バイクのエンジンだけじゃない⁉︎ 高回転型と低回転型はコーヒーの世界にも! バイク乗りのコーヒー屋デイドリップ通信VOL.16
バイクのニュース / 2025年1月25日 8時10分
バイク乗りのコーヒー店主、黒田悟志さんによる連載コラム。今回はバイクのエンジンと電動コーヒーミルにおける高回転型・低回転型についてお届けします。
■そもそも高回転型と低回転型って何?
こんにちは!バイクを楽しむコーヒー屋、Day Drip Coffeeのクロダです。バイクとコーヒー、それぞれに奥深い世界観を持つ魅力的な存在ですね。そんな二つの世界を行き来して気付くトピックや出来事を、このコラムでお届けしていきたいと思います。
と言うことで、今回はバイクとコーヒーの世界にある「高回転型と低回転型」について取り上げたいと思います。
まずはバイクの高回転型と低回転型について。言わずと知れたエンジン特性についてのお話です。バイクのニュース読者の方には「何をいまさら」な話かもしれませんね。でも最近僕の店の常連さんにもこのコラムを読んでくださる人が増えていまして。そんなコーヒー界隈の読者の方にも、バイクの面白さをお伝え出来たらと思うので、おさらいがてらお付き合い願いたく。
バイクのエンジンは、アクセルを開けるほどエンジンの回転数が上がり、パワーがモリモリ出てきます。でもパワーのピークはエンジンによって異なり、低い回転数で最大になるものもあれば、高い回転数までぶん回せば最大になるものもあります。それぞれを低回転型、高回転型と呼びます。これはバイクの個性、ライディングフィールを決定付ける大きな要素となります。
ロングストローク、低回転型のエンジンを搭載するホンダ「GB350」
例えばホンダの人気モデル「GB350」は、ゆっくりトコトコ走るのが気持ち良いバイクですが、最高出力20psを5,500rpmで発生するエンジンです。一方、カワサキのNinja ZX-25R SEは、国産250ccクラス唯一の4気筒エンジンを持つスポーツバイクで、49ps(ラムエア加圧時)もの最高出力を、15,500rpmという高回転で捻り出します。この性格の違いはピストンの内径×行程、いわゆるボア×ストロークの違いと密接な関係にあります。
先の例で見たGB350は内径70.0mmに対し行程は90.5mm。ピストンは直径の約130%の長さを上下動する超ロングストロークエンジンです。逆にカワサキNinja ZX-25R SEは内径50.0mmに対し行程はわずか31.8mm。直径の60%ちょっとしか上下動しない超ショートストローク。
どちらのバイクもそれぞれ一長一短があり、得意なシチュエーションも異なりますが、いずれもメーカー開発者の「どんな道をどんな風に走りたいか」という思想みたいなものを感じますし、「“好みの走り方”に相応しいエンジンのバイクを選ぶ」ことは、楽しいバイクライフには欠かせないポイントですね。
■コーヒーの世界における高回転型と低回転型とは?
高回転型と低回転型、実はコーヒーの世界にもあるんです。家庭用の電動コーヒーミルとしては最上位のスペックを持つ定番の2台、カリタの「ナイスカットG」と富士ローヤルの「みるっこ」の二つです。
いずれも業務用に利用可能なレベルで、実際、僕の店ではみるっこを使い、プライベートではナイスカットGの前身モデル、ナイスカットミルを使っています。どちらもよく似たスタイルで、豆を挽く方式も共に臼式の回転刃ですが、その回転速度は大きく異なります。
1分間に100gの豆を挽けるカリタ「ナイスカットG」の前身モデル「ナイスカットミル」
1分間あたり何gの豆を挽けるかという粉砕能力の比較になるのですが、カリタのナイスカットGは100g/分なのに対し、みるっこは250g/分。みるっこの方が圧倒的に多い=刃の回転速度が速いことを意味します。それもそのはず、ナイスカットGはモーターの回転速度を減速するギアを介して、刃をゆっくり回転させているからです。これにより豆を挽く際の摩擦熱の発生を抑え、豆のダメージを最小限にしようという考え方です。
1分間に250gの豆を挽ける富士ローヤル「みるっこ」
逆に、みるっこはパワーのあるモーターを用いて刃を高速回転させ、豆がダメージを受けるほどの摩擦熱が発生する前に、短時間で一気に挽き切ってしまうほどの勢い。全く真逆の考え方ですね。これだけ異なると一長一短や装備の違いなども現れます。
ナイスカットGはギアがある分だけ駆動ノイズが大きく、結構やかましい音がします。深夜早朝だと近所迷惑な感じ? みるっこは強いパワーを発生させるために大きいモーターを仕込んでいるようで、約5kgととても重いです(ナイスカットGは半分以下の2.3kg)。また静止摩擦力と言って、モノが動き始める瞬間は特に大きな力を必要とするため、みるっこには豆の投入口のところにダンパーが設けられ、先にモーターをONにしてから豆を流し込むことで、モーターへの負担を減らすように出来ています。
バイクのエンジンにしろコーヒーミルの回転刃にしろ、モノを生み出す時の設計思想の違いというのは、高回転型or低回転型の選択にも直接的に反映され、生み出された製品の持つ強みや弱み、ひいては個性そのものへと繋がっています。バイクは勿論ですが、コーヒーミルにも愛情を感じてしまうのはそんな個性のおかげかもしれません。
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