング直後のボアを仕上げます。目視で粗さ加減はわかりにくいですが、粗めのホーニング砥石で仕上げることで、特有のクロスハッチが通常以上に深い溝となって仕上がります。そのギザギザ壁面に対して、指定通りのピストンクリアランスを狙って仕上げ用のホーニング砥石で加工すると、ギザギザの先端が研磨されて平面になります。

 この平面を高原=プラトーに置き換えたのが、プラトーホーニングになります。粗めのホーニング砥石で仕上げた深い溝が、ところどころに残っているので、その溝がオイル溜まりの役割を果たします。そんな状況から、ピストン運動時のピストンスカートは、広い平面と深いオイル溝の上を摺動することになり、高い潤滑性能を期待できます。シリンダーとピストンの摺動に関して「ナラシ運転不要」とも言われる技術がプラトーポニングでもあります。

最終工程で行われるのが平面研磨になります。長年に渡る部品の締め付けや暖機と冷却の繰り返しによって、シリンダーヘッド面やシリンダー面は部分的に歪んでしまうことがあります。そんな歪みは平面研磨機で仕上げることができます最終工程で行われるのが平面研磨になります。長年に渡る部品の締め付けや暖機と冷却の繰り返しによって、シリンダーヘッド面やシリンダー面は部分的に歪んでしまうことがあります。そんな歪みは平面研磨機で仕上げることができます

 プラトーポニングを終えると、最後の仕上げ加工がシリンダー面の平面研磨になります。iB井上ボーリングでは、円筒研磨機を利用した平面研磨を行っています。

 フェイスカッターを使った切削研磨とは異なり、精密な砥石研磨を行うと、加工面にツールの痕が残らない仕上がりになります。1/100ミリ単位で平面研磨できますので、長年に渡る締め付けなどで歪んでしまった部分も、完全なるフラット面に再現できます。

 このZ2シリンダーは、15/1000ミリ程度の研磨で、フラットなシリンダー面を作ることができました。シリンダー面やシリンダーヘッド面の歪みが、オイル漏れやオイル滲みの原因になっているケースが多いので、そんな状況の改善にはうってつけの研磨加工になります。

撮影協力/iB井上ボーリング

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