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どっちが偉い? バイアスタイヤとラジアルタイヤ

バイクのニュース / 2025年1月21日 11時10分

バイクのタイヤは、大別すると「バイアスタイヤ」と「ラジアルタイヤ」の2種類があります。いわゆる“ハイグリップタイヤ”の多くはラジアルタイヤで価格も高く、なんとなく高性能では……という気がしますが、実際はどうなのでしょうか?

■高速化とコーナリング性能の要求から生まれた「ラジアルタイヤ」

 いまどきのオンロードバイクは、排気量が大きくスポーツ性の高いモデルは総じてラジアルタイヤを履いています。反対に小排気量車やスクーターはほとんどがバイアスタイヤなので、なんとなくラジアルタイヤの方が高性能な感じがします。とはいえオフロード用のタイヤは、じつは本格的なレース用でもバイアスタイヤが主流なので、ラジアルの方が偉いというワケではありません。

あなたの愛車はラジアルタイヤ? それともバイアスタイヤ?あなたの愛車はラジアルタイヤ? それともバイアスタイヤ?

 タイヤは一見するとゴムの塊、と言うかゴムの輪に見えますが、内部は何層もの構造になっています。そしてバイアスタイヤとラジアルタイヤは、その内部構造が異なっており、そこにはスポーツバイクの進化が大きく影響しています。

 まず20世紀初頭に、バイク用の空気入りタイヤが登場してから1980年代初頭までは、バイアス構造のタイヤしか存在しませんでした。1970年代まではスポークホイール用のチューブタイヤで、その後に登場するキャストホイールに対応したチューブレスタイヤも、すべてバイアス構造です。

 タイヤの中身は、チューブタイヤの場合はもっとも内側に空気を閉じ込めるチューブが入り、チューブレスタイヤの場合は気密性の高いインナーライナーと呼ぶフィルムが貼られています(これはバイアスもラジアルも同じ)。

 その次に、バイアスタイヤの場合はナイロンなどの繊維にゴムを敷いた布地のような「カーカス」を、繊維の方向をタイヤの回転方向に対して「斜め(バイアス)」にして2枚以上(偶数枚)重ねて貼っています。さらにその上に、外から見えるトレッドのゴムが貼られています。

 そしてバイクの重量やパワーなどの負荷に対して強度を出すには、カーカスの枚数を増やすことで対応していました。

 ところが、1960年代頃からとくにロードスポーツモデルの大排気量・大パワー化が進み、最高速度が200km/hに達するようになります。

 すると高速時にはタイヤが高速回転することで強い遠心力が発生し、タイヤが膨らむ方向に変形してしまいますが、これはカーカスの枚数を増やしても改善しません。そこで考案されたのが、2層以上のカーカスの上に繊維素材で作った「ベルト」を巻くことで、遠心力による膨らみ抑える「ベルテッドバイアス構造」です。

国産バイクで初めてラジアルタイヤを標準装備したヤマハ「XJ750DII」(1983年)国産バイクで初めてラジアルタイヤを標準装備したヤマハ「XJ750DII」(1983年)

 このベルテッドバイアス構造によって、強度的にも遠心力にも対応可能……と思われましたが、ロードスポーツ車の進化は止まりません。

 1970~80年代初頭にかけて、さらに大排気量・大パワーによるハイスピード化が進みました。また、それまでのビッグバイクは“真っ直ぐ・速く”が基本でしたが、1980年代に入ると大排気量車もコーナリング性能の高さを要求されるようになってきます。

 ベルテッドバイアス構造でカーカスの枚数を増やせば、強度や直線でのハイスピードには対応できますが、タイヤが重く硬くなるためコーナリング時のグリップ力を発揮できません。

 そこで、1980年代初頭に登場したのが「ラジアルタイヤ」です。

 ラジアルタイヤは高速時の遠心力に対する膨らみはベルトで対応しますが、車体を傾けたコーナリング時にはラジアル方向に1層だけ貼った柔軟性の高いカーカスが変形することで高いグリップ力や旋回力を生み出します。従来のバイアスとはとはまったく設計思想が異なる構造です。

 ちなみに、国産バイクで初めてラジアルタイヤを標準装備したのは、ヤマハが1983年に発売した「XJ750DII」です。

 しかしラジアルタイヤは一気に広まらず、実際には1986年頃から徐々にスーパースポーツ系(当時はレーサーレプリカと呼んだ)が採用していきました。当時は後輪がラジアルで前輪がバイアスという車種も多く、前後輪ラジアル装備は1980年代後半からになります。

 そして1990年代に入って大排気量スーパースポーツやビッグネイキッドなどが本格化したことで、ラジアルタイヤが広く普及しました。

■バイアスとラジアルの“使い分け”

 ラジアルタイヤがバイクの高速化やコーナリング性能の向上に対応して登場したと聞くと、やはり「ラジアルの方が高性能……」と感じますが、バイアスとラジアルは双方にメリット・デメリットがあり、それは装着するバイクの種類や使い方によって変わります。

ホンダ「CRF1100Lアフリカツイン<s>」は、後輪がラジアルタイヤで前輪はバイアスタイヤ。ちなみに前輪が19インチの「CRF1100LアフリカツインAdventure Sports ES」は、前後輪ともラジアルタイヤが標準装備となるホンダ「CRF1100Lアフリカツイン<s>」は、後輪がラジアルタイヤで前輪はバイアスタイヤ。ちなみに前輪が19インチの「CRF1100LアフリカツインAdventure Sports ES」は、前後輪ともラジアルタイヤが標準装備となる

 まず市販車のロードスポーツ車だと、排気量ではおおむね250ccクラスが標準装備でのバイアス装着とラジアル装着の境目になり、125cc以下ならほとんどがバイアスです(日本は125ccは高速道路を走れないので遠心力の心配は不要)。

 たとえば、ヤマハの「YZF-R25」はバイアスで、「YZF-R3」はラジアルを装備しており、これはパワーと最高速を考慮した結果でしょう。

 また、ホンダの「CBR250RR」はラジアルで、「レブル250」はバイアスですが、レブルをベースとする「CL250」はラジアルタイヤを装備しています。3機種とも250ccクラスですが、これはスポーツ度や使い方での区別だと思われます。

 ちなみに、「レブルは250」と「レブル500」はバイアスですが、「レブル1100」はベルテッドバイアスが標準装備です。

 また前述したように、モトクロスやエンデューロなど本格的なオフロードレースに使うタイヤは、前後輪ともバイアスタイヤです。これは大ジャンプからの着地など大きな衝撃に耐えるのにバイアス構造が有効なのと、200km/hを超えるような高速性能や舗装路でのコーナリング性能を必要としないためでしょう。

 しかし一般道を走る市販の大型アドベンチャー系の中には、後輪はラジアルタイヤで前輪がバイアスタイヤというモデルも存在します。

■世界的には、「バイアスタイヤ」の重要が圧倒的に高い

 じつは、ラジアルタイヤはバイアスタイヤより製造の難易度が高く、生産設備や管理などに手間がかかるため、バイアスよりも約2倍ほども生産コストがかかります。また厳密な生産管理が必要なため、ラジアルタイヤを生産できない国もあるくらいです。

バイアスタイヤの構造。繊維の方向がタイヤの回転方向に対して「斜め(バイアス)」に貼ったカーカスを互い違いに偶数枚重ねている。イメージ図では2枚だが、強度を増すために4枚張っている場合もある。その上に、路面に接するトレッドゴムが貼られているバイアスタイヤの構造。繊維の方向がタイヤの回転方向に対して「斜め(バイアス)」に貼ったカーカスを互い違いに偶数枚重ねている。イメージ図では2枚だが、強度を増すために4枚張っている場合もある。その上に、路面に接するトレッドゴムが貼られている

 また世界的にバイクという乗りものを見ると、250ccを超えるロードスポーツ車より、小排気量のスクーターや実用車の方が圧倒的に多く、それらのバイクは大抵がバイアスタイヤを装備しています。それは高速性能やコーナリング性能よりも、タイヤの価格の安さが優先される場合があり、ましてラジアルタイヤを生産できない国では言わずもがなです。

 その意味では、バイアスタイヤの方がコストパフォーマンスに優れる、と言えるかもしれません。

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