旧車好きも納得の性能? モトグッツィ「V7ストーンコルサ」にも感じる昔ながらの資質
バイクのニュース / 2025年1月26日 11時10分
現存するイタリア最古のバイクブランド「MOTO GUZZI(モトグッツィ)」がラインナップする「V7 Stone Corsa」は、既存モデル「V7 Stone」をベースにビキニカウルやシングル風のシートなどを装備し、ツートンカラーの外装などでスポーティなルックスが特徴の派生モデルです。その乗り味はどうなのか、試乗しました。
■「欧州御三家」のネオクラシック
1970年生まれの私(筆者:中村友彦)がバイクに目覚めた1980年代中盤は、BMWモトラッド、モトグッツィ、ドゥカティが「欧州御三家」、ヨーロッパの主要2輪メーカーと呼ばれていました。あの時代から約40年が経過した現在、そういう言葉を聞く機会は皆無になりましたが、1990年代以降に成長・復活を遂げた他の欧州勢とは異なる姿勢で、その3メーカーが空(油)冷ツインのネオクラシックモデルを生産していることは、なかなか興味深い事実だと思います。
モトグッツィ「V7 Stone Corsa」に試乗する筆者(中村友彦)
もっとも、モトグッツィのネオクラシックモデルに対する取り組み方は、他2社とは異なっています。
BMWモトラッドの「R nineT」シリーズと、ドゥカティの「スクランブラー」シリーズが、ダイヤモンドタイプのフレームや倒立式フォーク、リアのモノショック、太めのラジアルタイヤなど、現代的な構成を基盤にするのに対して、モトグッツィの「V7」シリーズはダブルクレードルフレームや正立式フォーク、リアのツインショック、細身のバイアスタイヤなど、昔ながらの構成を維持しているのです。
ただし、モトグッツィが他2社よりネオクラシックモデルに強いこだわりを持っているのかと言うと、必ずしもそうではないでしょう。
そもそもの話をするなら、近年の「V7」シリーズの原点として2008年に登場した「V7クラシック」は、コスプレモデル……は言い過ぎにしても、既存の「ブレヴァ750」の主要部品を数多く転用していたのですから。
逆に考えると、「ブレヴァ750」は2000年代の基準ではシャシーもエンジンも旧態然としていたのですが、モトグッツィがネオクラシックモデルを新規製作するうえで、そういった構成は実に都合が良かったわけです。
■世代を重ねるごとに、洗練が進んでいる
さて、何だか微妙な話から始めてしまいましたが、2008年型「V7クラシック」で明確な手応えを掴んだモトグッツィは、以後は現代の技術を導入した進化型として、2015年に「V7II」、2017年に「V7III」、そして2021年からは排気量を744ccから853ccに拡大した第4世代を発売します。
モトグッツィ「V7 Stone Corsa」(2024年国内導入)。アクセサリーのシングルシートカバー装着車
すでに10年以上の歴史を誇る「V7」シリーズは、当初は良い意味でも悪い意味でも旧車的な資質を備えていたのですが、「V7II」以降はどんどん洗練が進み、第4世代では悪い意味で旧車的な資質を感じることはほぼ皆無になりました。
つまり、車名の英数字や基本的な構成が変わっていなくても、2008年型と最新の「V7」は別物なのです。
なお「V7」シリーズの主力機種が、スポークホイールの「クラシック」とキャストホイールを履く「ストーン」の2台態勢になったのは第4世代からで、「V7III」以前はその2台に加えて、セパレートハンドル&バックステップを装備する「レーサー」が存在しました。
また、少量生産の特別仕様が多いことも「V7」シリーズの特徴で、これまでに「ストーネロ」や「レコードリミテッド」、「アニベルサリオ」、「ラフ」、「ミラノ」、「カーボン」など、多くの派生機種が登場しています。
当記事で紹介する「V7ストーンコルサ」もそんな特別仕様のひとつで、専用設計の装備としてビキニカウルやバーエンドミラー、シングルスタイルのシート(試乗車は純正アクセサリーのシートカバーを装着)などを採用しています。
開発ベースの「V7ストーン」+14万3000円となる、151万1000円の価格(消費税10%込み)をどう感じるかは人それぞれですが、高級感に寄与するツートンのボディカラーを採用していることを考えると(V7ストーンのスタンダードモデルは単色が基本)、個人的には妥当ではないかと思います。
■モトグッツィならでは、縦置きVツインの魅力
いわゆるガチの旧車マニアが、近年になって登場したネオクラシックモデルを購入対象として考えるケースは滅多にありません。例えば、OHV2バルブのBMWボクサーツインや、ベベル系と呼ばれた時代のドゥカティのLツインなど、すでに古いバイクを愛用しているライダーにとって、現行モデルは関心を抱きづらいようです。
排気量853ccの空冷縦置き90度V型2気筒OHV2バルブエンジンをダブルクレードルフレームに搭載
とはいえ、昔から旧車が大好きで、ここ最近は1974年型のモトグッツィ「V850GT」をメインの愛車としている私は、近年の「V7」シリーズに乗るといつも、これだったら乗り換え、あるいは増車してもいいかも……? と感じるのです。
その背景には、定期的に発生する旧車特有のトラブルにちょっと疲れている、という事情がなくはないのですが、それ以上に重要なことは、どんどん洗練が進んでかつてとは別物になっても、モトグッツィ製縦置きVツインならではの魅力がきっちり維持されていることでしょう。
具体的な話をするなら、低中回転域で心身に伝わる穏やかな鼓動や高回転域で徐々に収斂していく振動、大径フライホイールを主因とする抜群の直進安定性、見た目を裏切る軽快なハンドリングなど、私が昔から感じているモトグッツィの美点は相変わらずなのです。
ちなみに、一般的な横置きクランク/チェーンドライブ車とは異なる、縦置きクランク/シャフトドライブ車特有の挙動も相変わらずですが、現代の「V7」シリーズの場合、その挙動は悪癖とは呼ばれず、愛嬌と捉える人が多いようです。
フロントフェアリング(ビキニカウル)やシングル風のシートなどによって、往年のレーシングスタイルを演出。ヘッドライトやウインカーなど灯火類はすべてLED
そんなわけで、「V7」シリーズにかなりの好感を抱いている私ですが、気になる点が無いわけではありません。
マフラーの左右幅とリアタイヤの太さ(V7IIIまでが130mmだったのに対して、第4世代は150mm)にはそこはかとない違和感を覚えますし、ハンドルはもっと絞り角が欲しいような気がします。
また、今回試乗した車両に関しては、せっかくビキニカウルとシングルスタイルのシートを装着するなら、セパレートハンドルとバックステップも追加して外装部品をレッドで塗装して、1970~1980年代の「ル・マン」シリーズの再来、という雰囲気で仕上げても良かったのではないか、と思います。
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