今は空しく、松籟のみが昔の悲劇を物語る「小谷城」を歩く
バイクのニュース / 2025年1月19日 11時10分
滋賀県長浜市、琵琶湖の北東に位置する小谷山に、自然の地形を利用して築かれた「小谷城(おだにじょう)」の遺構が多数発掘されています。1573年の「姉川の戦い」に敗れたことで落城し、浅井長政(あざいながまさ)の最期の地として知られる山城をバイクで訪れました。
■山全体におよぶ遺構の数々、壮大な連続曲輪を歩く
滋賀県長浜市、琵琶湖の北東に位置する小谷山に、自然の地形を利用して築かれた「小谷城(おだにじょう)」の遺構が多数発掘されています。1573年の「姉川の戦い」に敗れたことで落城し、浅井長政(あざいながまさ)の最期の地として知られる山城をバイクで訪れました。
「小谷城跡」の「番所跡」には駐車スペースもあり、バイクを置いてここから徒歩で本丸を目指した。絵図の解説板とバイクを撮影し、駐車スペースへ移動した
現地を散策すると、山の麓に設置された木製の解説板に手書きで記された一節が印象的でした。「……今は空しく、松籟(しょうらい)のみが昔の悲劇を物語っている。」とあり、長政とその妻「お市の方(おいちのかた)」が死別した悲劇の場所を強調するような書き方でした。
「松籟」とは、松の梢(こずえ)が風に揺れて聞こえる音を指す言葉です。
「姉川の戦い」で浅井・朝倉軍が織田・徳川軍に敗れて落城し、長政は父、久政(ひさまさ)と共に自害します。長政とお市の方には3人の娘がいましたが、お市の方共々生き延びます。
長女「茶々(ちゃちゃ)」は後に秀吉の側室となり、淀殿(よどどの)として嫡男秀頼(ひでより)と共に「大阪城」で最期を迎え、次女「初(はつ)」は後に京極忠高の正室に、三女「江(ごう)」は徳川秀忠と婚姻、大河ドラマの主人公にもなっています。
そんな悲劇がどうしてもつきまとう地ではありますが、最近は城跡考古学者の千田嘉博さんなどの研究によって、巨大な城の凄さと脆さが解説され、現代人はもう少し冷静に「小谷城」のことを知ることができるのかもしれません。
千田さんが詳しく言及していますが、琵琶湖の北部に構える「小谷城」は、浅井氏が街道や琵琶湖の水運を把握していたことが考えられています。
浅井氏は織田信長にとっては味方にするべき戦国大名であり、信長の妹のお市の方を長政に嫁がせたのも戦略上によるものです。
本丸の北には巨大な堀切が残されている。長い山城を分断させる防御の機能はまた、浅井父子共々自害に追い込むことにもつながったのだろうか
しかし1570年、信長は浅井と組んでいた朝倉義景(あさくらよしかげ)を攻撃しました。理由は、将軍足利義昭(あしかがよしあき)の命令による上洛を無視し、拒否したことにあります。
そして「姉川の戦い」が勃発し、浅井・朝倉連合は撃破されます。後に義景は自害し、朝倉家は滅亡。翌1571年、長政は「佐和山城」を信長に奪われ、連携していた比叡山も焼き討ちされてしまいます。
「小谷城」に籠る浅井父子を、信長、そして羽柴秀吉(はしばひでよし)が攻め、1573年には完全に孤立しました。
城は南北800mにもわたり連なった曲輪が特徴で、この構造に対して正攻法で攻めると味方の被害も甚大になると判断した秀吉は、急斜面を登り、城の中央から横に攻めることで長政と父の久政を分断したのです。
散策では深い堀切(ほりきり:尾根を寸断することで敵の侵入を阻む防御)を見ることができますが、これが逆に仇となり、長政は父の救出に行けなかったと言われています。
結局、父子とも自害に追い込まれてしまいましたが、前述の通り、お市の方と3人の姫は命を奪われることはなく、娘たちはその後、歴史的に大きな役割を果たすことになる、と千田さんは言及しています。
この深い歴史を刻んだ山城をじっくりと探索したかったのですが、山のあちらこちらに「クマ出没注意!」の看板が見られ、正直、生きた心地がせず、足早に見て回るしかありませんでした。
山城散策では熊鈴やホーン、スプレーなど、自分の身を守る装備も大切だと改めて思いました。
各所に設置された解説板は図解もあってイメージしやすいものです。
世に知られた、戦に敗れた城の代表格でもある「小谷城」には、またいつか訪れてみたいと思いながらバイクへ戻りました。
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